ルディアの武器
「それでね、古竜さまあ! クリス先輩やルイみたいに、剣に加護を授けてもらうことはできますかあ?」
「おお、そうじゃった。お前らには剣に名を与えてやったのじゃったな」
「あれは、持ち主に関係なく、剣を持った者が加護の力を使えますよね?」
「そうじゃ。ただし、剣の性能にもよるからのう。どんな剣に与えるかによって、効果が違うかもしれんぞ」
「では、この剣でお願いしたく思います。私の兄のものですが、ミスリルの剣です」
王女様が差し出したのは、騎士団の人が使っているような頑丈そうな剣だ。
私のミスリルの剣はもっと細身で軽いけど、あれは重いんじゃないだろうか。
王女様の細腕で振り回せそうにない気がするけど。
「あ、古竜様! せっかくだから、ついでに私の短剣もいいですかあ?」
レアナがちゃっかり自分の短剣も隣に並べた。
レアナの短剣は緋色の宝珠がついた、火属性を強める効果のある剣だ。
「よいぞ、ついでじゃからな。他にはおらぬか?」
「お、俺もいいですか? 俺は魔法使えねえけど、竜王剣スキルがほしくて……」
「ん? お前にはワシが加護を与えたのではなかったか? 魔力は全然なしか?」
「魔力は1だけあるけど、使い道ねえから」
あれ?
マルクって魔力ゼロだって言ってなかったっけ。
1でもあるなら、スキルぐらいは使える可能性あると思うけどな。
「これでよいな? では、この3本の剣にルディアの剣の名を与える!」
剣が一瞬淡く光った。
見た目に変わりはないけど、これで加護がついたのかな?
王女様、レアナ、マルクが剣を手にとってみる。
「うおおおお! 竜王斬撃! ありがとうございます、ありがとうございます!」
マルクがペコペコ頭を下げている。
よっぽど嬉しかったみたい。
「どうじゃ、少しは魔力が増えたのではないか?」
「そういえば……魔力が10になりました。てえことは、この烈火剣とか炎のブレスってのも……」
「やってみなよ! マルク!」
「お、おう……」
マルクは自信なさげに、新しいスキルの烈火剣を放ってみた。
剣筋に沿うように、炎が現れた!
「お、俺が魔法攻撃……使えた」
「よかったじゃん、マルク! 魔力量は使ってたら絶対増えるよ!」
王女様のミスリル剣には、私の剣と同じように、炎のブレスと竜王剣スキルがついたようだ。
レアナの短剣には炎のブレスと烈火剣スキルが加わった。
炎のブレスというスキルは、ルディアの剣の加護に共通してるのかな。
レアナなんかは、すでに自分の火魔法が強いから必要ないかもしれないけど、ルディアの剣の加護にはメリットがある。
スキルを使うときの、魔力消費量が少ない。
剣自体の力で魔法を放っているような感じだ。
だから、魔力量の少ないマルクでもある程度は使えるんじゃないかな。
王女様も、無事、炎のブレスを出せたようだ。
それさえ使えたら、後衛からでも攻撃できるよね。
「あの……古竜様。剣ではなく、杖に名前をいただくことはできないんでしょうか?」
「おお、お前は魔導士か。杖に名前のう……やったことはないが、できないこともないじゃろ。試してみるか?」
「はい! ぜひ!」
「じゃ、じゃあ俺も‼」
「よし、やってみるぞ。2本の杖をルディアの杖と名付ける!」
ニコラくんとオーグストの杖が淡く光り、ルディアの名前がついたようだ。
「あっ、炎のブレスだ! やった!」
「それと、炎耐性強化、火魔法強化がついてますね。これは助かる」
ニコラくんが少し離れたところに行って、杖から炎のブレスを出すと、とんでもない炎が出た。
私たちが剣から出す炎のブレスより、かなり強力だ。
スワンソン先生のヘルフレアよりすごいかも。
危うく火の海になりそうになったので、あわててウォーターウェイブで消して回っている。
私たちは前にもらった古竜様の加護で全員常態の炎耐性を持っている。
だけど、炎耐性強化と火魔法強化スキルは、他の人にかけてあげることができるらしい。
臨時のパーティーメンバーにかけてあげられるから、助かるよね。
全員火魔法使えるようになったけど、炎耐性のない人が近くにいたら危ないし。
王女様の剣のついでに、私たちもずいぶん恩恵を受けてしまった。
「どうじゃ、これで少しは役に立ったか?」
「はい! もちろんです、古竜様! ありがとうございます!」
「このように素晴らしい加護を頂いて、本当にありがとうございました。この剣は家宝にさせていただきます」
「うむ。水神竜殿に会ったら、ワシが心配しておったと伝えてくれるかの」
「はい、必ず伝えます。きっとお喜びになることでしょう」
古竜様は、せっかく来たのでバスティアン周辺の魔獣狩りをしてから帰るらしい。
ベアファングの肉が好物なんだって。
どうやって狩るのか見てみたい気もするけど、背中に乗るのは遠慮したい。
古竜様のお手伝いをすると言うクリス先輩を残して、私たちは学園に戻った。
これで王女様の火魔法の件は、解決かなあ。
私と同じ程度の炎のブレスは出せるみたいだし。
後は、もう少しニコラくんに魔法攻撃の強化を鍛えてもらったら大丈夫かも。