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蘇る記憶①

 私が魔力持ちだと気付いたのは、6歳の頃だ。

 まだ2歳でよちよち歩きの妹が転んで、膝を擦りむいてしまったことがあった。

 母はたまたま隣の家に用事に出かけていて、妹の面倒を見ていた。


 転んでギャン泣きしているところへ母が帰ってきたら、ちゃんと面倒を見ていなかったと叱られそうで、焦った。


「痛いの痛いの飛んでけー!」


 そう言って、妹の膝に手を当てた。

 その瞬間に、ふっと傷が消えた。

 目を丸くして、泣き止む妹。


「ルイおねえちゃん、それおまじない?」

「そうだよ。ケガしてないから、泣かないでね」


 自分の手から、温かい何かが流れ出たのが、はっきりとわかった。

「痛いの痛いのとんでけ」という言葉は、いつ知ったのか、自分でも不思議だったけど。

 それから、何度か小さな怪我をしたときに、こっそり治してみた。

 

 小さな怪我なら治せる。

 そんな人いるのかな?と思って、近所の子どもに聞いてみたりしたけど、誰も治せないと言っていた。

 何となく、人に知られてはいけない能力のような気がして、誰にも黙っていた。

 

 それが治癒魔法だと知ったのは、父が狩りで怪我をしたときのことだ。

 母はあわてて教会に走り、若い女の子を数人連れてきた。

 その子たちが父を取り囲んで手をかざしていると、数分のうちに出血は止まり、奇跡のように傷がふさがった。


 村に薬師はいるが、医者という職業の人はいない。

 怪我や病気のときには、教会から聖女様を呼ぶのだと、その時に知った。

 

 それから、私は毎日ひとりで、治癒魔法の練習を続けた。

 枯れかけた植物を生き返らせたり、死にかけている虫や怪我をしている動物を治したりして。


 最初は、一日に2、3度魔力を使うと、すごく疲れて眠ってしまったりしていたけれど、毎日練習するうちに使える回数が多くなっていった。

 これなら、聖女様になれるかもしれない。

 そう、思うようになった。

 鑑定の日には、やっと聖女になれると思って、意気揚々と教会へ向かったのに。


「聖騎士…」


 どうしても納得がいかなくて、教会から帰った私は部屋に閉じこもって、ベッドの上で呆然としていた。

 あれから、神官様に呼ばれて、父に今後のことを伝えているのを黙って聞いていた。

 聖騎士というのは、とてもめずらしく、王国内でも数年にひとり出てくるかどうかというぐらいのレア職らしい。

 12歳になったら、王都にある王立学園の騎士科へ優先的に入学できるという話だった。

 うちは王都の学園へ行かせるほど裕福ではないと思ったが、奨学金も出るという話で、父は喜んだ。

 ただでさえ女性騎士は少ない上に、治癒魔法が使える。

 それだけで、王国の騎士団に入れる可能性が高いとも聞いた。

 女性の王族の、護衛や侍女になれるとか。


 誰もがうらやむような、エリートコース。

 でも、私、そんなこと望んでなかったんだよなあ…

 教会で地味に人助けして、村の人とかに「ありがとう」って言ってもらえるような仕事につきたかった。

 普通に恋愛して、お嫁にいって、平和な家庭を築くものだと思っていた。


「できすぎる女って、疲れる」

「お前と一緒にいても、癒やされないんだよ!」


 そんな風に罵られて、彼氏に捨てられたこともあったっけ…

 あれはいつの記憶だったんだろう…


 ウトウトしながら、辛かった記憶を思い出して、涙がこぼれた。

 今度こそ人生をやり直して、人を癒やすんだと思っていたのに…


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