援護します!
「先生っ! 私たち援護しますっ」
「あなたたち! おとなしく待っていろと言ったでしょう! 退却しなさい!」
「待て、お前ら、メルギス先生を援護してやってくれ!」
「トニ! 生徒たちは冒険者ではありませんよ!」
離れたところで、メルギス先生が疲れた様子で膝をついている。
いくら元大聖女様でも、お年寄りにこの状況はキツいよね。
レアナが駆け寄って、魔力回復ポーションを手渡す。
私もハイヒーリングをかけてあげると、メルギス先生の顔色がよくなった。
「聖十字剣!」
近づいてきたスケルトンを消す。
ワルデック先生が一瞬振り返って、「よくやった」というように笑みを浮かべた。
「ヘルフレア!」
スワンソン先生が大杖を振り回すと、あたりの敵が黒い業火に包まれる。
スケルトンたちは一瞬で消し炭のように燃え落ちた。
すごい。
「範囲殲滅浄化!」
立ち上がったメルギス先生が、燃え残った骸骨騎士を倒す。
あたりの敵は一掃したが、また奥から湧いてくる。
「キリがねえな…」
「今日のところは退却しましょう。生徒たちが心配です」
「おい、あれはなんだ…」
ワルデック先生とスワンソン先生が、ダンジョンの奥を警戒するように武器を構えた。
「おやおや。どうやらここに聖騎士がいるようですね」
この声は……あのとき現れた影のひとりだ。間違いない。
頭から黒いマントをすっぽりかぶった、死神のようなやつ。
狙いは私か。
「何者だ、お前は!」
「あなたに用事はありません」
黒マントが右手をワルデック先生の方に向けると、先生の大剣が吹っ飛んだ。
「くっ…なにしやがんだ、てめえ」
「トニ、生徒たちを」
ワルデック先生が剣を拾って、私達のほうに駆け戻ってくる。
「退却だ! 急げ!」
「ヘルフレア!」
スワンソン先生が黒マントに向かって地獄の業火を放つ
しかし、それを吹き飛ばして、黒マントはゆっくりと近づいてくる。
「ふふっ。元S級冒険者ですか。少しはできるようですね。しかし、その黒い炎は私にはききませんよ。人間ごときが使いこなせる力ではないのです」
「殲滅浄化!」
メルギス先生の青い光も、一瞬でかき消されてしまう。
「おや? そこの聖女様には私がアンデッドにでも見えるのですか? そのような矮小なものと間違えるとは…やれやれ」
「アースウォール! 時間をかせぎます、早く生徒たちを」
スワンソン先生の足元の地面が盛り上がって、いくつもの壁が現れる。
しかし、黒マントはそれを爆風で壊しながら、平然と歩いてくる。
「ほっほっほ。無駄なことを。人間とは愚かなものですね」
「スワンソン先生っ!」
「逃げなさいっ早く! これは命令です!」
「ジルは大丈夫だ。お前ら、逃げるぞ!」
ワルデック先生に促されて、退却しようとしたとき。
もう一体の黒い影が、突然現れた。
絶体絶命……かも。