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出発

 裂け目の向こう側に入ってみると、空気が変わった。

 なんていうか……乾いたかび臭い匂いのような空気。

 毒気はないようだけど、あんまり長居したい感じではないな。

 ニコラくんが作ってくれた、解毒の腕輪もあるし、一応身体は大丈夫みたい。

 

 空は紫がかった色で、薄暗い。

 丸い月のような光が浮かんでいるけど、少し赤みがかっていて不気味だ。

 足元はでこぼこしていて、岩肌を歩いているような感覚。

 

 ニコラくんが異空間収納を開き、そこから一台一台、ゴーレムを取り出していく。

 大きなゴーレムが、次々と出てきて、ズシンズシンと大きな音が響く

 こんな音をたてて、ゴーレムたちが行進してたら、すぐに敵にバレちゃうんじゃないだろうか。

 それにしても、アイギス島で戦っていたときは敵だったゴーレムが、頼もしく感じるから不思議だ。


 そのゴーレムたちの背中には、しっかりと座れるスペースが作られていた。

 なんだかアニメに出てくる、操縦できるロボットみたい。

「これ、どうやって運転するんだ?」

「魔方陣に手をあてると進めます」

 ニコラくんは皆に説明しながら、ゴーレムの側面に浮かんだ魔方陣に手を当ててみせる。

 すると、ゴーレムがゆっくりと前へ一歩踏み出した。

「おおー! すごい」

 マルクは興奮気味に魔方陣に手をかざして、ドタドタと歩き回り始めた。

 他のみんなも恐る恐る運転の練習をしてみる。

 私も、ゲーム感覚で問題なく操縦できた。

 意外に楽しいし、座ってるだけなので楽ちんだ。

 ゴーレム同士がぶつかっても、頑丈なので、怪我をしたりすることもなさそう。

 私がゴーレムを簡単に操縦しているので、みんなが驚いた顔をしている。

「ルイーズさん、なんだか慣れてますね?」

 ニコラくんが不思議そうな顔をする。

「ゲームで操作するのと一緒だからね。私、前世でこういうの、得意だったんだ」


 ニコラくんの乗っているゴーレムは、みんなのとは違って、メタルゴーレムだ。

 神殿でクロエさんのそばにいた、二体のうちの一体。

 このゴーレムは性能が飛び抜けていて、ニコラくんが他のゴーレムを集中制御できるようになっている。

 誰かが運転を誤ったり、敵に襲われたりした場合、自動運転に切り替えることもできるんだって。

 だったら、最初から自動の方が楽なんだけど……と思ったけど。

 練習を兼ねているから、それぞれが操縦していくらしい。


 レアナもだいぶ慣れたのか、マルクのゴーレムと追いかけっこをしている。

 相変わらず平常運転だ。

 エヴァ先輩とクリス先輩は、ゴーレムを操縦しながら剣の対戦をしている。

 いつ敵が襲ってくるかわからないもんね。


 しばらくゴーレムの試乗をしていると、スワンソン先生たちが遅れて到着した。

 裂け目のあたりで、騎士団の人たちがテントを張り始める。

 大きなたいまつが何本も立てられて、あたりが明るくなっていく。

 特大の焚き火が目印で、火を絶やさないようにしてくれるらしい。

 私たちが帰ってくるときの目印だ。

 これなら暗くても大丈夫。


 スワンソン先生は大きな魔方陣を地面に浮かび上がらせて、チェックをしている。

「デルビー、そっちの準備はどうですか?」

「はい、僕はいつでも大丈夫です」

「じゃあ、一度実験してみましょう」

「みんな、このあたりに集まってくれますか?」


 ニコラくんが両手をあげて、頭上に大きな魔方陣を展開した。

 すると、スワンソン先生のそばにある魔方陣が、それに反応するように光り始める。

「行きますよ! なるべく僕のそばにいてください」

 いちだんと魔方陣の輝きが強くなった、と思った瞬間、私たちはスワンソン先生の魔方陣の上に移動してた。

 全員そろって。


「成功しましたね……」

 ニコラくんが大きく息を吐いて、ホッとしたような顔になった。

 かなり魔力を消費するのか、少し顔色が悪い。

「ニコラくん、回復かけようか?」

「……あ、お願いします」

 魔力までは回復してあげられないんだけど、疲れはとれるからね。

「これで帰ってこられることはわかりました。みんな、心配しないでください!」

 ニッコリと笑顔になったニコラくんが頼もしい。

 この転移魔方陣、かなり練習したんだろうな。

 すごく難しいって言ってたし。


「あの山の上に魔王城があるんだよね……」

 レアナが遠くを指さしながら、つぶやいた。

 その指の先には、真っ黒な山が見えている。

 そのてっぺん当たりに明かりらしき光が見えているので、たぶんあそこが城なんだろう。

 見渡す限り、光が見えているのはそこだけだから。

 そこへたどり着くまでには、険しい山を登っていかなければいけない。


「じゃあ、出発するぞ!」

「はいっ!!」

 ワルデック先生のかけ声に、全員が気合いを入れて返事をする。

 ゴーレムの背に乗り、魔王城への一歩を踏み出す。

 振り返ると、スワンソン先生が少し心配そうな顔をして、手を振ってくれた。

 不安があるのはみんな一緒だけど、それでも前に進むしかない。


 焚き火から離れるにつれて、周囲が暗くなっていく。

 ニコラくんが、ゴーレムについている魔導ランプのつけかたを教えてくれた。

 まるで、車のヘッドライトみたい。

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