個別に訓練
特Aクラスの実技訓練がはじまった。
といっても、普段の授業はこれまでと変わりなく、週に2、3回居残りで特別訓練を受ける、というものだ。
私はこの訓練が始まる前に、スワンソン先生に、エアスラッシュを使えることを報告した。
隠しているより、正直に話して鍛えた方がいいと思ったからだ。
貴重な攻撃魔法だし。
風の魔法というのは、実はそれほどめずらしいものではなく、魔道具などにはよく使われるそうだ。
ただ、攻撃としては威力が弱いため、スキルとして確立していないんだって。
しかし、鍛え方によっては、そこそこ強くすることもできるという話だった。
というわけで、レアナとふたりで、スワンソン先生の個人授業を受けることになった。
「まず、エアスラッシュを使ってみせてください」
「はい、エアスラッシュ!」
スラッシュは人形の的に命中して、わずかに傷が入った。
わら人形のような的だけど、剣で思い切って切りつけても傷がつくだけ、という程度の強度はある。
「ふむ。コントロールは悪くないですね。では見ていてください。エアスラッシュ!」
スワンソン先生、エアスラッシュ使えたんだ!
しかもすごい威力。
的の人形の首がまっぷたつになって、床に落ちた。
「私は普段この魔法を使いませんが、それでもこれぐらいの威力は出せるのですよ」
スワンソン先生が、道具箱の中から、鉄製の円盤のようなものを取り出す。
よく見ると手裏剣のようなギザギザがついているので、武器なんだろうか。
大きさは直径30センチぐらいの、薄い金属だ。
「だいたいこれぐらいの大きさと手応えのものを、投げるイメージをするといいでしょう。的に向かって投げてみてください」
言われたとおりに投げてみたが、的に届かず、あさっての方向に落ちた。
コツがあるのかな。
「勢いが足りないですね。腕力と遠心力で、魔法を放つ威力を鍛えるといいです。魔力切れになるといけないので、訓練は円盤で行うといいでしょう」
「なるほど。わかりました。練習してみます」
私が円盤投げの練習をしている間に、次はレアナだ。
「オルゴットさんが使えるのは、ファイアーボムとファイアーストームですね?」
「そうです。でも、魔力量が多くないので、ファイアーストームは2、3回が限界です」
「まずはボムの威力を鍛えましょう。ストームはこの訓練場では危ないですからね。まずは普段通りボムを放ってください」
レアナは、直径30センチぐらいの火の玉を放って、それは的にぶつかって爆発した。
いつもより少し威力が弱いみたいだけど、遠慮したのかな。
「これは、魔導士科でもやっている訓練なのですが、見ていてくださいね」
スワンソン先生は、レアナと同じぐらいの大きさの火の玉を放った。
しかし、それは的に当たると大爆発を起こした。
びっくり。
「放つときから力をこめすぎると、火の玉は大きくなりますが、爆発の威力はさほど変わりません。的に当たる瞬間に魔力が最大になることが理想ですね」
「それは、どうしたらいいんですか?」
「当たるまで、的から目を離さないように。投げっぱなしはダメです。手から離れて、的に当たるまでの距離や時間を想像して、タイミングよく爆発させるのですよ。あとは慣れですね」
「へえ、そうなんだ。練習します!」
レアナは何度かボムを放つうちに、みるみる威力が上がっていった。
初めてちゃんと習うことができて、楽しそうだ。
スワンソン先生は、時々投げ方を指導したりしている。
私は鉄板を投げる手が疲れてきたので、時々左手で投げてみる。
でも、左手だと話にならないほどノーコンだ。
「デイモントさんは両利きなのですか?」
「いえ、違うんですけど。左手でも使えたらいいなって思って」
「そのコントロールでは厳しいでしょう」
「あの、至近距離では時々左手使ってたんです」
「近距離でですか?」
スワンソン先生は、近距離でなぜ使う必要があるのかと不思議に思ったようだ。
私は、これまで人前でエアスラッシュを使わないようにしていたことと、右手に剣を持って戦っている最中に、こっそり左手でスラッシュを放ちたい、と考えていたことを説明した。
「なるほど、両手攻撃ですか。面白いかもしれませんが、それだと少し訓練方法が違いますね」
スワンソン先生は、練習用の木刀を右手、円盤を左手に持って攻撃のパターンを考えている。
「これは、私が考えるより、ワルデック先生の方が得意でしょう。次の剣の訓練のときにこの円盤を持っていって、相談してみてください」
しばらく円盤投げをしてみた後に、エアスラッシュを放ってみた。
確実に威力が上がっている気がする。
なるほど、攻撃魔法を放つのに、腕力もある程度関係あるのか。
今日から腕立て伏せしようかな。
もっと強くなれる、と確信できた一日だった。
後でマルクやオーグストの話を聞いてみたら、そっちも充実した内容だったらしい。
特に、オーグストはもともと騎士を目指していただけあって、騎士科のAクラスでもトップクラスになれると褒められたんだそうだ。
努力の人だったんだろうな。ちょっと見直した。
考えたら、あれだけの結界や聖魔法が使えて、剣の腕も立つなら、実力は聖騎士以上なんじゃないだろうか。
少なくとも今の私より戦闘で役に立つよね?
最初の頃、私に嫉妬していた気持ちもわかるような気がする。
スマホでも気軽に読みやすいようにと、適当に1ページの文字数を1000~1500文字ぐらいにしてたんですが、最低でも2000文字以上あったほうがいいということを今日知りました。
ここから、ちょっと1ページの文字数増やしてみます。
でも、途中であまりスタイル変えるのも不自然なので、この小説はなるべくこのままの感じでいこうと思います。
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