交渉
解体を教えてもらいながら、お互いに自己紹介をする。
マルクの両親は王都で肉屋をしていて、その手伝いで角ラビを狩りに来ていたようだ。
狩る手間がはぶけたので、本当に喜んでいるみたい。
ヘビみたいな魔獣は百足ヘビといって、グロテスクな見た目の割に美味しいらしく、買う人がいるんだって。
私は遠慮したいけど。
角ラビの肉は、鶏肉に似た感じで、学生食堂でもたまに出てくるぐらいポピュラーだ。
干し肉にすると保存食にもなるので、冒険者に人気があると教えてもらった。
「しっかし…よくこんなに倒したな。どうやって持ってかえるつもりだったんだよ」
「帰りのことは考えてなかった…モンスター討伐の練習してたのよ」
「は? なんでまた」
「実は、角ラビの討伐依頼を受けたかったんだよね。割と報酬がいいし」
「ギルドにいつも出てる依頼だったら、俺の親父だぞ。多分」
そっか! マルクのお父さん、肉屋だった!
そういう依頼を出して、売ってるんだ。なるほどー。
ということは、ギルド通さなくても買い取ってくれないかな?
「ねえ…ものは相談なんだけど」
「なんだよ、また。これ以上頼みは聞かねえぞ」
あ、露骨に嫌な顔になった。
早く帰りたいのかな。
でも、せっかく知り合ったんだから、ここで仲良くなっておくと、何かと助けてもらえそうな。
Bクラスの情報も知りたいし。
「いや、あのさあ。ギルドに角ラビ10体で1万ダルの報酬って書いてあったけど、お父さんはいくら払ってるの? ギルドの手数料とかあるんでしょ?」
「ああ、それだったら、ギルドには10体2万払ってるぞ」
「へー。ギルドって5割も取るんだ…結構ボッタクリだね」
「解体とかもギルドがやるからな」
「じゃあさ。10体1万5千ダルで私たちから買い取ってくれないかなあ。お父さんに頼んでくれない? ダメ?」
「ダメじゃないけど…うーん。どうだろ」
あまり、気が進まない様子だな。
でも、もうひと押ししてみよう。
「タダでとは言わないよ。1万5千ダルを3人で分けるから、マルクの取り分は5千ダル。どう?」
マルクがニヤリと笑みを浮かべた。
これは了承ってことかな。
「じゃあさ。お前らが狩ったら、俺が解体してやるよ。その代わり、親父には言うなよ? 俺、いつもタダでやらされてるんだから」
「オッケー! じゃあ、狩りに出るときは知らせるから」
よし。交渉成立。レアナもうれしそうだ。
これでギルドを通さなくても、角ラビで稼げる!
マルクがいるときは、短剣の訓練だと思ってやるしか仕方ないな。
攻撃魔法の練習をどうするかは、後でレアナと相談しよう。
しかし、マルクに出会ったのはラッキーだったなー。