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帰還パーティー

 国王陛下が用意してくれたクランハウスは、めちゃくちゃ広い家だった。

 元伯爵家だったんだけど、不正か何かで爵位剥奪された家があったんだって。

 庭は広いし、1階にはパーティーを開けそうなぐらい広いリビングルーム。

 食事をする部屋も、数十人の会食ぐらいはできそうだ。

 2階には客室が10部屋ぐらいある。

 貴族ってこんな家に住んでるんだ。

 てことは、エヴァ先輩の実家もこんな感じなんだろうか。

 

 しかし、こんな家、使用人もいないのにどうやって維持するの?と思ったら、国から維持費が出るらしい。

 私たちはあくまで住ませてもらうだけで、国がクランハウスを管理するんだそうだ。

 こんな家、管理するだけでも大変そうだから、借りてるだけで十分。


 とにかく私たち5人だけではどうしようもないので、マルクのお母さんに頼んで、家事をしてくれる人を紹介してもらった。

 アンナさんという50代ぐらいの人で、食堂で働いてた経験があるんだって。

 とっても料理上手らしいから、楽しみ!

 正直言って、私とレアナのふたりで家事をする自信はない。

 というか、私はどっちかというと家事は嫌いだ。

 もう、ここにずっと住めるなら結婚なんてしたくないかも。


 部屋がいっぱいあるので、5人で2部屋ずつ分けることになった。

 エヴァ先輩は騎士団宿舎だけど、一応一部屋エヴァ先輩の部屋も用意した。


 今まで学生寮ではワンルーム状態だったんだけど、寝室が別になった。

 といっても、たいした荷物があるわけでもなく、部屋はがらんとしている。

 元々置いてあった家具は、ありがたく使わせてもらうことにした。

 テーブルやドレッサーなど、ある程度のものは揃ってる。

 近いうちに、ベッドだけは買い替えたいなあ。

 誰が使ってたかわからないやつだし。

 

 学生寮のときは男子寮が遠くて、用事があるときに結構不便だった。

 これからは吹き抜けの向かい側に男子たちの部屋があって便利だ。

 前世で言うところの、シェアハウスっていうやつだよね。


 クランハウスの場所は、騎士団宿舎と学園のちょうど中間あたりで、王宮の近くにパーティーで固まって住んでいてほしいという国王の思惑もあるみたい。

 いつでも出動できるように、ということか。

 おいしい話には、裏もあるということだ。


 久しぶりに転移メモでお母さんに手紙を書いて、お父さんが子爵になったことを伝えたら、すごく驚いていた。

 王宮からの連絡の方が遅かったみたい。

 アデル村ではお祭り騒ぎになってしまったようだ。

 お父さんはあのあたり一帯を警備している、地元騎士団の団長のような立場だったのに、いきなり領主様だもんね。

 大丈夫なんだろうか。

 新しい領ができたときは、一応職員が国から派遣されるらしい。

 騎士だった人がいきなり事務作業とかできないもんね。


 3日後には帰還パーティーが開かれるので、その時に両親も王都へ来ることになった。

 私たちの親は全員招待されている。

 王都に住む男爵以上の貴族は全員招待されていて、お披露目会みたいなものだって。

 パーティーといえば女子は普通ドレスなんだけど、私達の場合、オーグスト以外は騎士服。

 ま、ドレス作ってる時間もないし、考えなくていいから楽でいいや。



 クランハウスへ引っ越して、バタバタしているうちにパーティーの日がやってきた。

 エヴァ先輩が騎士団の馬車で迎えに来てくれて、王宮へ向かう。

 馬車に乗るほどの距離じゃないんだけど、その方が人に囲まれずに中へ入れる、ということで。


 王宮のだだっ広い庭園には、色とりどりの花が飾られ、テーブルには簡単な食事やお菓子などが用意されている。

 大勢の給仕人が忙しそうに飲み物を配り歩いている。

 オーケストラが優雅な宮廷音楽を奏でていて、いかにも格式高いパーティーという感じ。


 設置された舞台の両脇には座席が用意されていて、そこは高位貴族の席だそうだ。

 普通の貴族は、ガーデンの方にある丸テーブルの好きなところに座る。

 舞台の前には第一騎士団と魔導士団の人たちの席があった。

 私たちの席はどこだろう……と思ったら、なんと高位貴族席の最前列だ。

 いたたまれなくて、近づく気にもなれない。


 人混みをかき分けて両親を探したら、見つかった!

 すみっこの丸テーブルで、ちょこんと申し訳無さそうに座っている。

 そりゃあ、こんなところに知り合いいないよね……

 側に黒服の知らない人がいて、手帳を見ながらお父さんに何かを説明したりしているので、あの人が派遣された職員の人だろうか。


「お父さん! お母さん!」

「おお、ルイーズ!」

「無事戻ったよ!」

「顔を見るまで心配だったのよ。元気そうでよかったわ」

 

 お母さんは涙ぐんでいる。

 どこまで話が伝わってるかわからないけど、心配かけてるよね。


「ところで……ゴホン、何がどうしてこうなった? お前、何やらかしたんだ」

「ええと、話すと長いんだけど、ちょっとたまたま魔神を討伐しちゃって」

「魔神だと!? よく生きて帰ってこれたな。お前にそれほど騎士の才能があったなんて、俺はまったく気付かなかったぞ」

「うん、まあ私もそんな才能ないと今でも思ってるんだけど。でも、パーティーメンバーがみんな強いんだよ! 後で紹介するね!」

「とにかく、国のためにしっかり働くんだぞ。それとな。爵位はお前に継がせる。誰でもいいから婿養子になってくれる人見つけてこい。いいな! そこらへんにいっぱいいるだろう?」

「いや、お父さん、それは無理だって! アデル村に婿養子に来てくれるような人、王都にはいないよ!」

「ん? そうか? なら、母さん、見合い相手を探してやらないとな!」

「ええ、そうね。ルイーズも子爵令嬢になるんだから」

 

 えっ、子爵令嬢?

 私、貴族になるの?

 なんとなく、お父さんが貴族になるだけだと思ってた。

 だって、女だから継承権ないと思ってたし。

 私、一応騎士爵位だから、それで十分なんだけど。


 そうか。誰か婿養子に来てくれたら、その人が子爵になれるのか。

 一応、義理の息子でも跡継ぎだもんね。

 ……それはまた面倒くさいことになったなあ。

 次女なのに婿養子なんて、考えたこともなかった。


 係の人が呼びに来たので、渋々自分の席に戻ると、もうみんな揃っていた。

 後ろに大貴族様が座っているので、みんな無言だ。

 しばらくじっと我慢の子で座っていよう。

 紹介されるだけだし。


 

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