マルクの両親
マルクの家は、お店とは別の場所にあって、学園から結構近い。
突然友達を連れて帰ったのに、マルクのご両親は歓迎してくれた。
「いつも生きのいい角ラビをありがとうよ! 助かってる」
「まあ、マルクがこんなお嬢さんを連れてくる日がくるなんて!」
お父さんとマルクはよく似ている。
マルクを一回り大きくしたような、がっちりとした体格のお父さん。
お母さんは肝っ玉母さんという風情の、ふっくらした人だ。
「お嬢さんねえ…こいつら、角ラビ狩りまくってるEランク冒険者だぞ」
「頼もしいじゃない。どっちかうちにお嫁に来てくれないかしら」
「ば、バカなこと言うなよっ! パーティーメンバーだぞっ!」
マルクは顔を赤くして、必死で否定する。
いや、私でよかったら嫁にいくかもよ?
今はそんな気はないけど、RPG的には可能性あります。
「そっちの賢そうな坊ちゃんも、騎士になるのかい?」
「いえ、僕は魔導士科です。今日からパーティーメンバーになりました。ニコラ・デルビーと申します」
ニコラくんは礼儀正しく頭を下げた。
私たちも、あわてて挨拶をする。
「ルイーズ・デイモントですっ」
「レアナ・オルゴットですっ」
「まあ、そんな堅苦しい挨拶いいじゃねぇかよう。それより、俺たち腹ペコなんだ。昨日ベアファング狩ったから、これ、焼いて食わせてくれよ」
「ベアファングだって? お前たちがか?」
お父さんが、驚いたような難しい顔になった。
「まあ、成り行きでよ。ポルトの森に出やがったんだ」
「よく無事で…ポルトの森は安全だと思っていたけどねえ」
お母さんも、顔色を変えている。
マルクのお父さんは、若い頃は冒険者だったらしい。
ベアファングとも戦ったことがあるらしく、一度酷く怪我をしたんだそうだ。
「マルク、あまり危ないことはするなよ。お嬢さん方に何かあったら、親御さんに顔向けできねえ」
「わかってるよ。成り行きだったんだよ、昨日のは。倒せたんだからいいだろ! 一番いいところの肉、持って帰ったんだぜ」
マルクが包みを広げると、ご両親は品定めをするように、肉塊を吟味する。
「これは極上だな…ステーキにするか」
「だろ? こいつらにも食わせてやって」
「わかった、待ってろ」
「みんな、ゆっくりしていってね。お茶をいれるわね」
それからマルクの両親と6人で食事会になった。
大皿にどっさり積まれたステーキを、皆で豪快に食べる。
やっぱり、こんな風に家族で食卓を囲むのっていいな。
アデル村を出てから、両親とはあまり連絡をとっていない。
ちょっとホームシックになってしまった。
王都で就職するより、村に帰りたいなあ。