古代遺跡へ
ようやく準備ができて、アイギス島へ発つことになった。
ワルデック先生と、私たちメンバー以外に合わせて8人。
毎度申し訳ないけど、古竜様は機嫌よく乗せてくれた。
次元の裂け目で何か起きたときは、すぐに戻ると約束して、私たちは飛びたった。
リリトから2時間ぐらい飛んで見つけたのは、バスティアンの最南端からかなり南で、海の真ん中にぽつんと浮かんでいるような島だ。
古竜様に上空を旋回してもらって、島全体の様子を伺う。
といっても、私は下を見ることができないんだけど。
スワンソン先生に教えてもらった通り、東半分は砂漠、西に遺跡というのは間違いないようだ。
最西端の山はかなり険しく、断崖絶壁に近い尖った山だ。
その中腹に、確かに神殿らしきものがあった。
古代遺跡があるあたりに降ろしてもらって、古竜様は神殿の周囲を偵察してきてくれると言う。
神殿の近くに古竜様が降りられるような場所があれば、乗せていってもらった方が安全だ。
私たちはまず、ゴーレム探し。
「この少し先に、遺跡へ降りる入り口があるはずなんだがな」
ワルデック先生が記憶をたどりながら案内してくれる。
アイギス古代遺跡は、地下遺跡なんだそうだ。
日中の高い気温を避けるために、人は地下で暮らしていたのではないかと推測されている。
どうりで、遺跡があると言われているわりには、周囲を見渡してもそれらしきものがない。
「あったぞ! あれだ」
先生の指さした先には、崩れかけた門があって、そこから下へ降りる階段があった。
地下の天井だったはずの地面はすでに崩されていて、地下通路はむき出しの迷路のようになっている。
「ゴーレムはこの中にいるんですか?」
「そうだ。今でも生きていたらな」
私たちが階段を降りていくとすぐに、近くの壁が音をたてて動いた。
壁のように見えていた土の塊が、ゴーレムだった!
高さ3メートルぐらいありそうな、土色のモンスターだ。
「いたぞ。やつは物理攻撃しかないが、絶対にくらうなよ!」
どしん、どしんと歩いてくるゴーレム。
あんなのに殴られたらひとたまりもない。
事前情報で火魔法は効かないと聞いていたので、それ以外の魔法で足止めを試みる。
「アイスブレイク!」
「いかづち!」
エヴァ先輩が足を凍らせようとしたが、効果が弱いのか歩くのが遅くなった程度だ。
いかづちが頭に落ちると、ゴーレムは一瞬動きをとめた。
「ウォーターウェイブ!」
ニコラくんが水流を出して、ゴーレムをびしょぬれにする。
「ルイーズさん、もう一度いかづちを!」
「いかづち!」
今度は全身に麻痺が効いたようだ。
ゴーレムが完全に動きを止めたので、今のうちに物理攻撃で手足を狙う。
マルクとワルデック先生、クリス先輩が走り出た。
私とエヴァ先輩も、氷紋剣と雷撃剣で追加攻撃を加える。
とにかく動かないようにしていれば怖くない。
ドサッと音がして、マルクと先生が両腕を切り落とした。
「アースウォール!」
ニコラくんが土の壁を出して、ゴーレムの下半身を埋めてしまった。
ゴーレムはギシギシと音を立てているので、まだ死んだわけではないが、身動きはできないようだ。
「マルク、手を貸してください」
ニコラくんはマルクに押し上げてもらって、ゴーレムの肩によじ登った。
そして、ゴーレムの頭上に魔法陣を出した。
真剣な表情で、魔法陣の書き換えをしようとしている。
「これで多分大丈夫です。停止したはず」
ゴーレムの目の光が消え、ギシギシと動こうとしていた音もやんだ。
「ニコラはほんとジルによく似てるな。あいつとやることがそっくりだ」
「僕は弟子ですからね」
ストン、とニコラくんが降りてくる。
これで、動きさえ止めれば、ニコラくんがゴーレムを止められることがわかった。
難しいことはよくわからないけど、ゴーレムを動かしているエネルギーの供給を絶ったので、エネルギー切れの状態になったらしい。
手足を切り落としてしまったゴーレムは使い物にならないので、次はそのまま捕獲することを目指す。
遺跡を進んでいくと、すぐにまたゴーレムが出てきた。
ウォーターウェイブといかづちの重ねがけで動きを止め、マルクが肩車をしてニコラくんをゴーレムの肩の上に乗せる。
魔法陣を出して停止。
うまくいった!
全員で協力して、ニコラくんの異空間収納にゴーレムを押し込んだ。
これでゴーレムを捕獲できることはわかったので、いったん戻って地上から地下迷路の壁の上を歩いていくことにする。
幅の広い平均台の上を歩いているような感じだ。
そうすれば最初からゴーレムの頭上を狙える。
壁の近くにいたゴーレムをニコラくんが停止させて、全員で回収する。
だんだん慣れてきた。
見渡したところ、地下迷宮の中にはゴーレム以外の敵はいない。
すでに発掘が進んでいた場所なので、これといったアイテムもなさそうだ。
適当なところで切り上げて、古竜様と騎士団の人たちのところに戻り、野営の準備をすることになった。
ワルデック先生の話では、地下のゴーレムは地上には上がってこないらしい。
以前に野営を設置していたという場所に連れていってもらうと、崩れかけた砦のようなものがあった。
スワンソン先生がつくったものだそうだ。
ニコラくんがそれを補修してくれて、オーグストに結界をかけてもらう。
昼間はかなり気温が高かったが、寒暖差が激しく、夜は結構冷え込むようだ。