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王子誘拐事件

 翌朝登校したら、もう学園祭の名残はどこにもなくて、いつもの学園風景。

 少しだけ変わったのは、知らない生徒たちから挨拶されるようになったことだ。

 今まで遠巻きに見てるだけだった人も、学園祭でちょっと距離が近づいた感じ。


 教室で先生を待っていると、ワルデック先生とスワンソン先生と一緒に、王女様が入ってきた。

 勢ぞろいでなんだろう?


「昨晩、セルディア王国で事件があったと緊急の報告が入ってきてな。それで、王女殿下は至急帰国しなければいけなくなった。詳細は、王女殿下から説明してもらった方がいいだろう」

「実は……私の兄である第二王子ゼノンが誘拐されたのです。それで、私は至急帰国しなければなりません」

「誘拐って……じゃあ、王女様は帰国してどうするんですか?」

「私は、兄たちを探しに王家のダンジョンへ向かいます。最悪私が王位を継がなくては」


 国王が病気なんだっけ。

 王子がふたりともいなくなって、国王は無事なんだろうか。

 なんで、病気の現国王を狙わずに、王子を狙うのかな?

 王子に何か利用価値があるからだよね?


「王太子殿下が狙われる理由って、心当たりとかありませんか?」

「それは……恐らくですが、王家の秘宝を狙っているのではないかと」

「だったら、王女様が帰国したら、次は王女様が狙われるじゃん!」

「我らが護衛についていった方がよいのではないか?」

「まあ、待て、クリストフ。お前はともかく、こいつらは国の許可なくセルディアに送ることはできんぞ」


 ワルデック先生に止められて、クリス先輩は不服そうだ。

 確かにクリス先輩だけなら、マリアナに放任されてるぐらいだから、ついていけるかも。


「皆様のお気持ちはとてもありがたいです。でも、これはやはり王女である私が解決しなければならない問題なのです。秘宝を奪われるようなことになれば、セルディアは滅んでしまうかもしれません」

「秘宝って、国が滅んでしまうぐらいすごい力があるの?」

「この世の……あらゆる魔力をはね返す力があると言われています」


 黙って話を聞いていたスワンソン先生が、急に動揺したような顔になった。


「それは……金剛石ですか?」

「ご存知なんですね。これは王家の者以外には口外していない話なのですが」

「そういう石がどこかにある、ということは知っていましたが」

「これがそうです」


 王女様は腕にはめていた細いブレスレットをはずして、スワンソン先生に手渡した。

 小さなキラキラの石がついている。


「それは、小さなものなので、私が身を守る程度の力しかありません。しかし、王家の秘宝はセルディアの結界を揺るがすほどの力があるのです」


 まずい。

 全員顔色が変わった。


「王女殿下、どうか1日だけ、いや、半日でもいいので、このブレスレットを貸していただくことはできますか?」

「構いません。何かのお役に立つのであれば、置いていきます。ただ、私は急ぎますので、出発しなければ……」

「古竜殿に頼んで姫様を送ってもらいましょう! それが一番早いです!」

「王女殿下、少し私に時間をください。もしかするとS クラスに出動命令が出ることになります」

「なぜでしょうか?」

「これが魔神の手に渡ったら、隣国リリトの大結界が破られる恐れがあるからです。ちなみに秘宝というのは、どのぐらいの大きさかわかりますか?」

「それは、たぶんこのぐらいの大きさだったかと」


 王女様が手の上に小さめの卵ぐらいの大きさの丸い氷を出すと、スワンソン先生はさらに深刻な顔になった。


「プルマンとデルビーは、大結界の結界強度を再現して、金剛石の威力の検証を。私は騎士団とリリト王国に連絡を取ります。クリストフさんは、すみませんが古竜様にお願いを。残りの人たちは王女殿下の警護についていてください。奴らがここまで来る可能性もあります」


 スワンソン先生は、ニコラくんとオーグストを連れて、バタバタと出ていってしまった。

 王女様は、意味がわからなくて驚いている。


「あの……もしかして、あなた方は犯人の予想がついているのでしょうか」

「杞憂であればいいんだけど……」


 王女様は、鎖国しているような国の人なので、ここ最近マリアナやリリトで起きていることを詳しくは知らないようだった。

 魔神が現れ、聖女様たちをさらって、リリトに次元の裂け目ができていること。

 そこから魔物が湧いているのを、大結界で防いでいること。

 魔神が関わっているとしたら、王女様では討伐できないということなどを話した。


「そんな……ではお兄様たちは、魔神にさらわれてしまったというのですか」

「その可能性があるというだけですけど……でも、まだ敵に秘宝が渡っていなければ、第二王子様は生きてるはずです」

「私は、てっきり第一王子派と第二王子派が争いを起こしたのかとばかり……」

「そういう可能性もあると思いますよ。それなら、まだ希望はありますよね」


 単なる国内クーデターとかだったら助かるんだけどな。

 でも、王女様が来たときから、薄々フラグだなと思ってた。

 セルディアに行かなくて済むという流れにはならなかったし。


 そして、半日もしないうちに、私たちにはセルディアへ出陣命令が出た。

 

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