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ソウルリーパー

 オクラマ島に来て、2日目。

 大結界は今のところ無事だ。

 昨日マリアナから8人の大神官が到着して、クレール神官とオーグストを合わせて10人。

 今オクラマ島全部を囲む結界の準備をしている。

 いざという時のために、結界を二重にするんだそうだ。


 セルディアで転移魔法陣に消えたソウルリーパーはどこへ行ったんだろう。

 この島に来るとしたら、どこから来るんだろう?

 島を大結界で囲んだとしても、ソウルリーパーが金剛石で結界を破ることができるなら、あまり意味がないんじゃないだろうか。

 そう思ったんだけど、スワンソン先生とニコラくんの見解だと、あの大きさの金剛石では大結界を2つも破る力はないのではないかと言う。

 水神竜様からもらった金剛石のかけらで今実験中らしい。


 私たちはまだ駐屯場で待機中。

 第一騎士団の人たちは、8人の大神官が島の周囲に散り散りになっているので、その警護にあたっている。

 次元の裂け目の警備が手薄になっているので、私たちはワルデック先生と一緒に警備に加わることになった。

 裂け目のある近くまで行ってみると、オーグストやニコラくん、スワンソン先生もいた。


 オーグストに実験の結果を聞いてみたところ、王冠についている大きさの金剛石で、この大結界をすべて消すのは無理だろうと予測しているらしい。

 大結界は円形に建てられた10柱をつないでできているんだけど、例えば一箇所だけを破られた場合、いったん結界は消失する。

 でも、壊された場所の柱を修復すれば、再び結界は張り直せるので、それほど時間はかからないという。


 8人の大神官が今準備しているのは、国境などによくある聖結界の壁で、大結界とは少し違うらしい。

 魔物は通れないが人間は通れる、学園や王宮に張ってある結界と同じ類のものだ。

 そっちの結界は魔法陣を使っていて、破られることがあれば、破られた箇所がわかるらしい。

 ただし、弱点はあって、空からの侵入はできてしまう。


 

 時々空を警戒していたら、黒い鳥のような魔獣が飛んでいるのを見つけた。

 大きめのカラスのような形の鳥で、ワイバーンよりは少し小さい。

 何度か島に近寄ってきては旋回している。

 そして、ついに大結界の近くまで飛んできて、空からふっと消えた。


 ゆっくりと降りてくる黒い影。

 ソウルリーパーだ。

 片手に金剛石の王冠を抱えている。


「デイモントさん! クリストフさん! ベルジュ騎士! 金剛石を大結界に近づけてはなりません!」


 スワンソン先生が大結界とソウルリーパーの間に炎の壁を放った。

 ニコラくんとレアナも大結界を守るように、ソウルリーパーに向かって炎を放つ。

 しかし、金剛石から強い光が出て、ソウルリーパーに届く前に炎はかき消されてしまう。

 ソウルリーパーが大鎌を振り上げると、周囲の騎士団の人たちがバタバタと倒れていく。


「オーグスト! 回復はまかせる!」


 私とクリス先輩、エヴァ先輩は剣に魔力を溜めながら、狙いを定めた。

 ソウルリーパーは人の生命力を奪うので、急がないとまた死人が出てしまう。


「みんな下がってて! 危ないから!」


 奴がまた大鎌を振り上げる前に、金剛石を吹き飛ばす!


「メテオ!」

「メテオ!」

「メテオ!」


 ほぼ同時だった。

 3本の青い閃光が、ソウルリーパーを直撃した瞬間。

 目もくらむようなまばゆい光が広がって、大爆発が起きた。

 きのこ雲のような爆炎が上がり、あたり一帯が吹き飛ばされた。


「ソウルリーパーは……?」


 煙の中で目をこらしてあたりを探したが、ソウルリーパーも金剛石の王冠も見当たらない。


「まずいぞっ! 大結界が!」

「次元の裂け目が……」


 今の爆発で、大結界が吹き飛んでしまった。

 次元の裂け目も3メートルぐらいの高さまで広がっている。

 どうしたらいいのか考える暇もなく、裂け目からは魔物が溢れ出てきた。


「大神官たちに合図を! 結界を発動してください!」


 スワンソン先生の指図で、魔導師団のひとりが合図の花火のようなものを空に打ち上げた。

 島の周囲は結界で覆われていく。


 爆風で吹き飛ばされた人たちは、みんな軽いケガだったのが救いだ。

 死者は出ていないので、回復魔法でなんとかなる。

 メンバーも無事だ。


「オーグスト! 大結界は修復できそう?」

「すぐには無理。全部吹き飛んだ」


 大結界が吹き飛んだ途端に、次元の裂け目からこれまで出てこなかった大型の魔獣が現れ始めた。

 デーモンタウロスの群れが、軍隊のように大量に出てくる。

 第一騎士団の人数では、とてもじゃないけど相手にならない。

 ここで食い止めないと、私たちだって危ない。


「ニコラくん、ニードルショットで足止めできる?」

「やってみます」


 デーモンタウロスに炎攻撃は効かない。

 身体が異常に硬いので、倒すのがやっかいな敵だ。


「高速魔法陣、ニードルショット!」

「いかづち!」


 効いてる。

 全部じゃないけど、半分ぐらいのデーモンタウロスは麻痺で倒れた。

 マルク、ワルデック先生、クリス先輩が、1体ずつ倒していく。

 レアナはデーモンタウロス以外の魔獣を、火魔法で片付けている。


「竜王剣!」


 一撃では無理だけど、麻痺が効いてる敵なら私でもギリギリ倒せる。

 ニコラくんに援護してもらいながら、出てくるデーモンタウロスを麻痺させては倒す。

 瞬く間に周囲には、魔獣の死体が積み上がっていった。


「キリがねえぞ! どうすんだ? これ」


 戦いを止めると、島が魔獣だらけになってしまう。

 そうなったら、島を覆っている結界もどうなるかわからない。

 1体でも逃がすと、騎士団の剣でデーモンタウロスを倒すのは難しい。

 

「とにかく、敵が途切れたら大結界を張り直すしかないでしょう」

「途切れる様子ねえけどな」

「魔物だって24時間活動しているわけじゃないかも」

「そうだといいけどよ」


 疲れが見え始めたメンバーに回復をかけつつ、戦い続けた。

 死にものぐるいで戦っていれば、裂け目から出てくるデーモンタウロス軍はなんとか倒せている。


 裂け目の向こう側に昼夜があるのかどうかわからないけど、夜になると溢れてくる魔獣の数が減ってきた。

 スワンソン先生とニコラくんが大きな土壁を次元の裂け目の前に立てて、魔物を食い止めている間に、大神官10名が集まって大結界を修復した。

 丸1日続いた戦いは、いったん終結したかのように見えたけど……


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