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魔王城到着

 ふたたび山を登り始めて、数時間。

 いよいよ魔王城の正面門に到達した。

 大きな門は、黒い鉄で作られ、重厚な作りをしている。

 ずっと夜だから時間の感覚がないけど、そろそろお腹がすいてきたので、お昼頃じゃないだろうか。


「これを壊すのか?」

 マルクが少し驚いたように大きな門を見上げている。

「ああ、なんてことはない。別に門が襲ってくるわけじゃないからな」

 ワルデック先生は、トゲトゲ棍棒で門をコツコツと叩きながら、ニヤリと笑った。

 マルクもワルデック先生とお揃いの、トゲトゲ棍棒をマジックバッグから取り出す。

 これでよく、骸骨騎士の頭とか砕いてたよね。


 ワルデック先生がトゲトゲ棍棒を手に取り、マルクがその隣に立つ。

 みんなが少し距離を取って見守る中、ワルデック先生が力強く一撃を放った。

 鈍い金属音がして、門の真ん中あたりに大きくひびが入る。

 すごい。

 よく自力でこんなの壊せるよ……


「よし、マルク! やるぞ」

 ふたりしてガツンガツンと門をたたき壊し始めた。

 まるで工事現場みたいな音が、ガンガン響いている。

 私とオーグストで、ふたりの腕に回復魔法と身体強化をかけまくった。

 そしてついに、ひときわ大きな音をたてて、門がバターンと向こう側に倒れた。

 もうもうと立ち上る土煙に、ゲホゲホとみんなむせている。


「突破できたな」

 ワルデック先生が白い歯を見せて笑った。

 ほんと、無茶苦茶な先生だよ。

 マルクも肩をぶんぶん回して、まだ力が余ってるみたいな感じ。


「これが魔王城の入り口か……」

 正面に立って、仁王立ちで城を見上げる先生。

 魔王城の圧倒的な存在感に、みんなが一瞬息を呑む。

「ついにここまで来たな……」

 マルクがしみじみと呟き、その目は少しだけ感慨深げだった。

 本当に。

 ここまで長かった。

 私たち、入学してから、ずっと戦ってきたよね。

 気がついたら、ここまで来てた。


「まだ先は長い。気を抜かずに行こう」

 エヴァ先輩が、みんなを見回しながら一歩踏み出した。

 そうそう。ここからがまだ長いのよ。

 魔王城って、そう簡単に魔王部屋までたどり着かないのよねえ。

 これはゲームの話だけど、実際はどうなんだろう。


 城の入り口はぽっかりと口をあけて、私たちを待っているように見える。

 行きたくないけどな……

「先生! 私、お腹空きました!」

 レアナの無邪気な声に、みんなが笑った。

 崩れた門の前で、適当に腰掛けてパンや干し肉をお腹に入れる。

 これが多分、今日最後の食事。

 次の食事は、本部に帰ってみんなでわいわいと食べたいな……


 ギイィ……

 さびついたような音をたてて、扉が開く。

 魔王城の入り口に、鍵はかかっていなかった。

 まあ、かかっていたとしても、またマルクたちが壊すだけだけど。

 

 魔王城の中は、思ったよりも静かだ。

 壁の装飾はほこりをかぶっていて、ところどころにロウソクの火程度の青い光がともっている。

 魔王の部屋は上階だというのはわかっているんだけど、少しあたりを偵察することになった。

 まずはニコラくんに、周囲に敵が潜んでいないか、索敵をかけてもらう。


 「これ、どこまで続いてるんだろ」

 レアナがちょっと退屈そうに、壁の装飾を触りながら歩いている。

 すぐ近くの壁に、淡く光るボタンのようなものがあった。

「ねえ、あれ……光ってない?」

「レアナ、待って、あんまり近づいちゃ——」


 私が言い終える前に、レアナはボタンをよく見ようと歩き出して——

 次の瞬間、ガコン!という音とともに、床に大きな穴が開いた。


「うわああっ!」

 レアナの悲鳴が響く。

 落ちた……

「レアナ!!」

 マルクがすっ飛んできて、レアナの後をおいかけて穴に飛び込んだ!

 

 どうしよう……

 みんな一瞬固まったけど、先生がすぐに声をあげた。

「よし、全員続け! ふたりを見失うなう前に追いかけるぞ!」

「行きます!」

 クリス先輩がためらわずに飛び込み、私たちもそのあとに続いた。


 高さはそれなりにあったけど、私たちは全員、身体強化の加護がある。

 下に着地したとき、尻もちはついたけど、誰も怪我はなかったみたい。


「……みんな無事?」

 レアナがのんきに声をかけてきた。

 よかった、ほっとした……

 マルクのほうが青ざめた顔してるよ。


 あたりを見回すと、だだっ広い石造りの部屋だ。

 壁に彫刻のようなものがあって、遺跡のような雰囲気。

 天井は高く、壁のあちこちに古代文字みたいなものが刻まれている。

 私たちが落ちてきた穴は、いつの間にかふさがっていた。


「ここ……地下神殿か何かですかね」

 ニコラくんがランプを取り出し、あたりの古代文字を調べながら言った。

「この模様、どこかで見たことあるな……あの封印の祠か?」

 そういえば、燭台のようなものが落ちていたりして、あの封印の祠と似てるかも。

 クリス先輩も、うんうん、と同意している。


 「出口……ないよな?」

 エヴァ先輩の言葉に、みんなあちこちを探してみるが、出口らしきものは見当たらない。

 ワルデック先生が拳で壁をトントンと叩いて調べてるけど、石でできていて分厚そうな壁だ。

「吹っ飛ばしてみるか?」

「いやいや、クリス先輩……ここ、地下ですよ? 埋まったらどうするんですか」

「そうか、いや、それもそうだな」

 頭をかく、クリス先輩は、ちょっぴり脳筋だ。

 まあ、私もメテオなら壁に穴があくかも、とは考えたけど。


 でも、部屋があるんだから、何か外へ出る方法があるはずなのになあ。

 もしかして、魔神たちは転移魔法とかで移動してるとか……?

 そんなことを考えていると、突然、地震のように神殿が揺れた。

「……今の、なに?」

 レアナが不安そうに声をあげる。

 その時、左右の大きな柱の向こうから、巨大な影が姿を現した。

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