オーグストがやってきた
翌日は休んでもいいと言われていたので、午前中はレアナと部屋でダラダラしていたんだけど、お昼ごはんを食べに学食へ行くことにした。
食堂に行ってみると、案の定マルクとニコラくんもいた。
休んでいいと言われても、出かける元気もないし、ご飯は食べるなら食堂しかないよね。
「なんか、昨日のことが悪夢だったみてえだな」
「僕は悪夢を見ましたよ…まだ10階層で戦ってる夢」
「うわあ。ガイコツの夢? それは嫌だ」
「私は魔力回復ポーション飲みすぎて、まだ気持ち悪い」
レアナはポーション飲み過ぎで、二日酔いみたいになったらしい。
無理やり魔力を回復させるんだから、体には悪そうだよねえ。
私たちの姿を見つけて、オーグストがつかつかと近寄ってきた。
今までさんざん避けてたくせに。
「お前たち、話がある」
「なんだよ、話って」
「ここで話してもいいのか?」
オーグストはちらりと周囲に目をやる。
昨日の話だよね。しかも、ちょっと複雑な。
皆で中庭に行こうと提案する。
「お前たち、俺に何か隠してるだろ。あんなことに巻き込んだんだから、きちんと説明しろ」
オーグストは、昨日の事件に巻き込まれたことを、私たちのせいだと思っているようだ。
でも、死にそうな目に合ったのは私たちも同じなんだけど。
「特に、オルゴット。昨日攻撃魔法使ってたよな? しかも学園に隠してるだろ!」
「私は火魔法、子どもときから使えたよ。ただ、職業判定で騎士だっただけ」
「ふん、そんな話聞いたことないぞ。騎士科で魔法が使えるのは聖騎士だけだ。それにデイモントは、なぜ聖騎士のスキルじゃなく、あんな雷撃スキルを持ってるんだ? おかしいだろ」
「知らないわよ。普通に練習してたら覚えたんだもん」
オーグストは私たちの説明に、納得がいかないという顔をしている。
思いっきり疑っている視線だ。
「じゃあ、もうひとつ聞く。最後に怪しい影が話してた内容、お前たちも聞いてたよな? 俺たちのことを、勇者じゃないって言ったろ? あれ、なんなんだよ。何か知ってるんだろ」
まずい。オーグストはクリストフ信者だってこと、忘れてた。
あの話が気になってるんだ。
マルクは、話すならお前が話せ、と目で合図している。
「どうしよう…話す?」
「話してもいいけど、オーグストまで巻き込むんじゃないかと思って」
「何ごちゃごちゃ言ってんだよ、ここまで巻き込んでおいて! 死にかけたんだぞ!」
「じゃあ、今から話すこと、誰にも言わないって約束して」
「わからんな。そんなこと」
「じゃあ、言わない」
「話せよ! 俺だけ知らなかったら、また狙われたりするかもしれないだろ!」
仕方ない。話すか。
隠してもしつこそうだし。
私が、勇者になる可能性を持っていること、レアナやマルク、ニコラくんも、仲間になってからステイタスの職業欄に異変が起きていることを、順番に話した。
レアナが火魔法を使えるのは、その影響だということも。
オーグストは、意外と真面目に私の話を聞いていた。