やっぱりこうなるよね。
「デルビー、お前、ちょっと前にクリストフの剣のこと、聞いてきたよな?」
「…聞きましたね」
「あれは、デイモントが勇者になるためだったのか?」
「いや、そういうわけでは」
「違うよ、たまたま私が図書室でクリストフの本を読んでて、剣のことをニコラくんに聞いただけ」
「盗み出すつもりか?」
「違う違う。そんなこと考えてないから」
「勇者になるのに必要なんだろ? クリストフの剣が」
…あれ、なんか話がおかしな方向に行ってる気がするけど。
ていうか、「勇者になるのにクリストフの剣が必要」って、何その情報。
「お前が、ほんとに勇者になるっていうなら、連れていってやってもいいぜ、クリストフの剣のある場所に」
「なんで? なんでそんなことに協力するの?」
「盗むよりマシだろ?」
「盗まないってば! ていうか、オーグスト、私のこと嫌いでしょ? なんで急に協力的なのよ」
「嫌いっていうか、お前がちゃんと聖騎士目指してないのが嫌だったんだよ! デルビーと錬金してたり、冒険者の真似事みたいなことしてたり」
「オーグストって、私のことよく知ってるのね。ストーカーみたい」
「うるさい! だけど、お前が勇者目指すっていうなら、認めてもいい」
「いやいやいやいや、目指してないし」
「目指せよ! 俺だったら絶対目指すぞ」
あーめんどくさい。正真正銘のクリストフ信者だ。
なんか、勇者という単語で目を輝かせている。
「とにかく、事情はわかった。お前たち全員、勇者とその仲間になった、ということだな?」
「言っておいてなんだけど、そんな話本当に信じるの?」
「実際、全員ステータスに上級職が表示されてるんだろ?」
「あのさあ。気になってたから私も聞くけど。昨日帰ってから、オーグスト、自分のステータス確認した?」
「いや、してないけど」
「確認してよ」
「ちょっと待てよ…あれ? お、ぉわっ?」
ステータスを呆然と見ているオーグストを見て、4人で盛大にため息をついた。
なんとなく、こうなる予感があったよね、みんな。
昨日一緒に戦ったときから。
「僧侶の後ろに(大神官)って表示されてる…」
「これでわかった? もうオーグスト、仲間認定されちゃったから」
「ほんとなんだな? 俺も勇者パーティーの仲間?」
「なんでうれしそうなのよっ!」
「いや、うれしいだろっ! 俺、全力で大神官目指すから!」
じゃあな!と手を挙げて、オーグストは上機嫌で去っていった。
まるで、台風が去った後みたいで、どっと疲れた。
オーグストって思い込み激しいタイプなんだろうな…
「あれ、パーティーに入れるのか?」
マルクは複雑な顔をしている。
「どうしよう。しばらく放っておこうか…様子見というか」
「でも、もしかしたら役に立つこともあるかもしれませんよ。彼、勇者には詳しいですし」
「それは確かに」
勇者、剣豪、魔導戦士、大賢者、大神官が揃った。
クリストフの剣という強力なフラグのオマケつき。