蘇る記憶②
…え!?
何か重大なことを思い出したような気がして、飛び起きた。
今度こそ人生をやり直すつもりだった…?
何それ。
今、記憶の中で私のことを罵ってた男の人、誰?
あれはどこだった?
大学?
「瑠衣~部活行こうよ!!」
毎日のように、笑いあった親友の顔と声が蘇る。
家族として暮らしていた、黒髪の父と母。
記憶の断片が鮮やかに脳裏に浮かぶ。
ちょっと待って。
私、大学生で20歳だったよね?
日本人で。
それって、いつの記憶?
そうか。
死んだんだ、私。
前世の私、大神瑠衣は、死んでこの世界に生まれ変わったんだ。
一人暮らしで風邪をひいて、高熱が出て、彼氏にメールしたんだっけ。
あまりに辛くて、「風邪薬を買ってきてほしい」とお願いしたけれど。
返ってきた返事は、
「お前ぐらい強い女は風邪ぐらいで死なねーよ!」
だった。思い出した。
風邪ぐらいで、死んだんだ。私。
何か、脳みその中でひっかかっていたものが、ずるずると出てきたような気がした。
今度こそ優しい人と恋をして、一緒にいると癒やされるって言ってもらいたいたい。
生まれ変わるときに、そんなことを願ったのかな。
だから、聖女になりたかったのかな。
前世のトラウマって、結構次の人生に影響及ぼすのね。
鏡にうつる今の私は、10歳のルイーズ・デイモント。
騎士爵家の次女。
これが今の私なんだ…と不思議な気持ちになる。
脳内が一気に10歳年をとってしまった感じ。
さて。
20歳だった記憶を取り戻したのは、考えたらラッキーかもしれない。
うまく立ち回れば、なんとかして戦争に行かなくてもいい道もあるかもしれない。
たとえば、学園にいる間に婚約者を見つけるとか?
そしたら、騎士団に入らなくてもいいかもしれないよね。
すぐに子どもができたりしたら、さすがに出兵はないでしょう。
うん。頑張ろう。
学園に行って、婚活しよう。
できる女にならないようにしなくちゃ。
もし、学園で相手が見つからなくても、騎士団に入れば少なくとも騎士爵の相手が見つかるんじゃない?
そっか。
まだ、悲観するのは早いよね。