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古代語の日記

 翌日、午前中はゆっくりと休養して、午後からスワンソン先生の研究室に呼ばれた。

 そこにはクロエさんもいて、日記の解析をするという。

 皆の意見も聞きたいということで、アイギス島に行ったメンバー全員がその場に呼ばれていた。


「クロエ、日記の内容について知っていることを、まず教えてくれませんか?」

「そうね……でも私の知識ではどうにも、わからない部分が多すぎて……ジルの方から質問してくれる?」

 クロエさんが渡した日記を手に取り、スワンソン先生は慎重にページをめくりながら解読を始めた。

 私たちはただ座って、ふたりの話を聞いている。


「まず、この日記を書いた人物は、アイギス島の管理者だった技術者の助手ですね。名前はクレアというらしい。思い当たる人物は?」

「知らないわ。でも、クレア……私と名前も発音も似ているわね。その助手が、この島を管理していたということ?」

「アイギス島には、魔晶石を動力とした人工知的生命体のようなものがいた。細かいことはまだ解読できていないのですが、最終的にはその生命体が、島を守るのに人間は不要だと判断した……というようなことがこの日記には書かれています」


 皆が息を飲んだ。

 アイギスの文明が滅んだのがそんな理由だったなんて。

 長い間謎とされていたことが、解明した瞬間だった。


「しかし、不思議なんだがな。人間は不要だと判断したわりには、俺たちは排除されなかったぜ? その知的ナントカっていうやつは、俺たちを認識しなかったということか?」

「でも、ワルデック先生、ゴーレムは僕たちを襲ってきましたよ?」

「そりゃあそうだが……ニコラ、それは人類が滅ぶような攻撃力だったと思うか? それに、なんでクロエは無事だったんだ?」


 ワルデック先生の言うことも、もっともな気がする。

 ゴーレムたちは確かに私たちを襲ってはきたけど、それはたまたま出くわしたからだ。

 そうでなければ、特に人間を全滅させようというような動きはなかったよね。

 

「それなんだけど……ねえ。トニ、私、メタルゴーレムに守られていたでしょう? 誰かと間違えられていたと思うの」

「それがこの、クレアという人物ならつじつまが合いますね……」

 

 スワンソン先生は、何かを思い出したように、日記のページをめくり、あるページで手を止めた。

 

「アイギス島の人々は、知的生命体によって排除され、人間の管理者を亡き者にしてしまった。しかし……管理者がいなくなると、次の管理者が指名されるようにプログラムされていた……とここに書かれています」

「もしかしてそれがクレアさんという人なの?」

「可能性は高いでしょう。管理者の助手だったようですしね」 

「でも、どうして私はその人と間違われたのかしら? もしかして、名前が似ているから?」

「そうかもしれませんね。管理者がいなくなると、自動的に後継者が選ばれるようにプログラムされていたとしたら、島にひとりしかいないあなたが、後継者に選ばれても不思議ではないでしょう?」


 そうか。

 人間を滅ぼしてしまった知的生命体?も、後継者を選ぶという命令には従っていたんだね。

 だから、クレアさんという人が選ばれ、その次にクロエさんが選ばれた。

 つじつまは合ってる。

 だったら、クロエさんがいなくなった今、島の管理者は誰になってるんだろう。


 それにしても……島を守るためのちょっとした命令の間違いが原因で、文明が滅んでしまうなんて。

 それって、もしかして私たちの世界にも、同じようなことがあるんじゃないだろうか。

 この世界がゲームの世界だと考えたら……

 

「ねえ、エヴァ先輩……管理者、なんてゲームの中で出てきましたっけ?」

「うん、今僕も同じことを考えていた。ひっかかるよね。この世界に、自動的に人類を滅ぼしてしまうような管理システムが存在しているなんて……本当にアイギス島には古代にそんな文明があったのかな?」

「日記に書かれている情報だけだから、なんとも言えないよね……」


 エヴァ先輩は真剣な顔をして、何かを思い出そうとしている。

 私は前世のゲームの知識なんてほとんど覚えていなくて、『アイギス島にはゴーレムがいた』ぐらいの知識しかないんだけど。


「先輩、何か思い出したことがあるんですか?」

「いや……魔王を倒しに行くときのことを考えていたんだけど……あのゲーム、初期には致命的なバグがあったはずなんだ」

「バグ……ですか?」

「隠し開発ルート。通常プレイヤーには開放されていない非公開システムエリアが、魔王城の中にあったんだ……」

「それって、裏技的な?」

「そう、勇者の剣が最強の剣になって、あっさり魔王を倒せる……みたいなルートがあったんだよ、確か。だけどアクセスキーがなんだったか思い出せなくて……」

 

 なんか、少しずつ答えに迫っているような緊張感。

 エヴァ先輩! 頑張って思い出して!

 先輩だけが頼りです……


「……その知的生命体?というのはどこにあったのかしら。ねえジル、私は一度も見たことがないわ。どんな形をしているのかしら」

「形についての記述は見つかってませんが、場所は恐らく魔晶石のコアがあった近くだと思いますね。知的生命体が最もエネルギーを必要としていたはずなので。あなたたちは魔晶石を取りにいったときに、何か気付きませんでしたか? どこかへ通じる通路とか扉とか……」


 みんなで顔を見合わせるが、誰も覚えていない。

 だってあの時は、一刻も早く魔晶石を採掘して、クロエさんを連れて帰ることばかり考えていたもんね。

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