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王宮から呼び出された

 特Aクラスの訓練が始まってから、数週間ほどたったある日のこと。

 衝撃的なニュースが飛び込んできた。

 隣国リリトで、大神殿が破壊されたという。


 新聞やテレビのないこの世界で、学園にまで知れ渡っているということは、相当大きな事件なんだろう。

 試験のときにダンジョンで起きた出来事の詳細をしっているのは、引率した先生と私達だけだ。

 あの状況を知っている人は、リリトで事件と聞いただけで、皆あの黒マントを思い浮かべたに違いない。

 メンバーで集まって、教会に詳しいオーグストの話を聞いてみることにした。


「前にリリトにはクリストフの剣があった、と話したことがあったよね」

「以前に展示されてた、っていうやつ?」

「そうそう。あれは、本物ではなく偽造品なんだ。本物は魔神が封印されてるからね」

「ニセモノ、ってこと?」

「そうなんだけど、ニセモノとも言えないんだ。教会の大神官が集まって、強力な力を込めて再現した剣だからね。それだけでも、国宝級だぜ」


 オーグストの話だけ聞いていると、その剣を狙ったように聞こえるけど。

 以前から剣を盗もうとする者は多かったというし、それだけで黒マントの仕業だとは決めつけられないのでは?


「やつら、勇者を探してただろ? でも、勇者が見つからないから、剣を先に破壊しようとしたのかもしれないぜ?」

「お前の話、よくわからねえけどよ。なんで勇者が見つからねえと、剣を破壊するってことになるんだ?」

「そりゃあ、その剣は聖騎士でないと扱えないからさ。破壊しておけば、勇者の誕生を防げるってことだよ!」


 前にオーグストが言ってた、勇者になるのにクリストフの剣が必要だというのは、そういうことだったのか。


「てことは、やっぱりルイも狙われるんじゃないの? 聖騎士だもん」

「神殿にあった剣がどうなったのか気になりますね」

「盗まれたか破壊されたかは、まだ情報が入ってこないからわからない。でも、破壊されてたら、また同じものを作るのには10年ぐらいかかると思う」


 オーグストの話では、リリトの神殿は壊滅状態だそうだ。

 人の少ないときを狙ったので、死者が少なかったのが不幸中の幸いらしい。

 神官がさらわれたりということもなかったようだ。

 ということは、やっぱり狙いは剣なのか。


「ただ、俺がちょっと前に聞いた情報では、剣はすでにリリトからどこかへ移動させたっていう話だったんだよなあ」

「そうなの?」

「させた、という話だったか、これから移動させる、っていう話だったか、そこんとこよく覚えてないんだよ。今朝父上に聞いてみたんだけど、重要機密だからって、教えてくれないんだ」


「すでに移動させてたなら、敵はそのことを知らずに壊滅させたってことか。無茶苦茶な話だな」

「やっぱり、あいつらの仕業かなあ?」

「人間じゃないだろ……あんな大きな神殿、どうやってこっそり壊滅させるんだよ」

「あの者たちは、瞬間移動できましたよね。盗みに入るのは簡単そうな気がします」


 皆で予想を話し合っているときに、ワルデック先生が呼んでいると、クラスの生徒が知らせにきてくれた。

 全員かと思ったら、私だけ。

 何の用事だろう。

 オーグストの話が気になるけど、ひとりだけ教務室へ向かう。



 「ああ、来たか」


 ワルデック先生だけかと思ったら、スワンソン先生も待っていた。


「すみませんね、ちょっと緊急の用件です。昨晩の事件のことは耳に入っていますね」

「リリト王国の神殿の話だったら、さっき聞きました」

「そう、それです。そのことで私は王国から呼び出しを受けているのですが、あなたも連れてくるように言われているのです」

「私ですか? なんでまた」

「あなたが聖騎士だからです。王国はあなたを保護する必要があるのではないかと考えているんですよ」


 スワンソン先生の話は、オーグストの話とほぼ同意見だった。

 何者かが、国宝級の剣を狙った。

 それは、かつて勇者のために作られた剣の模造品であること。

 例の黒マントが聖騎士に興味を持っていたこと。

 勇者を探しているような口ぶりだったこと。

 それらを考えると、勇者の復活を阻止しようとしている組織の犯罪ではないかと考えているようだ。


「そのような邪教の宗教団体があるのかどうかわかりませんが、あのときに現れた黒装束の者たちは、人間とは思えない魔力の持ち主でした。しかも、あの者たちは恐らく下っ端です」

「ゼルゼア様が、とか言ってたよな? 様というぐらいだから、上の者がいるんだろう」


 前回のダンジョンで起きた事件は、その時に王宮へ報告済みなんだけど、今回リリト神殿の事件が起きて、改めてもう一度詳細を聞きたいということだった。

 

「というわけで、明日、デイモントさんには同行してもらいます」

「それは、拒否権はないですよね」

「ないです。国の命令ですから。保護してくれるというなら、あなたにとって悪い話ではないでしょう」

「それはそうなんですけど……わかりました。一緒に行きます」


 いったいどういう話になっているのか気になるので、情報収集に行ってみよう。

 どうせ、断れる話じゃないし。

 王宮ってどんなところだろうなあ。

 王都に来てからほとんど学園から出たことがなかったから、王宮見物してみるのもいいかもね。



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