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セルディアへ向かう

「セルディアへはクリストフさんと、あなたたち4人に行ってもらうことになりました。プルマンとベルジュ騎士は、リリトの防衛に必要なので、残ってもらいます。私もついていきたいのですが、大結界が心配なので、そっちはワルデック先生にお願いします」


 4人か。

 オーグストとエヴァ先輩が抜けてしまう。

 今までずっとエヴァ先輩と連携していたから、心細い。

 

 だけど……すでに敵が金剛石を手に入れて、リリトへ向かっていたら。

 リリトはエヴァ先輩とオーグストだけだ。

 あっちの方がもっと心細いよね。


 スワンソン先生とオーグストは、オクラマ島へ行ったらすぐに、島に転移魔法陣ができていないか捜索するらしい。

 私たちは、セルディア側で魔神がもし転移した場合、深追いしなくてもいいと言われた。

 少なくとも直接オクラマ島へは転移できないようにするらしいから。


 そして、これはスワンソン先生が王女様のいないところで私だけに指示してきたことだけど。

 金剛石を見つけたら、メテオで飛ばしていいと。

 敵の手に渡るぐらいなら敵ごと吹っ飛ばすように指示された。

 メテオ以外の魔法では跳ね返されてしまうから。

 最悪、金剛石さえ吹っ飛ばしたら、逃げてもいいと言われた。

 ようするに、私たちのミッションは、秘宝を敵に渡さないこと。その一点だ。


 もしミッションを失敗することがあったら、逃げてリリトで騎士団と合流しようと、メンバーには伝えた。

 魔神の狙いはリリトの大結界であって、セルディアの国じゃない。

 生きてリリトへ合流することの方が大事だ。


 準備ができると、クリス先輩が古竜様をポルトの森に呼んでくれた。

 最近古竜様ばっかり頼って申し訳ない気がするけど、案外古竜様は楽しんでいるようだ。

 水神竜様に会えるということで、喜んでいる。

 

 出発前に、古竜様にはワルデック先生にも加護をかけてもらった。

 今回全員が火魔法を使う可能性があるので、炎耐性がないと危ないから。

 王女様にはニコラくんが炎耐性強化をかけたらいいよね。


 リリト戦のときに作った、状態異常耐性の腕輪を装備して、古竜様に乗る。

 これ、乗り物酔いに効くっていうのがわかったから。

 今回は少しスピードを出すというので、クリス先輩も頭じゃなくて背中に乗った。

 もちろん全員命綱でしっかり結んで。

 王女様は中心でワルデック先生とクリス先輩がしっかり支えている。

 竜の背中に乗った王女様なんて、世界中でアナ王女様だけだよね、きっと。


 

 セルディアへは、2時間ほどで到着した。

 もう目もあけていられないスピードだったので、ずっと目を閉じていたら着いてしまった。

 今回は酔わなかったから助かったけど。

 私たちを王宮の近くの広場に降ろすと、古竜様は水神竜様に会いに行ってしまった。

 

 うかつだったんだけど、バスティアンにいたときの服装だと、セルディアではかなり寒い。

 王都では雪こそ降っていないけれど、まるで真冬だ。

 歩いている人たちは、毛皮などの温かそうなジャケットを着ている。


 私たちは王女様に連れられて、王宮へ案内された。

 真っ白な建物で、噴水や滝などがあちこちにあって、美しい王宮だ。

 王宮の人は、昨日の今日で王女様が戻ってきたことに、すごく驚いていた。


「お父様は……国王陛下はご無事ですか?」

「はい、だいぶ憔悴しておられますが、王女殿下のお帰りを待っておられました」

「よかった……すぐに参ります、と伝えてください」

「そちらの方々は?」

「バスティアン王国からわざわざ私の護衛に来てくださった方々です。丁重におもてなししてください」


 国王陛下の側近と思われる人に、いくつか指示を出して、王女様は行ってしまった。

 私たちは、貴賓室に案内され、そこでしばらく待つことに。


「あの……すみません、この部屋、ここ数日の間に僕たち以外で使った人がいましたか?」

「いいえ、ここ数日は誰も来客はなかったと思いますが。何か?」

「いえ、なんでもありません」


 ニコラくんは、従者の人に嘘くさい笑顔を向けた。

 そして、その人が行ってしまってから、床から魔法陣の痕跡を浮き上がらせた。


「転移魔法陣です。ここに出入りしたのは確定ですね」

「ということは、魔神が関わってるのも確実だよね……」


 その後、王女様が戻ってきてから報告して、王宮内を調べさせてもらったら、5箇所に転移魔法陣の痕跡があった。

 つまり、王宮内の情報は筒抜けだったってことだ。

 転移魔法陣を用いて出入りしていたとなると、人の姿をしていて、知能がある魔人である可能性が高い。

 

 なんでそんなに簡単に王宮に出入りできたのかと思ったら、驚いたことに、セルディア王宮は結界を張っていないらしい。

 国全体に結界を張ることを優先していて、王宮自体には結界を張る設備がないとのこと。

 その代わりに、王族は金剛石を身に着けているんだそうだ。


「国全体に結界を張っているのであれば、どうやって魔人が入り込んだんだろう?」

「ただ……結界を張っているのは国境だけです。海側や、北のホラス山脈側には張っていません。ホラス山脈には水神竜様がいらっしゃるので、近づく人はいませんし」

「とにかく、一刻も早く北のダンジョンへ向かいましょう」

「はい。今お父様のお医者様が来られているので、その後に、ダンジョンへの入り方を詳しく聞いて参ります」


 王女様はかなり疲れている様子だ。

 私たちは慣れているから平気だけど、あんな様子で戦えるんだろうか。


「クリス先輩、学生証って作りました?」

「ああ、この間作ってもらったが」

「ステイタスにメテオのスキル表示されてます?」

「ちょっと待ってくれるか。あまり見たことがなくてな……ああ、いや表示されていないようだ」

「念のため、覚えてもらえませんか? 私、メテオ2発しか撃てないんです。しかも、連発したら倒れます。その時はクリス先輩しか魔人を倒せないので」


 今更だけど、クリス先輩に剣に魔力を溜めるやり方を説明する。

 剣が青く光るまで魔力を流し続けるように。


「おお、こんな感じでいいのか」

「スキル欄に、メテオ出ました?」

「出たぞ! これで使えるだろうか?」

「ここだと危ないので、山に行ってから一度試しましょう。後は放つだけですから」


 もし、魔人が金剛石を手にしていたら、他の人は魔法攻撃ができないから。

 物理攻撃が効かない敵だった場合、メテオが頼みの綱だ。

 私が魔力回復ポーションを使う間、時間を稼いでもらうように、他のみんなにも頼んだ。

 


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