ポルトの森
「レアっ! そっちに逃げたっ!」
「まかせてっ! ファイアーボム!」
すばしっこく逃げ回る角ラビに、レアナがサッカーボールぐらいの大きさのボムを当てた。
攻撃魔法だと一撃では倒せないんだけど、足止めするのには効果がある。
どちらかが魔法で弱らせて、もうひとりが短剣でとどめを刺すという方法で、角ラビはなんとか狩れるようになってきた。
周辺にはレアナの火魔法で黒焦げになった角ラビが、数体転がっている。
私がエアスラッシュで狙ったやつは、切り傷だらけ。
動いてる的に魔法を当てるのって、すごく難しい。
角ラビはポルトの森周辺にいる、E~Fランク相当のモンスターだ。
大きなうさぎに角が1本生えているような見た目。
目が赤いのは万国共通なのかなと思うんだけど、魔獣なので目が光る。
かわいいとは思えないんだよなあ…顔が。邪悪な感じで。
なので、遠慮せずに退治する。
襲ってくるんだから、倒すしかない。
とんがったドリルみたいな角で突いてくるから、やられると痛い。
まあ…命にかかわるほどの怪我はしないけど。
初めての依頼は「薬草採取」
10本以上で3000ダルもらえる依頼だ。
森の近くのだだっ広い場所で、攻撃魔法の練習をしながら、ついでに依頼もこなす。
薬草じたいは簡単に採取できるんだけど、ポルトの森周辺には角ラビが多いので、追い払うか討伐しないと薬草採取ができない。
飛び跳ねる野犬みたいなのがそこいらじゅうにいる。
「一日に10体ぐらいは余裕で倒せるよねえ…」
レアナがため息をつく。
少しでも多くお金を貯めたいと思っているので、報酬のいい依頼を受けたいらしい。
角ラビ10体なら、報酬は1万ダル。
ところが、学生でE~Fランクの冒険者は、4名以上のパーティーでないとモンスターの討伐依頼を受けることができないと、ギルドで決まっているらしい。
低レベルな若者が単独で討伐を受けると、怪我をしたりして学業に差し支えるからだって。
仕方なく薬草採取を受けたんだけど、どうせ角ラビをやっつけないといけないなら、同じことじゃないかと思う。
「メンバー探してパーティー組むしかないよねえ」
単独で討伐できないとなると、パーティーを組まなければランクを上げることもできない。
ずっと薬草採取ばかりしていても、お金は貯まりそうにないしなあ。
だけどなあ…
騎士科Aクラスにモンスター討伐なんてやってくれる人はいないと思うし、他の人が加わると魔法の練習ができない。
私は学園でもヒーリングで魔力を使うことができるけど、レアナは部屋で火魔法を放つわけにはいかないんだよね。
最大魔力量を増やすためには、毎日ボムを撃ちまくるのがいいんだけど。
短剣で角ラビを討伐しようとすると、近距離で追いかけ回さないといけないのが大変だ。
近づくと怪我する可能性もあるしね。
攻撃魔法っていいよなあ。離れたところから攻撃できて。
当たれば、だけど。