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アイギス島ふたたび

 翌朝、私たちは古竜さまの背に乗り、ふたたびアイギス島を目指して飛び立った。

 古竜さまの背中、だいぶ慣れたとはいえ、やっぱりまだ怖い。

 首に巻かれた太い縄に、全員命綱を結んでいる。

 エヴァ先輩はすっかり慣れた様子で、古竜さまの頭の上にいるクリス先輩と談笑している。


「……見えてきたよ。湖の跡地、あそこだ」

 ニコラくんが指さした先に、メテオで私たちが吹き飛ばした湖の痕跡があった。

 周辺は砂漠地帯だ。


「昼間なのに、敵、多くないか?」

 エヴァ先輩が指さした方向を恐る恐る見下ろす。

 やっぱり私は高所恐怖症!

 砂の上でうごめく、かなりの数の魔獣が見えた……

 巨大サソリや毒グモがあたり一帯にうじゃうじゃと湧いているようで、気持ち悪い!

 「うん、前より確実に増えてる感じ。サソリや毒蜘蛛って、昼間は出てこないんじゃなかったっけ」

「何か、僕たちが戻った後に異変が起きた可能性がありますね?」

 ニコラくんも、この様子は異常事態だと感じたようだ。

 というか、あんなに魔獣がいたら、魔晶石のコア付近には降りられない。


 「心配するな。あの程度の虫など、我が焼き払ってやろう」


 古竜さまが少し楽しそうな声で皆に向かって声をかけた。

 古竜さまにかかったら、巨大サソリも毒蜘蛛もただの「虫」なのがおかしい。


「お願いします、古竜さま! 地上の魔獣、できるだけまとめて……!」

「よし、焼き払うぞ、しっかりつかまっておけ」


 古竜さまは急降下すると、地上に向かってとんでもない炎を吐いた。

 瞬間的にあたりが赤く染まった。

 あたり一面、火の海だ。

 サソリもクモも、あっという間に黒焦げになっていく……

 

 砂漠なので、やつら以外に燃えるものはなく、火の海はすぐに消え始めた。

 ニコラくんが魔方陣を展開して、水魔法であたりを冷やしてくれた。

 そういえば、いつもレアナの火魔法の後始末をするのもニコラくんだもんね。

 古竜さまは満足そうに首を振ると、地面にゆっくりと着地した。

 そこには、数日前に見つけたときのままの、地下への入り口があった。



 古竜さまの背から降りると、熱気の残る地面の上に立った。

 かすかに焦げた砂の匂い。


「ここが入り口ですか……」

 スワンソン先生が、感慨深いという様子で、周囲を眺めている。

 先生は前回、参加していなかったから、7年ぶりのアイギス島だ。

 いろいろ思い出すことがあるんだろうな。


 かつては湖だった場所の底。

 魔晶石のコアへと続く入り口が、静かに口を開けている。


「じゃあ、マルク。私たちはここで待機ね!」

 レアナが腰に手を当てて振り返った。

 え?……待機?

「どうして、レアとマルクは一緒に来ないの?」

「うん、昨日の晩、マルクとオーグストと話し合ったんだ。私たちは外で敵の侵入を防ぐ係!」

「おう、サソリやクモのバケモノは、俺たちにまかせとけ!」

 レアナとマルクはニコニコしている。

 オーグストは、周辺に結界魔法をはってくれるようだ。

「よし……これで一応魔獣は入ってこれないとは思うけど……何が起きるかわからないから、俺もここで待機するよ」

「わかりました、何かあったらすぐに内部へ避難してくるのですよ? 魔神が襲来する可能性もありますからね」


 そうか。魔神関係が表れると、聖結界で防げるのはオーグストだけだもんね。

 ここはこの3人に任せるのがいいかもしれない。

 エヴァ先輩が言うには、勇者の誰が管理者になれるかわからないので、私とクリス先輩は同行組だ。

 それと、スワンソン先生とニコラくんは、解析組。

 心強いメンバーだ。

 クリス先輩とエヴァ先輩を先頭に、中へ入っていく。


「周囲の魔力濃度が高くなっている気がします……魔獣が集まってくる可能性もありそうなので、気をつけてください」

 

 ニコラくんが少し心配そうな顔で振り返った。


「了解。大丈夫よ! 古竜さまもついてるし!」

 レアナは頼もしく笑い、握った拳を振り上げた。

「俺が結界はってるんだぜ? 大丈夫に決まってんだろ!」

 オーグストも皆の心配を振り払うように、笑顔になった。


「じゃあ、行ってくる」

 私は小さく手を振って、エヴァ先輩のあとを追いかけた。

 ここから先は、勇者である私たちの役目だ。



 崩れかけた入り口から地下へと降りていく。

 そうそう、こんな感じだった。

 数日前の記憶を思い出しながら、慎重に進んでいく。

 もしかしたら魔獣が入り込んでるかもしれないしね。


「こっちです。ここから先、洞窟みたいな通路が続いています」

 ニコラくんがスワンソン先生に説明しながら、足元を確認するように進む。

 ふたりは索敵の名手だから、警戒はまかせておけば大丈夫だよね。

 歩みを進めるたびに、洞窟の壁に設置された照明がひとつずつ灯っていく。


「これが……自動照明ですか……」

 スワンソン先生が息をのむ。

 うん。私たちも最初に見たときは驚いた。

 この世界の人から見たら、かなり高度な技術だと思う。

 それが数百年前の技術で、今もなお機能しているということがすごい。


 壁面には、あちこちに古代文字が刻まれている。

 私たちはあまり気に留めなかったけど、スワンソン先生にとっては何もかもが貴重な情報らしい。

 ニコラくんとふたりで、壁の情報をノートに転写している。


 しばらく進むと、魔晶石のコアがあった部屋にたどりついた。

 壁の魔方陣に、ニコラくんが魔力を流すと、扉が開いた。



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