ルイーズとニコラ組
今日からゼミのない放課後は、ニコラくんが錬金や魔法を教えてくれることになった。
練習に使う魔法陣は、ニコラくんが許可をとってくれて、スワンソン先生の研究室から借りてきてくれた。
持つべきものは友達だ。
まずは、さしあたって今すぐ必要な、マジカルバッグの作り方を教えてもらう。
これは実は、作ることより、材料を揃えることのほうが難しいらしい。
ガディマという、大きな角のある牛のような魔獣の胃袋を使うんだそうだ。
バッグの形や材質は丈夫ならなんでもよくて、その裏側に魔獣の胃袋を貼り付けたものを用意する。
そして、ポーションを作ったときのように、魔法陣で収納魔法を付与するようだ。
ちなみに、魔法陣は羊皮紙に赤い塗料で書かれているんだけど、これは別に特別なインクや素材というわけではないらしい。
赤い色には魔力がのりやすいので、ノートに赤えんぴつで書いてもちゃんと使えるんだそうだ。
後で書き写しておくといいですよ、と言われた。
ニコラくんはぎっしりと魔法陣を書き写した、自分用の分厚いノートを持っている。
えらい。
ガディマという魔獣は、自分よりも大きな動物を何体も丸飲みできるらしい。
そして、胃袋の中に長いこと保存して吸収するため、数ヶ月食事をしなくても生きていられるとか。
胃袋になんか不思議な魔力でもあるのかな。
そこのところは、ニコラくんでも詳しくは知らないらしい。
Bランクぐらいの魔獣らしいから、いつか討伐できることがあるだろうか。
今日の分は、ニコラくんが予備に持っていたものを持ってきてくれた。
ちゃんとパーティーの資金が貯まったら返すからね!
私はマジカルバッグ用に、使い勝手のいい巾着型のバッグを持ってきた。
上部を絞って、紐で締めるようになってるやつ。
斜めがけできるようにベルトがついているので、荷物が多いときに愛用している。
「隙間がないように、裏側に全面貼り付けてくださいね」
愛用のバッグに、接着剤で丁寧に貼り付けていく。
ニコラくんは、私より大きめの丈夫そうな袋で、マルクの分を作っている。
材料が足りるみたいなので、レアナから預かってきたバッグにも貼り付ける。
レアナのバッグは、大きなリボンの柄がついたピンク色のバッグだ。
なぜこれを選んだ?と思ったけど。
いつも冒険しているわけじゃないからって。納得。
準備ができて、いよいよ魔法陣で錬金する。
「結構魔力要るんで、ふたりで同時にやりましょうか」
魔力量の少ない魔導士だと、数人がかりでつくることもあるんだそうだ。
ふたりで魔力を流すと、魔法陣が浮き上がってバッグが光り始める。
ニコラくんは、ときどき片手で素材が馴染んでいるかどうか確認している。
「もういいでしょう」
さっき裏面に貼り付けた魔獣の素材は、消えてなくなっていた。
見た目は元通りのただのバッグに戻った感じ。
不思議だなー。錬金って。
それにしても結構疲れるよ、これ。
集中力が要るというか。
別の魔法陣で防水加工して、私のバッグは完成。
これで、なんでもない通学用のバッグに、解体したベアファングぐらいは入るというから驚きだよね。
少し休憩してマルクとレアナのバッグも仕上げてしまうことにしよう。