古代魔法陣
「前衛は教師陣、真ん中に生徒たちを挟んで、冒険者の方々は最後尾をお願いしますね」
総勢12名の調査隊。
ギルドから派遣された護衛は、冒険者パーティーのようだ。
AランクとBランク冒険者のパーティーらしく、王都のギルドでは有名な人たちらしい。
地下5階までの道のりは、一度経験しているので、それほど不安はない。
時々何か出てきても、ワルデック先生かスワンソン先生が瞬時にやっつけてくれる。
今日は試験ではないので、私たちは特に何もしなくていいとのこと。
のんびり雑談しながら、ぞろぞろと歩いている。
スワンソン先生は、学園で見るときとは違って、今日はマントのような防具をはおっている。
いろいろな効果が付与された高級品だと、ニコラくんが教えてくれた。
ゴージャスなじゅうたんみたいな柄だ。
手には大きな水晶玉のような石がはめ込まれた、肩ぐらいまでの高さの杖。
魔導士にとっては、剣の代わりのようなものみたい。
ニコラくんがよくやってる、魔法陣から矢を放つような攻撃は、あくまでも相手が大群のときに後衛から無差別に攻撃する技なんだそうだ。
前衛で個別の敵を狙うのには向いていないらしい。
「今日は僕も一応杖を持ってきています。あまり役に立たないかもしれませんが…」
ニコラくんが見せてくれた杖は、剣ぐらいの長さのものだ。
私たちが帯剣するのと同じように、腰に下げている。
合同演習で角ラビ討伐をするのに困ったので、買ったんだって。
ニコラくんも、最近少しずつ冒険者風になってきている。
出会った頃は、攻撃魔法なんて使ったことのない秀才くんだったんだけど、今は頼もしい。
似合ってるよ、杖。
ワルデック先生は、マルクのような大剣と、棍棒のような武器を背中に背負っている。
特大のバットの先に金属のトゲトゲがたくさんついている棍棒。
あれは何に使うんだろう。
何かのウロコでできた鎧を着て、物騒な武器を背負っている姿は、傭兵くずれの荒くれ者って感じ。
こんな人が王都で歩いていたら、たいていの人はよけるだろうな…
特に問題もなく、5階のボス部屋の手前まで到着した。
「デルビーは、各フロアで索敵をかけていたということでしたね?」
「はい。このフロアだけは魔獣とは違った魔力のようなものを感知したのですが、それが何かはわかりませんでした」
「ふむ…簡単な罠程度は、デルビーなら察知できると思うんですけどね」
スワンソン先生が何かに気付いたように、地面を杖でコンコンと叩いている。
「ああ…このあたりに魔力の痕跡がありますね。やはり」
そう言って、何かぶつぶつと呪文のようなものを唱え始める。
私たちが飛ばされたあたりの地面から、黒い文字列が浮かび上がった。
「これは…」
スワンソン先生と、メルギス先生が驚いたように顔を見合わせる。
「古代魔法陣ですね…今は使われていない術式です」
「なんかきな臭いな…」
ワルデック先生も、険しい顔になる。