ダンジョン試験
「知っている者もいると思うが、前期の試験は初級ダンジョンの攻略だ。今週中に4人ないし5人でパーティーを組んで、メンバーを提出するように」
ワルデック先生が、メンバーを記入する用紙を配布する。
「パーティーメンバーは同じ学年なら、魔導士科のやつと組んでもいい。昼休憩にでもスカウトしにいくといいぞ。いい経験になるからな。それと、パーティーにはそれぞれひとり聖女がつく。後衛担当は聖女様の護衛も兼ねる」
「質問です」と言って、サンドラお嬢様が手をあげる。
「デイモントさんとパーティーを組んだら、回復担当がふたりになって、有利ではないですか?」
「そうでもないぞ。今回のダンジョンは、雑魚はFとかEランクだし、最終目標のボス戦はDランクだ。攻撃が強いやつが揃っていれば、回復はそれほど必要ないかもしれないからな」
ふん。私にケチをつけたいのがミエミエだ。
なんなら、私のパーティーは聖女様なんてつけていただかなくて結構です。
回復ポーションなら売るほどあるもんね。
Dランクぐらいのボス、マルクなら一撃だ。
「はい」と別の男子がまた質問の手を挙げる。
「攻略に失敗した場合はどうなるんですか?」
「その場合は、補習と再試験だな。倒せるまで何度でも挑戦してもらう。今の時点でパーティーならDランクぐらい倒せないと卒業は難しいぞ」
試験に使われるダンジョンは、王都の南にあって、冒険者ギルドが管理しているらしい。
地図もあるし、出現する魔獣もわかっているので、事前に教えてもらえるようだ。
10階層まであるダンジョンだけど、試験は5階層のボス部屋攻略が最終目標。
説明を聞いている間に、レアナはもう用紙にマルクとニコラくんの名前を書いている。
まあ、このメンバーだったら大丈夫だよね。
昼休憩になっても、誰も私たちをパーティーに誘いにくる様子はない。
誰も私と組んだら有利なんて思ってないってことじゃん。
まあ、いいけど。
一応、試験用パーティーメンバーを提出したことを知らせておこうと思って、食堂でマルクとニコラくんに声をかけた。
ニコラくんが、周囲に聞こえないような小声で「クリストフのことでちょっと話が」と言う。
放課後にあらためて図書室で話を聞く。
「クリストフの剣について調べてみたんですけど、わりと最近までは隣国の大聖堂に祀られていて、誰でも見学できたみたいなんですよね。ところが、盗もうとするやつが多いので、最近どこかに移されたらしいんです。教会の宝物庫みたいなところに保管されてるっていう噂なので、たぶん権威のある大神官がいる教会のどれかだと思うんですけど…」
「そうなんだ。でも、宝物庫だったら場所がわかっていても、一般人は見れないよね」
「そうですね。ただ、前にも言ったけど、うちのクラスに代々神官の家系のやつがいて、そいつはクリストフの剣の場所、知ってるらしいんですよね」
「聞いてみたの?」
「一応聞いてみたんですが」
ここで、ニコラくんはちょっと不機嫌そうな顔になった。