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百足ヘビ

 依頼分の薬草は採取できたんだけど、少し余分に集めておくことにした。

 薬草は依頼が出ていなくても、ギルドで買い取りをしてくれるらしい。

 多めに集めておいても、無駄にはならないよね。


 少し背の高い草が生い茂っているあたりで探していると、レアナの悲鳴が聞こえた。


「ルイっ! ヤバいのがいるっ!」


 レアナが腰を抜かしたように、地面に尻もちをついていた。

 目の前に、3メートルぐらいありそうな大蛇がトグロを巻いている。

 ヤバすぎる。背筋がぞっとする。


「逃げなきゃ! 早くっ」


 レアナを助け起こして一目散に逃げようとしたら、ズルズルと音を立てて追ってくる。

 振り返って、信じられないものを見た。

 ヘビじゃなくて、足がある…ムカデみたいに。


「ひゃああー 何あれー!」

「嫌ああああ」


 今度は私が転んだ。

 まずい!と思った瞬間に、誰かがガサっと草むらから出てきた。

 そして、びゅんっと大剣を振り下ろして、一撃で首を切り落としてしまった。

 助かった…けど、誰?

 

 筋肉ムキムキの若者だ。

 あれ? この人、どこかで見たことがあるような気がする…


「大丈夫か? この獲物、俺がもらっていいか?」

「ど、ど、どうぞ…」


 レアナはおびえた顔で後退りしている。

 驚いて声も出ない私達の前で、その人はヘビもどきを叩き切って、何等分かに切り分けていく。

 お礼を言うのを忘れていたことに気付いて、私は声をかけてみることにした。


「あの…ありがとう。助けてくれて」

「ああ、別にいいよ。それより、そのへんに散乱してる角ラビ、お前らの?」

「あー。あれね…いやあ、どうしようかな」

「どうしよっかなって…早く解体しないと腐るぞ」


 その人は、呆れたような顔になった。

 死体を放置しておくのはまずいな、とは思っていたよ。うん。

 後で埋めようかな、とか考えてたんだけど。


「私、ルイーズっていうの。この子はレアナ。あなたは?」

「マルク。マルク・ローラン。お前、Aクラスの聖騎士様だろ?」

「聖騎士様って…私のこと知ってるの?」

「まあ、そりゃあ有名だし? 俺はBクラスだけど、みんな噂してるしさ」

「噂ってどんな?」

「…聖騎士様は、剣が初心者って噂。ほんとだったんだな」


 マルクは頭をかいて、少し気まずそうな顔をしている。

 でも、正直な人みたいで、悪い印象じゃない。

 初心者っていう噂なら、私は気にしないもんねー。

 むしろ、その方が目立たなくていい。


 手際よくヘビもどきを解体したマルクは、麻袋のような大きな袋に詰め込んでいく。


「ねえ…ちょっとお願いあるんだけど」

「なんだよ」

「角ラビの解体の仕方、教えてくれない?」

「やったことねぇの?」

「ないわよ。今日が初めての戦いだったんだから」

「仕方ねぇなあ」


 面倒くさそうに、マルクは袋を置いて、角ラビの方へ歩いていく。


「あ、あのさ! 教えてくれたら、角ラビ全部あげるから!」

「え? くれるの? なんで? お前らが倒したんだろ?」


 マルクは急にうれしそうな顔になった。やっぱり正直な人だ。

 いやいや、引き取っていただけると、こちらも助かる。

 

「私たちが受けた依頼、薬草採取なんだ。その…ついでに討伐したというか」

「本当にもらっていいの? 角ラビの肉って結構いい値で売れるぜ?」

「いいです、いいです。全部どうぞ」


 レアナもどうぞどうぞという手振りで、マルクに全部押し付けようとしてる。

 ほんと、救世主だね。マルク。



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