表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

161/192

魔晶石

「クロエさんに、スワンソン先生からメッセージが届きましたよ」

「まあ、こんな便利な魔道具ができたのね!」

「なんて書いてあるんだ?」

「『クロエ、迎えにいけなくてごめんなさい。ご両親には連絡しておきます。みんな待っています』ですって。ジルの文字、懐かしいわ」

「あいつも、お前には気があったからなあ。もう譲らねえけどな」

「そんなことないわよ。ジルは私の保護者みたいなものよ」

「どうだかな……」


 その晩はクロエさんを囲んで、食事をしながらいろんな話を聞いた。

 クロエさんは魔導士で、ワルデック先生とは学生時代からの仲間なんだそうだ。

 私とエヴァ先輩で、クロエさんの足にハイヒーリングをかけ続けた。

 古い傷は完全には治らないけど、少しでもマシにならないかと思って。

 そしたら、杖をつけば少しは歩けそうなぐらいに回復した。

 これなら、帰ってからきちんと治療を受けたら歩けるようになるかもしれない。


 ニコラくんだけは、無言で日記とにらめっこしている。


「何かわかった?」

「うーん、地下に降りるダンジョンがあるみたいです。場所がどこかはまだ……魔晶石の位置を示す文字盤みたいな魔道具があるみたいなんですけどね」

「あら、それなら私が持っているかも。あの時発掘した魔道具は、私が保管しているの」


 クロエさんが収納から次々とよくわからない出土品を出して並べ始めた。

 ニコラくんが興味深そうに、ひとつひとつ手にとって見ている。


「これがそうかもしれない……」


 ニコラくんが手にしたのは、丸い懐中時計のような魔道具。

 時計の針のようなものが1本だけついている。


「さっきの魔晶石のカケラを貸してください」


 魔晶石を近づけてみると、針が魔晶石の方へ動く。

 どうやら魔力を感知して、針が動くようだ。

 カケラを離してみると、針は必ずある方向を指す。


「もしかしたら、この方角が魔晶石のコアの場所なのかもしれませんね」


 針は砂漠の方角を指している。

 夜に行ってみるのは、あまりにも無謀だ。

 魔晶石のコアがあることを知っているのは、日記を読んだことがあるクロエさんだけだ。

 手探りで行ってみるしかないよね。

 こんなときにスワンソン先生がいたら、頼りになるんだろうけど。

 私たちは発掘の知識が全然ないもんなあ。


 とりあえず、スワンソン先生に魔晶石の探索に出ることを連絡して、私たちは休んだ。



「先生はクロエさんと一緒に待っていてください!」

「お前らだけで行かせるわけにはいかん!」


 翌朝のこと。

 ワルデック先生はどうしても魔晶石探索についていくと言うが、全員で反対する。

 足の悪いクロエさんを背負って、わざわざ危険な場所へ行くなんて、どう考えても無謀だ。

 ワルデック先生は、それなら先にクロエさんをヴァスティアンに送り届けて戻ってくると言うが、正直、クロエさんにはここにいてもらいたい。

 スワンソン先生がいない以上、この島のことを一番知っているのはクロエさんだからだ。

 発掘品もクロエさんが全部持っているから、バスティアンに帰ってしまわれると困る。

 まだ必要なものがあるかもしれないし。


「ワルデック先生、私たちはいずれこのメンバーで魔界へ行くんです。こんなところで敵に負けたりしません。信じてください」

「そうだよ、先生! 私たち、オクラマ島で3ヶ月戦い続けても大丈夫だったし!」

「いざとなれば、我々勇者3人は、メテオという技もありますぞ」

「トニオ、生徒たちを信じてあげたら? この子たちだってSランクなんでしょう?」

「仕方ねえなあ……」

 

 しぶしぶといった感じで、ワルデック先生は魔晶石を探しに行くことを承諾してくれた。

 まずは偵察に行ってみて、夕方までには戻るという約束で、私たちは方位魔道具の針の先を追ってみることにする。


 砂地を歩くのは、想像以上に体力を消耗する。

 前に調査団が来たときには、この砂漠を横断したらしいから、さぞかし大変だったんだろうな。

 気温は真夏なみで、ニコラくんが時々歩きながらシャワーのように水をまいてくれた。

 昼間は魔獣が少ないのが救いだ。


 2時間ほど歩くと、緑が見えた。

 近くまで行くと、草木が生えている場所がある。

 砂漠のオアシスとはこのことだ。

 緑があるということは、水があるということだよね。

 方位魔道具は、はっきりその方角を指している。


「何かあるかもしれませんね……」


 その場所には、小さな湖と、大きな木が数本があった。

 こんな砂漠の中心にどうしてそんな場所があるのか不思議。

 ニコラくんが池の向こう側まで歩いていくと、魔道具の針が反対側に向いた。

 ここが、目的地なのは間違いなさそうだ。

 だけど、これと言って変わったものはない。

 祠のようなものがあるのかと思ったんだけど。


 ニコラくんが砂漠のオアシスについて、何か日記に記述がないかと、スワンソン先生に問い合わせてみる。

 すると、しばらくして返信があった。


 『水の中に扉』


 水の中というと、湖の中?

 全員で湖の中をのぞき込んでみたけど、底は深そうで何も見当たらない。

 湖の中に魔獣がいたら嫌だしなあ。

 バスティアンの王都は海に面していなかったし、私は泳いだことがない。

 足が底につかないような深い湖にもぐるなんて、到底無理な気がする。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ