表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

186/192

魔王部屋

 高い天井、真紅の絨毯、黒い石壁。

 ゲームで何度も見た魔王部屋そのままだ。

 中央の一段高くなった玉座に、悪魔のようなヤツが座っていた。


 真紅と漆黒のマントにはギラギラと派手な金の装飾。

 顔は仮面のようなものに覆われていて、目が死霊や魔神と同じく、赤く光っている。


「ようこそ……人間どもよ」

 その声に、背筋がゾッとした。

 直接頭に響くような、圧力のある声。

「ガモー=デビオン……」

「ほう、我の名を知っているか……貴様が勇者か」

 覚えてる……この雰囲気、この演出……

 間違いなくラスボス、魔王だ。

「ゼルゼア……まああの無能が倒されたのは想定内だ。それはまあいい……」

 魔王はゆっくりと立ち上がる。

 マルクが一歩前に出て、大剣を構えた。

 ワルデック先生も、私たちをかばうように、前へ出る。

「みんな、気を抜くなよ」

「はい!」

「来い、人間ども。我が手で終わらせてやろう」


 魔王が、ゆっくりと両腕を広げた。

 手のひらから、黒と赤の魔法陣が重なり合うように浮かび上がる。


「来るよっ!」

 私たちは素早くフォメーションを組んだ。

 マルクと先生は前へ、ニコラくんとレアナが左右、私とオーグストが中衛。

 打ち合わせ通りの配置だ。


『ダーク・ジャッジメント──』

 魔王が腕を振り上げると、天井から、黒い魔力の塊がいくつも降ってくる。

 当たるとヤバそうだ……


「聖結界!」

 オーグストが頭上に結界を築いて、防いでくれた。

 ニコラくんがなぜか、異空間収納を開いている。

「ニコラくん!」

「ルイーズさん、少し時間を稼いでください!」

「わかった……いかづちっ!」

 レアナとふたりで、魔法攻撃を連射する。

 時間稼ぐだけなら、なんでもいい。


 ニコラくんは異空間収納からメタルゴーレムを出して、魔方陣を起動した。

 コントロールパネルだ。

 メタルゴーレムは他のゴーレムたちに、命令を出して制御できるようになっている。

 異空間収納から、次々とゴーレムたちがでてきて、私たちはその陰に隠れた。

「ゴーレムにはそれぞれ物理結界がありますから!」

 盾ができたので、これで少し戦いやすくなる。

 魔王から直接攻撃受けたくないもんね。


 マルクが先陣を切って、剣を構えて突進した。

「斬撃剣っ!」

 大剣が魔王の胸元を斬り裂く――が、手ごたえが薄い。

「はっはっは……浅いな」

 魔王の身体の傷は、すぐに再生した。

「なっ……!?」

 マルクが横飛びで避けると、先生が横から斬りかかる。

「斬鬼滅殺!」


 先生の一撃が、魔王の肩に深くめり込む。

 黒い血のようなものが飛び散った。

 効果あり……?

「なるほど、今のはなかなかだな。だが――遅い」

 魔王はまったく痛覚がないんだろうか?

 傷など気にする様子もなく、反撃の魔法を詠唱し始めた。


「全員っ、身体強化! オーグスト、強化頼む!」

「おうよっ! 炎耐性強化っ! 魔法防御強化っ!」

 オーグストのバフが全員にかかると同時に、魔王の手から巨大な火球が放たれる。

『フレイム・アナイアレーション』

 灼熱の弾丸が無数にふりそそぐ。

 エヴァ先輩がいたら氷魔法で……

 いや、今は私がやるしかないっ!


「エアスラッシュ!」

 空気の斬撃を火球にぶつけて、なんとか直撃を防いだ。

 ちょっとコントロールがずれてたら危なかった。

 背中に嫌な汗が流れる……

 まだ第一形態でも、これだけ強いなんて。


「回復っ、誰かっ!」

「ヒーリング!」

 オーグストの回復が飛んでくる。

「ニコラくん、そろそろお願いっ!」

「高速連射陣、アイスランスっ!」

 メタルゴーレムの上にいるニコラくんの魔方陣から、氷の槍が何十本も飛び出す。

 その中の数本が、魔王のマントを引き裂いた。

「ぬ……この程度では、我を傷つけることはできぬ……」

 魔王の仮面の奥が、じわっと赤黒く光った。

 全然本気出してないんだ……


「レアっ! ファイアーストームで炎の壁を!」

「了解! ファイアーストーム!」

 火の竜巻が、魔王の視界を遮る。

「マルク! 今よっ!」

「行くぞっ!」

 マルクと先生が二人がかりで斬りかかるが、魔王は仮面の奥で嘲笑する。

「ふむ……その程度か。つまらん」

 第一形態なのに、まったくノーダメージ……

 こんなに強かった……?

 なんで攻撃が通らないんだろう。

 エヴァ先輩……クリス先輩……

 早く来て……!


 マルクの兜割りが魔王の肩をかすめ、ワルデック先生の突きが脇腹を貫く。

 黒い血が派手に飛び散った。

 でも……魔王はまったく動じている様子はない。


「ふむ……」

 魔王は無表情なまま、脇腹を指でなぞった。

「今のはダメージがあったのか……」

 そうつぶやいた時、仮面の奥の瞳が赤く点滅し始めた。


 何かが変わった……?

 魔王は動きを止めている。

 

「もしかして……変身する?」

 のそり、と再び動き出した魔王の身体から、赤黒い光が溢れる。

 第二形態だ……

 身体がメリメリと巨大化し、外見が変質していく。


 マントが裂けて、筋肉質な腕と異様に長い手足が現れた。

 仮面も砕けて、顔が剥き出しになる。

 白い無表情な顔に、機械的な赤い目……

 なんだか、ゲームの中のアバターっぽい顔だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ