パーティー結成
翌日は、みんなで冒険者ギルドへ向かうことになった。
見慣れない魔獣に遭遇した冒険者は、ギルドに報告義務がある。
マルクは何度かデビルフィッシュ釣りに行ったことがあって、ポルトの森にベアファングがいるのはおかしいと言う。
解体したベアファングは、ニコラくんが持ってきた収納袋に入れることができた。
マジカルバッグという、見た目の何倍も詰め込める優れものだ。
お行儀のいいニコラくんは、きちんとゴミをそこに入れて持って帰ろうと思っていたらしい。
お陰で助かった。
マジカルバッグは錬金でつくることができるんだけど、中に入れたものは腐りにくいらしい。
どういう仕組になっているのかわからないけど、中にどれだけものを入れても、重量が変わらない。
冒険者には必須アイテムのようだ。
買うとかなり高価らしい。
これも、作り方教えてほしいなあ。
「腐らないように食品などを持ち歩くには、異空間収納という上級の魔法陣がありまして。異空間内では時間が経過しないんです。でも、ゼミの上級生でもなかなか難しいんですよ」
「大丈夫。ニコラくんならきっとそのうちできるようになるよ! できるようになったら教えてほしい」
「まあ…必要かもしれませんねえ。今後は」
昨晩はベアファング騒動で、お目当ての月見草採取は中断してしまった。
改めて、また別の満月の日に行こうと約束した。
「すみません、ポルトの森でベアファングを討伐したので、報告と買い取りもお願いしたいんですが」
「Bランクのベアファングですか? あなたたちが?」
受付のお姉さんは、信じられないという顔をする。
私たちがついこの間Fランク登録したばかりだということを、覚えていたようだ。
「嘘じゃねえぞ」
マルクがベアファングの頭を取り出して、カウンターにどさっと置く。
「ちょ、ちょっとお待ちください!」
受付のお姉さんは、あわてて奥へ引っ込んでしまった。
そして、誰かに指示を聞いて、戻ってきた。
「確認ですが、ベアファングと遭遇したのは、ポルトの森のどのあたりでしょうか?」
「湖の近くです」
「そうですか…ポルトの森でそういった大型の魔獣が出たのは初めてですね。報告ありがとうございます。ギルドを通して冒険者の方には情報を共有させてもらいます。ところで買い取りの方なんですが、あなた方は確か学園の生徒さんですよね?」
「はい、そうです」
「規則で学園生の方は、パーティーでないと討伐は禁止されているんです。4人はパーティーということでよろしいでしょうか?」
4人で顔を見合わせる。
ほら。パーティー組んだ覚えはなくても、そう認識されてしまう流れなんだよ。やっぱり。
「僕は冒険者登録してませんけど…」
「今から登録していただいても大丈夫ですよ」
とりあえず、買い取ってもらえないのは困るので、ニコラくんの冒険者登録をして、パーティー申請をすることになった。
「まさか僕が冒険者になるとは…」
「ニコちゃんは大賢者を目指すんでしょっ?」
レアナがいつの間にか、ニコラくんにあだ名をつけていて笑う。
ニコラくんはなんだか、達観したような表情だ。
冒険者証を受け取って、しげしげと眺めている。
「それでは、パーティー名はどうされますか?」
うーん。パーティー名ねえ。
こういうの、考えるの得意じゃないんだよなあ。
マルクは、考えるのはお前らの仕事とでもいうように、知らん顔をしている。