初めてのダンジョン
試験当日、指定された時間にダンジョン前に集合する。
オーグストは、一番遅れてやってきて、不機嫌そうな顔で少し離れたところに立っている。
「前のパーティーが早く帰ってきたから、もう入れるぞ。準備はいいか?」
「「「「はい!」」」」
中でパーティー同士がぶつからないように、だいたい2、3時間おきに出発するスケジュールになっている。
順調にいけば2時間ほどで地下5Fまで討伐できるようだ。
前のパーティーが早く帰ってきたってことは、やっぱりそんなに難しい討伐ではないのかな。
順番が後ろになるほどモンスターが少ないかと思ったけど、そんなことはないらしい。
モンスターが湧いてくる場所があって、数が減ると自然に湧くみたい。
オーグストは無言で一番後ろからついてくる。
今日は一応帯剣してる。
自分の身を守らないといけないってこともあるしね。
地下1階はほぼ一本道で、ところどころ、壁にたいまつの明かりがある。
モンスターというほどの敵はいないんだけど、大きなアリとかバッタとかがいるのが気持ち悪い。
虫系って、大きくなっただけで脅威な感じ。
ニコラくんが懐中電灯のような魔道具がついた帽子を用意してくれていたので、虫系はあまり近寄ってはこないみたい。どちらかというと、ガサガサと逃げていく。
目の前に飛び出てきたやつだけ、マルクがはらいのけてくれて、前進する。
「降りる階段があったぞ」
「地図通りだね」
地下2階に降りたらすぐに、百足ヘビがとぐろを巻いて、道をふさいでいた。
マルクが一撃で倒す。
「マジカルバッグ持ってきたらよかったぜ」
「僕が持ちましょうか?」
「いや、いい。解体の時間が惜しいから先に進もうぜ」
「一応、索敵かけますね」
マルクは少し残念そうな顔をしていたが、倒したモンスターは基本放置していくことにする。
「大型の魔獣はいないようですが、飛んでるやつがいるので、注意してください」
「バット・イーターだな」
バサバサと飛んできて百足ヘビの死体に群がる、コウモリの魔獣。
想像はしていたけど、洞窟の中の魔獣って陰気臭い。
バット・イーターって、雑食でなんでも食べるようだ。
吸血するってわけではないらしい。
レアナは退屈してきたのか、飛んできたコウモリを叩き落として遊んでいる。
地図通りに進むと、順調にB3への階段があった。
地下3階になると、出てくるモンスターが少し大きくなる。
巨大イモムシや巨大ダンゴムシみたいなやつが、超絶気持ち悪い。
暗い洞窟で、赤く光る眼がいくつもある。
「倒すか。このままじゃ進めねえな」
「私、イモムシやりますっ!」
レアナが元気よく飛び出していく。
スパスパっと俊敏な剣さばきに、どろりとした緑色の体液が飛び散る。
マルクが斬りかかったダンゴムシの方は、硬そうだ。
ガキーンと剣を弾く音がする。
「兜割りっ!」
マルクが新しいスキルで、ダンゴムシを縦まっぷたつに叩き切った。
スキルの手応えがあってうれしそう。
私は万が一に備えて一応剣を抜いて、ニコラくんとオーグストの前に立っていたけど、出番はなかったみたい。
ニコラくんは、マルクたちが戦っている間に、ニョロニョロとうごめく変な植物を採取していた。
意外とマイペースなニコラくん。