勇者ってなんですか
今年は、例年よりも女子の入学が多かったと聞いた。
貴族の聖女が多かったという話だけれど、女騎士が同学年に3人というのも例年よりは多いらしい。
女子寮は結構豪華な造りになっていて、貴族令嬢はそれぞれ個室を与えられている。
私の父は騎士爵だけれど、相続権はないので、貴族枠ではなく一般平民。
申し訳ないけれど、部屋が空いてないので、ふたり部屋に入ってほしいと言われた。
ふたり部屋といっても、トイレや炊事場が共同なだけで、寝室は個室。
広々としていて、実家の自分の部屋よりもいい部屋だった。
才能がある者を集めている学園だからなのか、待遇はいい。
入学式の前に制服を受け取って、学生登録をしてくださいという案内があって、指定された部屋へ行くと、数人の新入生が並んでいた。
筋肉ムキムキの騎士様ばっかりかと想像してたけど、そうでもなくて、結構普通の子どもたち。
12歳って言ったら、まだ子どもだよね。考えたら。
学生登録カードというのは、本人だけが確認できる、能力やステータスを表示するものらしい。
何か魔道具みたいな四角い箱に、順番に手をかざして、カードを作ってもらっているのが見える。
教会で職業判定をしてもらった水晶は、簡易版で職業しかわからないんだけど、もう少し詳しい能力やスキルなどがわかるようだ。
みんな、自分の鑑定結果を見て、驚いたり喜んだりしている。
魔力量なんかもわかるみたいで、ちょっとワクワクする。
「スキルや能力などの情報は、安易に他人に話さないようにしてください。あくまでも、本人が実力を確認するためだけのものであり、学園側が情報開示を求めることはありません」
…なるほど。
そりゃあそうだよね。
戦う相手になるかもしれないのに、特技やスキルとか知られたら困るもんね。
気をつけよう。
「どうぞ」と言われて、学生証を受け取ると、かすかに魔力を感じる。
カードに魔力を通しながら「ステータス」と言えば、自分の現在の状態を見ることができるらしい。
みんな、空中に何かが見えているような動作をしている。
他人からは見えないのが不思議。
魔法が普通に存在している世界にいるんだなあと、急に実感がわいてくる。
村にいた頃は、こんな世界だなんて想像もしていなかった。
寮に戻って、さっそくステータスを開いてみる。
金色に光るノートのようなものが空中に出現して、パラリとページが開く。
ルイーズ・デイモント 騎士科A
【体力】32/64
【魔力】380/380
【攻撃力】45
【防御力】60
【すばやさ】97
【経験値】57
【スキル】ヒーリング ハイヒーリング エアスラッシュ
【種別】聖騎士(勇者)
ん…?
最後のやつ、何?
(勇者)って?
ぅえええええ!?
ちょっと待ったあああ!
聞いてないよー!!