騎士科Aクラス①
登校初日は、学園の説明や授業の時間割の発表なんかがあって、その後はクラスで自己紹介の時間。
ひとりずつ前へ出て、名前や出身地など、当たり障りのないことを言う。
さすがに特技やスキルなどを口に出す人はいない。
だいたいが貴族家の人たちなので、自分の家の自慢大会のような様子だ。
騎士科Aクラスには3人の女子がいる。
ひとりはどこぞの侯爵家の娘らしく、ど真ん中の席に座って、周囲には取り巻きっぽい男子たちが囲んでいる。
ブロンドの巻き毛に、少しキツそうなアーモンド型の目。
見るからに悪役令嬢っぽい雰囲気だけど、RPGに悪役令嬢っていたっけ?
まあでも、美女だよね。スタイルもいいし。
「サンドラ・ディ・ヴェルニエ。皆様御存知かと思いますが、知らない方もいらっしゃるようなので、お見知りおきを。ヴェルニエ侯爵家の長女ですわ」
あ、明らかにこっち見たな。「知らない方」って私のことか。
「ですわ」なんて言う人、ほんとにいるんだ。
フラグだったら嫌だから、できるだけ近寄らないようにしよう。うん。
「今年はめずらしく女騎士が多い。期待しているぞ」
担任のワルデック先生が、なぜか少し顔を赤くしている。
ふーん。美女に弱いのか。
まあ、いかにも脳筋っぽい先生だしなあ。
「もちろん、王国のためにこの身をささげる所存ですわ」
へえ…王国のためか。さすが貴族様。
性格はともかく、私よりは立派だよね。志が。
国のために身を差し出す勇気などまったくないが、それは黙っておこう。
「ああ、それと、今年は5年ぶりに聖騎士が出た。ルイーズ・デイモント、前へ出ろ」
うえ。いきなり名指しで呼ばれると、焦る。
しかし、ここは最初が肝心。
できない奴アピールをしっかりしておこう。
睨まれたらヤだしね。
「ルイーズ・デイモントです。アデル村から来ました。回復魔法は得意ですが、剣は初心者なので、よろしくご指導ください」
何人かが呆れたような顔をしたな。よしよし。
自分でわざわざ初心者なんて言う人、ここにはいないもんね。
貴族様ってプライドの塊みたいだし。
「そうか。心配しなくても、剣は俺が鍛えてやるぞ。ああ、それからデイモントは入学時の筆記試験が学年次席だ。勉強が苦手な奴は、教えてもらえ」
へ?次席?
本人が知らないこと、サラっと言わないでよ。
侯爵家のお嬢様が、キっとこちらを睨む。
しまったなあ…もう少し手を抜いておけばよかった。
全力で試験を受けてしまったのは、前世の受験戦争の名残か。
でもまあ、主席じゃなくてよかった。目立ってしまうところだった。