ニコラくんの見解
「勇者クリストフの剣ですか…」
「ニコラくん、知ってる? この本」
「知ってますよ。有名だし、子どもの頃読みました。冒険ものですよね」
「勇者っていえば、クリストフなの? 他にいない? 二代目勇者とか」
「聞いたことないですねえ」
そうか。やっぱり単なる物語なのかなあ。
「あ、ただ、クリストフの剣って、実際にあるらしいですよ。どこかの神殿に」
「えっそうなの? 本にはクリストフが抱いて消えたって書いてあったけど」
「本物かどうかはわからないですけどね。教会が所有してるんじゃなかったかな」
「どこの神殿かわかる?」
「ちょっと思い出せないので、調べておきますね。うちのクラスに神官候補のやつがいて、知ってるかも」
クリストフの剣、本物だったら大変だよねえ。
魔神が封印されてるんでしょ?
ていうか、剣だけ残してクリストフはどこへ行った!
「ルイーズさん、やっぱり勇者のこと気にしてるんですね」
「あーいや、過去に勇者がいたんだったら、情報ぐらいは知りたいかなって。だって、勇者のスキルとか装備とか全然わかんないし」
「うーん。勇者クリストフと勇者ルイーズは、同じじゃなくていいと思いますけどね…」
「どういうこと?」
「だって、数百年前より魔法の技術とか武器とかって、進歩してますし。ルイーズさんは、聖騎士なのに攻撃魔法も使えて、錬金も勉強してますよね?」
「そりゃまあ…してるけど」
「クリストフはたぶん、攻撃魔法も使ってなくて、錬金の勉強なんかしてないですよ。学園にも通ってないだろうし」
「勇者でもスキルは違うってこと?」
「クリストフの絵って見たことあります?」
「ない…あ、さっきの本にのってるかな」
挿絵のあるページをパラパラめくってみると、剣をかまえたクリストフの姿絵があった。
ギリシャの彫刻みたいな、筋肉ムキムキのイケメン。
「そうそう、こんな感じの剛腕なんですよ。どっちかっていうと、マルクみたいな。だから、ルイーズさんがもし勇者になったとしても、こんな感じにはならないような気がするんですよね」
なるほど。ニコラくんらしい、冷静な意見。
確かに、私はマルクみたいにはなれないよね。
勇者のスキル、っていうのが最初から固定であるというわけでもないのかな。
うん、ちょっとすっきりしたかも。
やっぱり、私は現時点では聖騎士として努力すべき、ということか。
スキルって、一番得意な技を極めたら発動するんだっけ。
そっちが正攻法だよね。
ちょっと勇者のチート能力を期待していた自分を、反省。