キャンプファイヤー
「レアっ、大丈夫っ?」
「うん…魔力使い果たした。眠い」
「魔力回復薬あるから、待ってて」
あわてて荷物の中から魔力回復薬を出して、レアナに飲ませる。
怪我はしていないようで、よかった。
「マルク、回復かけるね」
「おぅ…」
「これ…死んだ?」
「多分な」
マルクは仕留めたベアファングを見て、まだ呆然としている。
「ポルトの森にこんなやついたか? 初めてみたぞ」
「最近、王都周辺で魔獣が増え始めたと聞きましたよ」
ニコラくんは、ポルトの森に採取に行くとスワンソン先生に伝えてきたらしい。
その時に、見慣れない魔獣に注意するようにと言われたようだ。
ふと、気が付いたように、マルクが私を睨む。
「ところでおい、お前ら、俺になんか言うことあるんじゃねえの?」
「へ? 言うことって?」
「なんだよ!さっきの。俺、魔導士クラスとパーティー組んだのかと思ったぞっ!」
「ああ…ごめん。それね。その、ちょっと言いそびれて…」
緊急事態だったから、隠し通せなかったわけだけど。
もう誤魔化しはきかないよね。
「ルイーズさん、聖騎士でしたよね? なんか攻撃魔法使ってませんでしたか?」
ニコラくんも突っ込んでくる。
「レアナも火魔法使ったよな? 特大の。なんだあれ。正直に言え!」
「「隠してました! ごめんなさい!」」
レアナと私は、すべてを白状することになったのだった。
成り行きだ。仕方ない。
「…ったく。おかしいと思ってたよ。お前らが狩ってた角ラビ、時々黒焦げになってたからな」
「騎士科に攻撃魔法が使える人がいるなんて、初めて聞きましたね。そんなことあるんですね」
みんな疲れ果てたので、コテージで泊まることになった。
魔物が寄ってこないように、焚き火を炊いて、キャンプファイヤー状態だ。
マルクが串刺しのデビルフィッシュを焼いてくれた。
「まあ、いいけどよ。お前らのお陰でベアファング倒せたしな」
「まさか、Bランクのモンスターを倒せるとは思いませんでした…」
「お前もすごいな、ニコラ。魔導士って初めて近くで見たけど、すげえよ」
「いえ…夢中だったので。僕はモンスターと戦ったのは生まれて初めてです」
ニコラくんは、マルクに褒められてうれしいようだ。
今は隣同士に座って、すっかり仲良くなっている。
「初めてであの威力かよ…ちぇっ、俺だけなんか役立たずな気分だ」
「そんなことないよ! あんな大きな魔獣にとどめを刺せるの、この中ではマルクだけじゃん!」
私なんて、みんなに身体強化かけて、エアスラッシュで足にちょっと傷つけただけだ。
(勇者)だけど、この中で一番攻撃力がないのは、私じゃないの。
ほんとに勇者?と自分に突っ込みたくなる。
「で、ルイーズは聖騎士だが、勇者? レアナは火魔法が使えるようになって、魔導戦士になる可能性があるというんだな?」
「まあ…そういうことなんだけど。黙っててごめん。学園側に知られたらややこしいと思って」
「そんな摩訶不思議なことってあるのかよ…」
マルクは地面にごろん、と寝転がって、満月を眺めている。
そして、思い出したように寝転んだままポケットから学生証を取り出して、ステータスを確認した。
「お、あ、あれっ?」
マルクが飛び起きて、なんだか不思議そうな顔になった。
「俺、騎士の後ろに(剣豪)って表示されてるぞ…」
「え? マルクも?」
ニコラくんも、自分のステータスを確認してみる。
「僕もです…魔導士の後ろに(大賢者)って…」
「ニコラくんまで!?」
4人で顔を見合わせる。
「なんかおかしいな…」
「おかしいですね…」