狩りに出る
休日に、マルクと3人で狩りに出ることになった。
何度かレアナとふたりで角ラビ狩りはしていたんだけど、ふたりだと解体にも時間がかかるし、せいぜい4体ぐらいしか運べない。結構な重労働だ。
マルクが一緒のときは、剣の練習だと思って、魔法を使わずに倒す。
最近は、ふたりとも剣を鍛えたいという気持ちになってきた。
草原を駆け回って、角ラビを次々と倒していると、ストレス発散できる。
マルクのお父さんも喜んでくれているみたいで、いいアルバイトだ。
「10体倒したよー。マルク、解体お願い」
「早えな…もう倒したのかよ。ああ…そういえば、お前ら、こないだ決闘に勝ったんだって?」
思い出したようにマルクが聞いてきた。
Bクラスでも噂になっていたみたい。
「勝ったっていうか、まあ、まぐれだよね?」
レアナとふたりで顔を見合わせる。
相手が油断してたからなあ。
もう一回やったら勝てる気がしないけど。
「まぐれって…そうでもないと思うぜ? お前ら結構強いよ」
「そうかな?」
「普通、慣れてる大人でも角ラビ10体は半日以上かかるぞ」
「すばやさには自信あるもんね!」
レアナがエッヘンと胸をはる。
事実、角ラビぐらいなら身体強化をかけなくても、一撃で倒せるようになった。
レアナは最初の頃、マルクとほとんど話さなかった。
脳筋タイプが苦手だと言ってたけど、最近はちょっと慣れてきたみたい。
作業がしやすいように、角ラビを並べたりして手伝っている。
ふたりが作業を始めたので、私はレアナと自分に回復魔法をかける。
小さな切り傷や擦り傷が、キレイに消えていく。
「お前らはいいよな、怪我も治せるし。うらやましいよ」
うん。確かにそれはそうなんだけど。
実は私は身体強化もするし、攻撃魔法も使う。
その上、回復まで担当するとなると、魔力が心許ないなあ、と思う。
魔力温存するのに、回復ポーションはいずれ必要になるだろうと思っている。
確か回復薬の作り方を習うには、錬金のゼミに出ないといけないんだっけ。
回復ポーションの売値は、低級のものでも5000ダルぐらいする。
これが作れたら、私もレアナも泥だらけの血だらけになって走り回る必要ないかも。
「マルクは私たちよりずっと強いじゃん。百足ヘビだって一撃だし」
「しょせん、ヘビだからな。学園に俺より強いやつはいくらでもいるぜ」
マルクは腕っぷしは強くても平民だから、王国の騎士団に就職することはない。
よくて、辺境の騎士団にでも入って、国境付近の警備だと前に言っていた。
今は戦時中ではないんだけど、隣国とは仲が良いとは言えないし、国境付近では小競り合いが多いと聞く。
いつかマルクも、戦場に行くんだろうか。
それだったら、冒険者になってモンスターと戦う方が、気楽でいいのに…
人間と殺し合いをするところを想像すると、私には無理だと思ってしまう。
王国の騎士団だって、戦争になればきっと戦場に行かないといけない。
本当に私は騎士を目指していていいんだろうか、という気がしてくる。
このまま3人で楽しく狩りをして、暮らしていきたいな…なんて想像してしまった。
冒険者なんてまっぴらだと思ってたけど。
今は平和だ。