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ゲリラ隊

 翌日、無理を言って急がせた、私とエヴァ先輩のミスリル剣が仕上がった。

 瑠璃の宝珠があしらわれた美しい剣になった。


 今回はどんな敵が出てくるかまったく予想がつかない。

 物理攻撃が効く相手なら、マルク、エヴァ先輩、クリス先輩が前衛だ。

 魔法攻撃が主体になるなら、レアナ、エヴァ先輩、私が前衛。

 人間が相手のときは、体術の訓練をしていたマルクとレアナだ。

 洗脳されている人たちと戦うことになると、それが一番面倒かもしれない。


 そして、力強い味方が到着した。


「よう! お前ら、ちゃんと訓練してるな!」

「ワルデック先生‼」


 大剣をしょって、武装したワルデック先生の登場だ。

 早馬で駆けつけてくれたらしい。

 これほど力強い味方はいないと思った。

 一番ほっとしているのはマルクかもしれない。


「今日は体術の稽古をするぞ! お前らには人間との戦い方を教えてないからな」

「はい!」

「まずは体をほぐせ! 訓練場10周走ってから腹筋100回だ!」

「ひええ。行ってきまーす」


 みんなぶつぶつ言いながらも走り出す。

 なんだか学園に戻ったみたいだ。

 クリス先輩とエヴァ先輩も笑いながら一緒に走っている。

 クリス先輩なんて、いくら走っても呼吸すら乱れてない感じだ。

 さすが野生児。


「ああ、見慣れない顔だと思ったら、あなたがもしかしたら勇者クリストフ様か?」

「私は聖騎士クリストフです。体術の師範殿」

「師範殿? 俺はこいつらの先生だ。クリストフ様にまでこいつらが面倒かけてすまんな」

「私のことはクリストフとお呼びください、師範殿。面倒かけているのは、私の方です。昨日もこの人たちから攻撃魔法を教えてもらいました」

「そうか。まあ、俺はまどろっこしいことが嫌いだ。誰であろうと特別扱いはしないからな」

「心得ました。どうぞよろしくお願いいたします」


 クリス先輩はワルデック先生に深く頭を下げると、私たちの方に戻ってきた。

 心なしか、うれしそうだ。

 学校を知らないって言ってたしね。

 

 それから2人1組になって、簡単な体術を教わった。

 急所を手刀で狙って、気絶させる方法とか、後ろ手に縛り上げる方法などだ。

 まあ、私には無理かなと思ったけど、レアナなんかは楽しそうにやっている。

 魔導戦士というぐらいだから、レアナは体を動かすことが好きみたいだ。

 私もふいに襲われたときの、護身術ぐらいはしっかり覚えておこうと思う。

 今回は洗脳された人たちが相手になることも多いだろうし。


 最悪の場合、私は小さいエアスラッシュを放つ練習をしてある。

 レアナだってニードルショットを使えるしね。

 相手が死んでなければ、後で回復魔法をかけたら済む話だ。

 人間が相手の場合、殺さないように気を付けることの方が気を使う。


 やっぱり私に不足しているのは、剣術だ。

 ワルデック先生がいる間に教えてもらいたいことがたくさんある。


「先生! 私新しい剣スキルを覚えたんですけど、見てもらえませんか?」

「おう、やってみろ」


 竜王剣を見てもらっていると、エヴァ先輩とクリス先輩も寄ってきた。


「なかなかいいスキル覚えたじゃねえか。だがな。3本の剣筋に惑わされるなよ。あくまでも普段通りの剣筋で狙いを定めるんだ。後の2本はオマケぐらいに思ったらいい」

「わかりました」

「後な、狙えるなら首を狙え。そうすりゃあ、運がよければ上下の剣筋で相手の目と心臓を狙える。どっちか当たれば一石二鳥だろ?」

「確かに」


 クリス先輩も、ふむふむとうなづいている。

 私は敵と斬り合いになったら、無我夢中で斬るのが精一杯で、どこかを狙う余裕なんてないかもしれない。

 でも人の形をしている魔物には有効だろうな。



「それでは、作戦会議です」


 スワンソン先生とニコラくんが戻ってきたので、ゲリラ戦の打ち合わせをする。

 ニコラくんが持っていた状態異常無効のブレスレットは、人数分だけなんとか作ることができたようだ。

 ただし、魅了には効果があったが、すべての状態異常に有効というわけではないらしい。

 どんな攻撃がくるかわからないので、解毒のブレスと合わせて全員が身に着けることになった。


 上陸する時点で二手に分かれる。

 ワルデック先生チームは、エヴァ先輩、私、レアナ。

 スワンソン先生チームは、クリス先輩、マルク、ニコラくん、オーグスト、クレール神官。


 オーグストとクレール神官は非戦闘要員なので、戦えるのは実質4人ずつだ。

 ワルデック先生チームは施設の方へ潜入。

 スワンソン先生チームは円形広場へ向かって、儀式を阻止する。

 スワンソン先生チームは、さらわれた聖女様たちを確保できたら、合図の花火をあげる。

 合図があったら、海上で待機していた騎士団が上陸してくる、という手はずだ。


 ワルデック先生のチームの目的は、教団幹部を見つけ出して討伐すること。

 人間は生かして眠らせる。魔物はすべて討伐する。

 ただし、見分けるのが困難な場合は、とりあえず物理攻撃で戦ってみて判断する。

 おかしなスキルを持っていた場合は、敵とみなして殺す。


 スワンソン先生チームは、広場に魔法陣があれば破壊、または封印する。

 教団幹部や魔物がいたら、討伐する。

 その後、洗脳された人たちを騎士団が連れて帰る。

 

 洗脳されている人たちは、オーグストかクレール神官がいれば状態異常を回復できる。

 いない場合は、状態異常回復ポーションを使う。

 それぞれがポーションはマジカルバッグの中に、大量に用意しておくことになった。

 チームの連絡係は私とニコラくん。

 自動書記機能つきの転移メモで、状況を知らせる。


 おおざっぱな計画だけど、ようは魔物は倒して、人間は倒さずに助ける。

 それだけだ。

 そして、もし最悪の事態が起きて、撤退しなければいけない場合は、クリス先輩が竜笛で古竜様を呼ぶ。

 ワルデック先生、スワンソン先生が命令した場合は、絶対に撤退すること。

 どうしても戦わなければいけないとき以外は、敵を深追いしないように、と言われた。


 作戦会議が終わってからエヴァ先輩と少し話したけど、ストーリー的に今はまだラスボスが出てくる段階じゃない。

 もし、魔神がいたとしても、教団のボスだ。

 これぐらい勝てないと、いずれもっと強敵が出てくる。

 

 だから頑張って倒そう。

 こっちには勇者が3人もいるんだから、きっと倒せるはず。

 本当なら勇者は1人だったはずなんだから。



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