冒険者ギルド②
「依頼は、そこの掲示板を見てくださいね。Fランクなら採取依頼からスタートするといいですよ」
受付のお姉さまが指さした方向には、いくつかのボードがあった。
「E~Fランク」と書かれているボードを見にいってみる。
「ポルト周辺、薬草採取。報酬3000ダル」
薬草かあ。知識がないから、簡単なのかどうかさっぱりわかんない。
「ポルト周辺、角ラビ討伐、10体。報酬10000ダル」
つまり、ポルト周辺には、角ラビというモンスターがたくさんいる、と。
だったら、薬草とりに行っても、戦わないとダメだよね。
日当10000ダルかあ…レアナと分けたら、一人あたり5000ダル。
でも、5000✕4回受けたら、短剣ぐらいは買えるんだから、悪くないか。
「私たちにできるかなあ」
レアナが不安そうに聞いてくる。
「とりあえず、学園の図書室でいろいろ調べてみない? 薬草の種類とか」
「それがいいと思う。準備は大事だよね!」
いきなり依頼を受けるのかと、心配していたようだ。
いくら私でも、そんな無謀なことはしませんよ。
とりあえず、依頼を受けるのはもう少し先ということにして、作戦をねろう。
簡単そうな依頼をいくつかメモして、お腹が空いたので、カフェに行くことにする。
アデル村にはカフェなんていうオシャレな店はなかった。
おやつといえば、芋をふかしたようなものとか、パンケーキとかしかなくて。
さすが王都だな、と思う。
この世界で、ちゃんとしたケーキなんて初めて見た。
ベリーが乗っているケーキや、りんごのような果物のパイ。
コーヒーはないが、紅茶のような風味のお茶はある。
「レアは王都の近くの村だから、カフェに来たことあるの?」
「うん、父さんが仕入れの用事に来るときに、連れてきたもらったことあるよ。2、3回」
メニューを見て、レアナは目をキラキラさせている。
ふたりで違うケーキをたのんで、分けることにした。
ふと気がつくと、周囲の令嬢がこちらを見て、ヒソヒソと何か話している。
あ、そうか。ふたりとも腰に剣をぶらさげてるもんね。
ワンピースに帯剣してるなんて、おかしなコスプレみたいな感じだし。
注目を集めていることに気付いて、剣を腰からはずした。
置くところがないので、2本ともテーブルの端に並べて置く。
「ねえ…ルイ。私たちって、変な人に見えるよね。多分」
「そうかな? でも、エリートじゃん。王立学園の騎士科だよ?」
「私たちが…エリート? 劣等生じゃん」
「今はね。でも、これから稼ぐよ! きっと就職には困らないって」
そうだね、と言って、レアナはふふっと笑った。
「私ね、ルイがいてよかった。騎士科に入るって決まったときは、本当に怖かったけど」
「私も聖女になれないとわかったときは、目の前真っ暗だったけど。案外学園生活悪くないね!王都にこれたし」
先のことはまだ不安がいっぱいだけど、今は今を楽しもう。
せっかく人生やり直すんだから。