ニコラくんも誘ってみた
学園の食堂でニコラくんにばったり会ったので、レアナを紹介した。
一緒にいた魔導士科の人は変な顔してたけど。
ついでに月見草採取の話をする。
「私たち、次の満月のときに、月見草採取に行くんだ。ニコラくんも一緒にどう?」
「えっ。ポルトの森ですか? 大丈夫なんですか? ふたりで」
「ふたりじゃなくて、騎士科のBクラスの人に護衛頼んでる。強いから大丈夫だよ」
「騎士科の3人とですか…」
何かちょっと考える様子。
落ち着きのない様子で、周囲を気にしている感じだ。
騎士科と仲良くしていると、何かまずいことでもあるんだろうか。
「私たち、初めての採取だから、一緒に来てくれると助かるんだけどなあ。ニコラくん、詳しいじゃない?」
「…わかりました。僕もちょっと採取したいものがあるので、いい機会です」
「本当? 助かる~! じゃあ、一緒に行こう!」
なんだか、周囲の魔導士科の人がヒソヒソとこっちを見て何か言ってるみたいだけど、気にしない。
ニコラくんは、私の大事なお師匠様だ!
スワンソン先生も公認だしね。
満月の日。
月見草は夕方以降に花が咲くということなので、午後の訓練が終わってから待ち合わせる。
ポルトの湖の近くには、釣り人が野営できるような場所と、コテージがあるらしい。
ひょっとしたら野営になるかもしれないので、コテージをレンタルすることにした。
最近ちょっと裕福なので、私とレアナがギルドにお金を払っておいた。
初めての冒険気分だ。
ニコラくんは、採取用のバッグを持ってきていて、見せてもらった。
中が細かく分かれていて、種類別に分けてしまうことができるバッグ。
便利そうなので、私もひとつ欲しいなあと思った。
野草の図鑑も持ってきてくれていて、なんとなく学者っぽい。
ニコラくんは、魔導士科のBクラスなので、てっきり回復か補助魔法の僧侶系だと思っていたら、純粋の魔導士なんだそうだ。
なので、回復魔法は使えない。
攻撃魔法が使えるのになぜBクラスなのかと聞いたら、子どもの頃に足を怪我して、あまり走れないと言う。
戦場には出られないので、魔導士になるのは諦めて研究者を目指しているんだって。
それでスワンソン先生の助手をしてたんだ。
人にはそれぞれ、事情があるよね。
マルクがずんずんひとりで先に行ってしまうので、ニコラくんに身体強化をかけてあげたら、すごく喜ばれた。歩きやすいって。
湖に到着すると、夕暮れを待つことになった。
私とレアナでサンドイッチやフルーツを持ってきたので、みんなで食べる。
ピクニック気分で楽しい。
マルクは釣り道具を持ってきていて、デビルフィッシュ釣りを始めた。
デビルフィッシュは夜釣りの方がよく釣れるらしい。
夕焼けが空を染める頃、大きな満月が出て、月見草が花開き始める。