表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/192

作戦会議

「エヴァ先輩とルイは、魔王がどんな姿をしてるか、見たことがあるの?」

「うーん……見たっていうか、正確には絵を見たことあるって感じかなあ」

 私が答えると、みんなが首をかしげた。

「魔王の絵があったの?」

「うん。知的生命体の画面みたいなのがあって、そこに魔王の絵が表示されていて、画面の中で動いたりするんだよね。なんだか紫色の悪魔みたいな姿だったけど、実際の大きさはわからない」

「そう。紫色の身体に、黒い翼が生えてた。それがたぶん、第一形態」

 エヴァ先輩が補足する。

「第一形態ってどういうこと?……変身するの?」

「うん。第二形態になると、身体がどんどん大きくなって……鋼鉄の鎧で覆われたような見た目になるんだよね。そうなってからはめちゃくちゃ強かった」

「どんなスキルや攻撃なんだ?」

 マルクが身を乗り出すように聞いてくる。

「第二形態になると、物理で切っても切っても再生する。どこを切っても生えてくる」

「そういえば前に戦った魔神も、すぐに生えてきてたな……」

 そうそう。クリス先輩が戦っていた魔神もそうだったっけ。

 同じ種族なのかも。

「あと、回復魔法が全回復。いくらダメージ与えても、すぐに満タンになるってやつ」

「……それじゃ倒せないじゃん……」

 レアナが青ざめた顔になった。

「さらに、こっちの結界を無効化する特殊魔法も持ってた。だから、結界には頼れない」

 エヴァ先輩の言葉に、今度はオーグストが顔をしかめた。

「しかも、魔王と戦う前に、その側近の魔神兄弟と戦わないといけないんだ。赤と青の双子の兄弟で、それぞれ違う属性とスキルを持ってる」

「最悪だな……魔王だけでも最強なのに、さらに魔神が二体か……」

 マルクがつぶやくと、全員が黙り込んでしまった。


「そういえば、試験でダンジョンに行ったときに、二人連れの魔神みたいなやつ、見たよな? あれがそうかな?」

 ふいに思い出したようにオーグストが口を開く。

 そういえば、そんなヤツがいたよね。

 あのときは……確か至急リリトへ向かうとか言いながら、消えたっけ。

「ゼルゼア様に報告を……とかなんとか言ってたよね?」

「そうそう、封印の祠に行ったときも、あのオブジェになってるやつらも、ゼルゼア様って言ってた」

「多分、それ、魔王城にいる魔神のふたりのうちのどっちかだと思うな……ゼルゼアっていうの」

 エヴァ先輩の顔を見ると、同意するように頷いた。

「そうだね。魔王の名前はアグノゼスだ。だから、ゼルゼアは魔王の側近だと思う」

「そいつらの特徴は?」

 マルクが真剣な顔で尋ねると、エヴァ先輩はしばらく考え込んだ。

 私もラスボスと戦うときに二体の側近がいたのは覚えてるけど、特徴までは思い出せない……

「片方は明らかに知能型。おそらくそっちがゼルゼアだと思う。部下を使って指示を出すくらいだから、かなり戦略的なんだ。こっちの行動を読んで、罠を仕掛けてくるタイプだよ。」

「魔法主体ってこと?」

 ニコラくんが確認すると、エヴァ先輩はうなずいた。

「そう。体力だけで比べれば、こっちの方が少し弱い。ただ、防御力は異常に高いけど」

「ふーん……で、もう一体は?」

「で、もう一体は完全に脳筋。真正面から殴り合いするスタイルだから、動きは読みやすい。マルクなら、正面から受け止められるかもな?」

 エヴァ先輩は笑いながら、マルクの肩をパシっと叩いた。

「ただ、僕が知ってるのは単なる知識にすぎない。実際にどれくらい強いのかは未知数だ。でも、相手を知っておくだけでも、生き残る確率は上がる」

「……やるしかないもんね」

 レアナが小さな声で言った。

 その言葉に、全員が、無言でうなずいた。

 

「だったら、いっそ大人数で魔王城へ攻め込むってわけにはいかねえのかよ?」

「うん……それは確かにできなくはないかもしれない。でも、魔王城の中は罠が多いし、道がわかるのは僕とルイちゃんだけだ。被害が拡大する可能性が高い。それと、僕は赤の部屋でやることを終えたら、二度と使えないように破壊したいと思ってる。魔王を倒すことができたら、帰る前に城ごとメテオで吹っ飛ばしておくのがいいと思う」

「なるほど。そうなると、あまり大人数は足手まといになるってわけだな?」

「その通り。大体の作戦、分かってもらえたかな?」

 

 しばらくみんな黙って考え込んでいたけれど、レアナがあくびをしたのをきっかけに、クスっと笑いがでた。

 今日は一日忙しかったから、疲れてるよね、ほんとは。

 

「みんな……そろそろ寝るかー」  

 マルクがごろんと布団に倒れ込んで、腕を大の字に広げる。

「ほんとだよ、明日は出発だもんね」  

 レアナも大きく伸びをして、毛布にもぐりこんだ。

 ニコラくんは魔法で照明を落とし、オーグストは小さく祈りの言葉を唱える。

 エヴァ先輩とクリス先輩はしばらく作戦会議を続けていたけど、そのうち布団に横になった。

 

 出発は明日の正午。  

 今夜だけは……みんなゆっくり眠れる夜でありますように。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ