試験前夜
「地図はだいたい頭に入ったし、特に警戒する魔獣もいねえよな?」
「うん、大丈夫そうだよね。注意するのは地下5階のボス部屋だけ?」
「僕は一応、索敵魔法を復習しておきましたけど、罠とかはないみたいですよね」
「罠があれば、確実にわかるの?」
「魔法陣のような、魔力を使ってる罠だとわかりますよ。ただ、単純な落とし穴のようなのは、わからないですけど」
「なるほど、足元には注意ってことね」
パーティーの陣形は、前衛がマルクとレアナ。
私とニコラくんが後衛。
一応だけど、聖女様を護衛するのも試験のうちなので、オーグストは後衛。
オーグストが働かない場合は、私が回復担当も兼ねる。
ニコラくんはマジックバッグで、回復ポーションや魔力ポーションもかなりの数を持っていくことにした。
念のため、だけど。
万が一私も前衛で戦うようなことになったら、自力で回復してもらわないとだし。
たぶん、全員で戦わないといけないのは、ボス部屋のシルバーウルフだけだ。
これが試験だと言ってもいい。
C~Dランクの魔獣だけど、攻撃力と素早さは高いらしい。
攻撃は物理攻撃だけ。噛みつくとか、爪で引き裂くとか。
マルクとレアナは最近になって2人でよく討伐に出ていたから、コンビネーションに不安はないとのことだ。
「私だけ武器を新調しちゃって、ごめんね~。みんなありがとう!」
パーティーの貯金で、装備を新調することになったんだけど、前衛で攻撃力がマルクより低いレアナの武器を買おうと、全員で決めた。
防具は学園から貸出してもらえる。
いつも訓練で身に着けている、革製の鎧だ。
マルクには一撃必殺のスキルがあるけど、レアナは火魔法使うわけにいかないしね。
さすがに短剣だと大型魔獣にはリーチが短いし。
武器屋ガルダラさんのおすすめで、女性にも向いている細身の剣。
わずかな魔力で攻撃力を高めることができるらしい。
中心に魔鉱石を使った、鉄製の剣。
私は、父にもらった剣を使う予定。
「あのオーグストってやつ、来ると思うか?」
「来るんじゃないですかねえ…合同訓練に参加しなかったので、スワンソン先生に注意を受けたらしいですし」
「ルイーズ、お前、挑発に乗るなよ? 試験なんだし、損するのは俺らだぜ」
「わかってるよ。無視無視。あんなやつ」
「よし。んじゃあ、明日に備えて早く寝るか!」
「冒険者っぽくて、ちょっとワクワクする~」
レアナは試験だというのに、楽しみにしているようだ。
新しい剣、早く使いたくて仕方がないみたい。
どうか、ややこしい出来事が起きませんように。