【第五章 古代遺跡編】 アイギス島
オクラマ島の大結界をしばらく騎士団にまかせて、少しの間身体を休めることになった。
リリトの国王は以前の約束を守ってくれて、私たちのために離宮を用意してくれていた。
本当に久しぶりにゆっくりお風呂に入って、美味しいものを食べて、寝たいだけ寝た。
たぶん、メンバー全員同じように、ほとんどごろごろしてるんじゃないかと思う。
午後のお茶の時間に、ケーキやフルーツをたくさん用意してもらった。
なんせ、この数ヶ月、甘いものとはご無沙汰だったので、飢えている。
思い切りケーキを食べまくろうとダイニングルームに行ってみると、ほぼ全員集まっていた。
男子だって疲れてるときは、甘いもの食べたいよね。
「ルイちゃん、前に言ってた装備品を探すっていう話なんだけど」
「何か情報ありました?」
「バスティアンの最南端から海を渡ると、アイギス島っていう大きな島があるらしいんだけど、そこには古代遺跡があるらしいよ」
「古代遺跡?」
「大昔には高度な文明があったらしい。何で滅んだのかはわからないんだけど」
へえ……バスティアンの最南端といえば、うちのデイモント領だ。
未開地だけど。
その島って、どこの国の島なんだろう。
古代遺跡というだけで、RPGな感じがするなあ。
そういえば、スワンソン先生って、昔は古代遺跡の発掘してたんじゃなかったっけ。
ちょうどそこにいるから、聞いてみよう。
「アイギス島ですか……誰からその話を?」
「モルガン団長にめずらしい装備品のありそうな土地を聞いたら、教えてくれたんです」
「ああ、彼なら知っているかもしれませんね。確かに、アイギスには古代文明があったのです」
「先生は昔、古代遺跡の発掘をしていたんでしょう? アイギス島には行ったことあるんですか?」
「ありますよ。ワルデック先生も一緒でした」
スワンソン先生は、少し困惑したような表情だ。
もしかして、昔仲間が命を落としたっていうのは、その遺跡だったのかも。
「アイギスには、今とはまったく違う宗教や文明があったのです。それで、マリアナ正教会が立ち入りを禁止してしまったのですよ。ですからアイギス島は、今はほぼ無人島なのです」
「でも、先生は行けたんですよね?」
「研究や発掘の目的で、国から許可が出れば行けるでしょう。危ない場所なので、S級冒険者でも一緒に行かない限り、許可はおりませんが」
私たちはS級だから、許可さえもらえたら行ける、ということか。
それほど危ないというのは、Sランク魔獣でもいるのかなあ。
「そこには何か戦闘に役立つような装備品とかあると思いますか?」
「装備品というか……アイギス島にはゴーレムがいるのです」
「ゴーレム?」
「土と金属でできた大型のモンスターです。かつて、アイギスの人は古代魔法でゴーレムを使役していたのですよ。そして、文明が滅んだ今も、ゴーレムだけはあの島に残っていて、外からくる人間を滅ぼしてしまうのです」
スワンソン先生は、ゴーレムを使役していた古代魔法を解析できれば、アイギス文明の謎が解けるのではと思っていたそうだ。
それで、ゴーレムを1体倒して、調べることが目的のひとつだったらしい。
「あなたたちはもしかして、アイギス島に行こうとしているのですか?」
「まだ決めたわけじゃないんですけど、オクラマ島に魔獣がいなくなってしまったので、レベル上げに困っていて。ついでに、装備品を探しに行きたいんです」
「しかし、わざわざそんな危ないところに行かなくても……」
「ゴーレムっていうのは、魔神よりも強いんですか?」
「……そうですね。戦い方さえわかっていれば、魔神ほどではないかもしれません。大きくて力が強いというだけですから」
スワンソン先生の話を聞いていて、エヴァ先輩は何か思うことがあるようだ。
一度みんなで相談してみた方がいいよね。
「私は今、転移魔法陣の研究で手が離せないので、一緒に行ってあげることができないのですよ。もし、本当に行くならワルデック先生に相談してみてください。国に届け出が必要なので、勝手に行かないように」
ちょうど全員集まっているので、今後のことを話し合っておくことにした。
時間があるときに、決めておかないとね。
「ルイちゃん、さっきのスワンソン先生の話なんだけど。ゴーレムを使役できたら、武器にも盾にもなると思うよ」
「でも、使役って簡単にできるのかなあ?」
「ゴーレムに乗って移動できたはずなんだ、ゲームだと」
「そうなんですか? だとしたら、行った方がいいですよね?」
「どんなイベントだったかは覚えてないんだけどなあ……でも、できるならゴーレムは手に入れたい」
「先輩がそう言うなら。みんなに話してみましょうよ」
クリス先輩や、マルクたちも呼んで、相談してみることにする。
せっかくのんびりしているところ、あんまり聞きたくない話かもしれないけど。
「アイギス島? 聞いたことねえな」
「立ち入り禁止で、地図にものっていないらしいよ。スワンソン先生の話では。でも、S級冒険者なら国に届け出たら行けるんだって」
「で、なんでそこを目指すわけ? 今リリトを離れても大丈夫なのかなあ」
オーグストは大結界の心配をしているようだけど、大神官が9人いれば大丈夫なんじゃないかな。
エヴァ先輩が、ゴーレムについて知っていることを皆に説明してくれた。
私はふと、ニコラくんならゴーレムを使役できるんじゃないかと思う。
ニコラくんはメンバーの中では体力が低いから、ゴーレムを盾にできるといいのになあ。