回復薬を作りたい
「錬金のゼミに出たいだと? なんでだ? お前、必要ないだろうが」
ワルデック先生が渋い顔をする。
騎士科と魔導士科は、実はあまり仲がよろしくないと聞いている。
魔導士科の人は騎士科の人をあまり賢くないと、見下げているようなところがあって、学園内でも交流することは少ない。
騎士科は騎士科で、前衛で戦うことにプライドを持っている。
先生同士もあまり仲良くはなさそうだ。
教務室の中で声が響いたので、魔導士科の先生らしき人が、ジロリとこちらを睨んだ。
「だって、聖女様は錬金のゼミに参加できるんですよね? 不公平じゃないですか。私だって聖騎士なんだし、回復魔法に関係あることは勉強しておきたいです」
「勉強なあ…お前、剣より勉強の方が好きなのか?」
「戦いのために役に立つことは、なんでも勉強しておきたいと思ってます」
一応優等生っぽく正論を言ってみる。
仕方ないなあ…という困った顔で、ワルデック先生は頭をガリガリとかいた。
「聞こえてますよね? スワンソン先生」
先程ジロリと睨んだ先生に向かって、ワルデック先生が声をかける。
「騎士科の生徒が、魔導士科のゼミについてこれるはずがないでしょう。興味本位で参加されても迷惑ですよ」
銀縁眼鏡に、銀髪のロングヘア、いかにも魔導士タイプのスワンソン先生。
神経質そうな感じ。結構イケメンだけど。
「スワンソン先生! 私は聖騎士ルイーズ・デイモントです。興味本位ではありません!真剣に勉強したいと思っています!」
「ふむ…聖騎士デイモントですか。そういえばあなたは確か今年の次席でしたね」
「はい! 自分で言うのもなんですが、勉強は好きです!」
「まあ、いいでしょう。特別に聖女様と同じ扱いにしておきます。ただ…目的はなんですか?なんか理由があるんでしょう?」
銀縁眼鏡をずいっと持ち上げながら、見透かすような目でスワンソン先生がじっと見ている。
「その…回復ポーションに興味があるんです。どうやって作るのかなって」
「ポーションですか…なるほど。それなら、来週のゼミ2回だけ、参加を許可します。日程と時間は魔導士科の掲示板で確認すること。薬草などの材料はなるべく自分で用意してくださいね」
「ありがとうございます!」
スワンソン先生が、机の引き出しから必要なものが書いてある紙を出して、渡してくれた。
よし!
絶対にマスターして、ポーション自力で作れるようになろう。
そうと決まったら、薬草集めに行かないとね!
できればレアナと一緒にゼミに参加したかったんだけど、それは諦めた。
レアナが魔法使えることは内緒だからなー
ここは、私が頑張ろう。
魔導士科にも友達できたらいいのにな。