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再会

 神殿の中へ入ってみると、意外に中はキレイだった。

 長い間人がいなかったのだから、ホコリまみれで、白骨死体とかが転がっているイメージだったんだけど。

 まあ、外にも花が咲き乱れていたぐらいだから、状態保存の魔法でも施されているのかなあ。


 中にはもうひとつ大きな扉があって、両側には通路がある。

 とりあえず、中に入ってみようと扉に手をかけた時。


「誰か……誰かいるのですか?」


 中から女の人の声がした。

 ワルデック先生が中へ飛び込んで、私たちも後に続く。

 正面に玉座があって、椅子に女の人が座っている。

 髪の長いきれいな人だ。


「クロエ……クロエなのか? 生きてたのか⁉」

「トニオ!」


 ワルデック先生は、駆け寄って女の人を抱きしめた。

 もしかして、この人……崖から落ちた人?


「クロエ……すまなかった。もっと早く来てやればよかった。生きているとわかっていれば……」

「いいの、こうして来てくれただけで」

「クロエ、一緒に帰ろう。帰ったら俺のところへ嫁に来い。なんで言ってやらなかったのかと、ずっと後悔してた」


 ワルデック先生が男泣きに号泣しているので、私たちももらい泣きしてしまった。

 よかったね、先生。

 死んだ仲間って、先生の恋人だったんだ。


「……トニオ、そちらの人たちは新しいパーティーの人?」

「俺の生徒たちだ。俺は今騎士学園で教師をしている」

「まあ、あなたが教師だなんて。信じられないわ」

「お前がいなくなって、パーティーは解散した。あれからもう7年も経つんだぞ」

「そう……もうそんなに経つのね」


 無人島で7年もひとりだったなんて、気が遠くなるほど寂しかっただろうな。

 クロエさんは、両足をケガして、山から降りられなくなってしまったそうだ。


「しかし、崖から落ちたのに、どうやって助かったんだ?」

「私も覚えていないんだけど、あの子たちが助けてくれたみたいなの」

「あの子たち?」

「トニオ! ジル!」


 ドスンドスンと大きな足音をたてて、さっきのメタルゴーレム2体が神殿の中へ入ってきた。

 私たちには目もくれずに、玉座の前までドスドス歩いて行って、ゴーレムたちは立ち止まった。


「こいつら、お前の言うことをきくのか?」

「そうなの。私のことを誰かと勘違いしてるみたい」

「しかし、トニオとジルって……」

「だって、寂しかったんだもの」

「そうか、そりゃそうだな」


 クロエさんが足をケガしていてもここで暮らしていられたのは、ゴーレムたちが言うことをきいてくれるからだったようだ。

 湧き水を汲んできてくれたりするらしい。

 7年もどうやって暮らしていたのかと聞いたら、クロエさんは異空間収納魔法を持っていて、そこに調査団50人の2年分の物資を入れていたんだそうだ。

 食料も回復ポーションも山ほどあったので、元気に暮らしていたという。

 ただ、両足を酷く骨折したので、それは回復ポーションでは治らなかったらしい。


 クロエさんの話では、このあたりにいるメタルゴーレムは2体だけだという。

 私たちは魔界と戦争が始まりそうなので、ゴーレムを捕獲しにきたことを伝えて、メタルゴーレムを連れて帰れることになった。


「クロエさん。僕はスワンソン先生の助手をしているニコラ・デルビーといいます。もし、知っていたら教えていただきたいことがあるのですが」

「もちろん、私の知っていることなら」

「ゴーレムたちの動力源がどこにあるかご存知ですか?」

「それは、この島の地下に魔晶石があるみたいなの。これよ」


 クロエさんは収納からきれいな石のかけらを出して見せてくれた。

 虹色にキラキラ光る石で、魔力を帯びている石だという。

 それから、1冊の古い本を取り出してニコラくんに渡した。


「それはこの神殿にあった本なんだけど、誰かの日記のようね。古代文字で書かれているから、私にはところどころしか読めなかったの。地下に魔晶石のコアがあるというようなことが書いてあると思うんだけど」

「なるほど……それで少し謎が解けました。どうやってゴーレムたちが動いているのか不思議だったんですけど」

「お前、古代文字なんか読めたのか?」

「ジルの影響で少しは勉強してたのよ」


 ニコラくんは日記をパラパラと見て、スワンソン先生に至急転送すると言う。

 文明の謎が解ける一大発見かもしれない。

 

 動力源が魔晶石なら、魔晶石を採掘して帰らないと、ゴーレムだけ連れて帰っても動かせないことが判明した。

 日記に魔晶石の場所が書いてあるといいんだけど。


「とりあえず、いったん山を降りて、ジルからの連絡を待つことにするか。あいつも喜ぶだろうなあ」

「私も早く会いたいけど……私、この足では降りられないわ」

「大丈夫さ。俺が背負っていってやるよ」

「ワルデック先生! それならいい方法がありますよ!」


 ニコラくんに頼んで、特大のマジカルバッグを出してもらう。

 よくこれに人を入れて運んだよね。盗賊とか。

 

「面白いことを考えるのね! さすがトニオとジルの生徒たちだわ!」


 クロエさんは、マジカルバッグに入って上半身だけ出した状態で楽しそうに笑っている。

 そのバッグをワルデック先生が背負って、私たちは下山した。



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