聖魔法の基礎の基礎
「聖魔法を剣にまとわせる方法? そんなの俺に聞かれても」
「で、でも、聖騎士に詳しいんでしょ?」
「会ったことはあるぜ。子どもの頃に教会で。剣を振るときに、剣が青く光るんだぜ? かっこよかったよなあ…」
その出会いが、聖騎士に憧れるきっかけだったみたい。
オーグストは遠い目をして、妄想の世界にいってしまった。
腰に下げている短剣に魔力を通してみたけど、青く光る様子はない。
聖魔法だから、回復魔法を流したらいいのかな?と思ってやってみたら、剣がピンク色に光ってしまった。
なんか違う。
「あ、もしかしてデイモント、聖魔法は2種類あるっていうの、わかってる?」
「わかってない…私、回復しか使ったことないし」
「はあ…騎士科だから、習ってないのか」
オーグストは一瞬呆れたような顔になったけど、聖魔法の基礎の基礎だといって教えてくれた。
聖魔法は大きくわけると、回復系と浄化系があること。
回復系は薄いピンク色に光って、浄化は薄い青色に光るんだそうだ。
そういえば、オーグストの浄化魔法って青かったっけ。
「とりあえず、肌で感じる方がいいから、どこか広い場所へ行こう。中庭でいいか」
行こう行こうと、オーグストに手を引っ張られて、中庭に向かう。
オーグストはあの一件以来、協力的だなあ。
もともとは悪い人じゃないのかも。
ちょっと思い込みが激しいだけで。
中庭に移動すると、オーグストは大きな魔法陣を地面に展開させた。
その中心に立て、と言う。
「今から浄化魔法かけるからね」
「えっ、それ大丈夫なの? 死なない?」
「アンデッドをあの世に送る魔法だから、生きてる人間は大丈夫」
「そう。じゃ、お願い」
「浄化魔法の種類というか、感覚を覚えるんだぜ」
オーグストが何かぶつぶつとつぶやくと、魔法陣が青く光った。
回復魔法とは違った、少し冷たい感触。
でも、結構気持ちいい。すがすがしい感じっていうのかな。
「魔法陣から出てる魔力を、体内に循環させて、手のひらから出す!」
「こ、こうかな?」
冷たい感触を手に集めてみる。
なかなかうまくいかないけど…
「剣を手に持ったほうがいいんじゃないかな」
「あ、そうかも」
短剣を手に持って、もう一度浄化魔法をかけてもらう。
ただよっている魔力を、剣の方に流していくような感じで…
「あっ。光った! いい感じいい感じ!」
それから、オーグストが一生懸命練習に付き合ってくれて、なんとか剣に聖魔法をまとわせることはできた…と思う。
アンデッド相手に試したわけじゃないから、自信ないけど。
後は、十字剣の練習か。
「オーグスト、今日はありがとう」
「いいっていいって。やっと聖騎士目指すんだよなっ!」
…オーグストの勇者に期待する目が怖い。