紹介された
「それでは只今より、リリト王国より帰還した騎士団の慰労会を開催いたします」
アナウンスで会場がしんと静まって、国王陛下の登場だ。
「先だって、隣国リリト王国に魔神が出現し、我が国の騎士団と騎士学園の優秀なパーティーが、見事討伐に成功した。その勝利を称え、討伐隊の慰労会を始めることとする。まずは、モルガン団長以下第一騎士団、そして、クロード団長以下魔導士団10名。皆には働きに応じた報奨金と、10日間の休暇を与える」
騎士団の人たちは、微動だにせず直立不動だ。
最前列、モルガン団長の隣にはエヴァ先輩がいる。
私たちとは別行動だけど、後で呼ばれるのかな。
先輩も一応パーティーメンバーなんだけど。
あ、でも、騎士団としての報奨も受け取れるよね、先輩の場合。
「次に我が国に誕生した優秀なSランク冒険者パーティーを紹介する。勇者ベルジュ、壇上へ」
私たちが壇上に並ぶと、エヴァ先輩が上がってきて私の隣に並んだ。
「まず、我が国に2名の勇者が誕生したことを、皆に伝える。第一騎士団所属、勇者エヴァリスト・ディ・ベルジュ。そして、勇者ルイーズ・ディ・デイモントとパーティーメンバー。そなたたちのお陰で魔神を討伐することができた。国王の私から改めて礼を言う。よくやってくれた」
陛下がパチパチと拍手をしたので、会場からも拍手が沸き起こる。
大丈夫、私の顔なんて小さくしか見えてないよね、きっと。
なんとなく、エヴァ先輩が矢面に立ってくれて、私たちはそのオマケみたいな感じでよかった。
「そして、今日は他にも喜ばしい報告がある。本年度の騎士学園は非常に稀なる才能を持った者たちを輩出した。まず、オーグスト・プルマン。この者は中央正教会が認定した、我が国初の大神官となった。卒業後はバスティアン正教会幹部として、ますますの活躍を期待する」
おおお。私たちの時より拍手が大きい!
勇者なんて訳わからない存在より、大神官の方が国民にとっては大事だよね!
「次に、ニコラ・デルビー。この者は、リリト王国大神殿の古代魔法陣を発見し、解析に尽力した。古代魔法の権威ジルベルト・スワンソン師の元で研究に励み、これもまた我が国初の大賢者となったことを報告する。卒業後は、王国の筆頭魔導士となることを期待しているぞ」
『おお』と会場のあちこちからどよめきが漏れる。
みんな大賢者がどのぐらいすごいのか、理解していないような感じだ。
そうか……名誉とかに興味ないって言ってたニコラくんも、決意表明するんだ。
どういう心境の変化かわからないけど、私は応援する。
この間悩んでる様子だったのは、このことだったのかな。
だったらこれで、少しは実家にも認めてもらえるといいね。
「魔導戦士レアナ・オルゴット。そして剣豪マルク・ローラン。そなたたちの見事な戦いっぷりも聞き及んでおるぞ。これからも勇者を支え、Sランクパーティーとしてこの国を守ってほしい。報告は以上だ。では、これより慰労会を始めることとする!」
ようやく、客寄せパンダから解放された。
この後、立食パーティがあり、貴族たちの社交が始まるみたい。
私は、久しぶりにお父さんとお母さんと一緒にご飯を食べよう!
丸テーブルに戻ってみると、いつの間にかマルクの両親とレアナの両親が一緒に座っていた。
マルクの両親はフランクな性格だから、挨拶しにきたみたい。
レアナの両親とは初対面。
お父さんは商人らしい、なかなかダンディーな人だ。
お母さんはレアナとよく似ていて、小さくて可愛らしい感じの人。
「あなたがルイーズちゃんね。いつもレアナから話は聞いていたのよ。学園で友達ができたって、それはそれは嬉しそうに手紙に書いてあったわ。仲良くしてくれてありがとうね」
話を聞いてみたら、マルクの実家とレアナの実家にも国から補助金がおりたらしい。
国王陛下、すいぶん気配りしてくれたんだなあ。
勇者パーティーに入れたお陰だとお礼を言われてしまった。
「ルイーズちゃんかレアナちゃんのどっちか、ウチのマルクのお嫁さんにって思ってたんだけどねえ。ルイーズちゃんは貴族になっちゃったんだもんねえ」
「よせよ、母ちゃん!」
なんだか、マルクのお母さんがレアナに圧力をかけているような気がする。
でも、レアナも満更ではなさそうな感じだ。
このふたりなら今はお金もあるし、身分にとらわれず楽しく生きていけるかも。
まあ、ふたりの本音はわからないけど。
他のみんなも両親が来てるはずなんだけどな……と会場を見渡していたら、ニコラくんとお父さんらしき人を見つけた。
一応、挨拶に行った方がいいのかな。
こういう場所では、身分の低い方から声をかけたらダメなんだったっけ。
ニコラくんのご両親は陞爵してなかったはずだから、子爵だよね。
うん、挨拶に行こう。うち、子爵だし。
「だからっ、僕はお見合いなんてしませんよ! 断ってください!」
「お前に家督を相続することにしたって言ってるだろう!」
「嫌ですよ! 兄さんが継ぐって決まってたじゃないですか! 僕は研究者になるんです。家は継げません! だいたい、その人、兄さんの婚約者じゃないですか!」
「どっちでもいいだろう! 後を継ぐ方が結婚すれば済む話だ」
……なんか、モメてる気がする。
ていうか、ニコラくんのお父さんて貴族のテンプレみたいな人だなあ。
ひらひらのブラウス着てるし。
ニコラくんが出世したから、家督継がせてお兄さんの婚約者をあてがおうとしてる、ってところか。
どこかのお金持ちの令嬢かな。
なんだか気の毒だから、ニコラくん助けに行ってあげようか。
私やレアナたちの両親にもニコラくん、紹介したいしね。