図書室でお勉強
翌日、授業が終わってから、さっそくレアナと一緒に図書室に向かった。
図書室といっても、閲覧専用で、貸出はしてくれない。
適当に植物や動物の図鑑などを見繕って、席に座る。
周囲を見渡すと、魔導士科の生徒が数人勉強をしているようだ。
騎士科とは制服の襟の色が違うので、見たらすぐにわかる。
騎士科の生徒は勉強が嫌いな人が多いので、図書室になんか来ないんだろうな。
とりあえず、簡単な依頼を受けるのに必要な情報収集だよね。
薬草の種類を調べてみる。
回復ポーションに使う薬草は、一種類のようだ。
レアナは、真面目に葉っぱの形をノートに書き写したりしている。
ポーションには下級、中級、上級とあって、効き目が違うんだけど、命に関わらない程度の怪我なら、下級ポーションでいいみたい。
ふと、薬草採取の依頼を受けるより、ポーション作ったほうが儲かるんじゃない?という気がした。
どうやって作るんだろ…
騎士科の一般教養には、そういう授業はなかったな。
魔導士科の領分かなあ。
本で調べてもよくわからないので、近くに座っている魔導士科の女生徒に声をかけてみる。
「あの…ちょっと教えてもらいたいことがあるんですけど、聞いてもいいですか?」
本を読んでいた、丸メガネをかけたガリ勉っぽい人が、少し面倒くさそうな顔をしてこっちを向いた。
「なんでしょう」
「回復ポーションって、作るのに特別なスキルとか必要なんですか?」
「どうかな…向き不向きはあると思うけど、魔力さえあれば練習したら作れるようになるって聞いたことある」
「魔導士科の人は、みんな習うんですか?」
「錬金術士を目指す人のゼミがあるらしい。誰でも習うわけじゃないよ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
そうか。誰でも作れるようになる可能性があるということがわかったのはよかった。
それと、ゼミがあるんだ。ということは、教えてもらえる可能性もある。
なんとかしてそのゼミに潜り込めないかなあ…と思案する。
魔導士科に友達作れたらいいんだけどな。
なんせ、回復ポーションは値段が高くて買えないことは、王都に行ったときにわかった。
1回分で5000ダルぐらいするんだもん。
幸い私は魔力はあるんだし、できれば自作できるようになりたい。
もし作れるようになったら、いくらぐらいで買い取ってもらえるんだろう。
こういうのを、取らぬ狸の皮算用って言うんだな、と思考を止める。
「ねえ、レアは魔力は全然ないの?」
「ちょっとだけあるよ。ろうそくに火をつけるぐらいなら」
レアは笑いながら、人差し指の先にぽっと小さな火を灯して見せてくれた。
ちょっと驚いた。
誰でもできるわけではないが、レアは練習したら火魔法が少しだけ使えたんだって。
でも、魔導士の才能がないから、それ以上は無理だと思って諦めたと言う。
この世界の人は、みんな微弱な魔力を持っていると最近知った。
だから、騎士科の生徒でも、学生カードが扱えたりするのだ。
「誰にも言わないから、どれぐらい魔力量あるのか教えて。ダメ?」
「んーっと。12かな。今ちょっと火つけたから1減った」
私の魔力は今400ぐらいある。
これは子どもときに魔力に気付いて、毎日使うようにしていたからだ。
学園に来てからは、毎日訓練でヒーリングを使うせいか、最大魔力量は日々増えている。
魔力がからっぽになって、疲れて寝てしまった翌日には、必ず少し増えてる。
そのことに気付いてから、魔力を使い果たして寝るようになった。
練習したら誰でも作れるようになるなら、レアナだってできるかもしれないよね?
せっかくちょっとでも魔力があるなら、何かに使えないかな、と思う。
もったいないと思ってしまうのは、貧乏人根性かも。
初級魔法の本を探してきて、火魔法の使い方を探してみる。
私のヒーリングの魔法は、1回使うと消費魔力は3ぐらいだ。
12も魔力量があるなら、一番初級のファイアーボムぐらい使えるんじゃないのかと期待してしまう。
「ねえ、レア。火魔法使えるなら、これ、やってみてよ」