冒険者ギルド①
「ほ、本当に、ここに入るの?」
ギルドの正面で、レアナが後ずさりをしている。
出入りしている人が、海賊のような身なりのオッサンたちで、ビビったようだ。
どうやって鍛えたらあんな筋肉になるのかというような、上腕筋オバケみたいな人とか、入れ墨だらけのスキンヘッドとか。
背中に大剣を背負っている人もいる。
「行くよ。冒険者カード作らないと」
勇気を出して、私が先に足を踏み入れた。
私だって、こんなところ出入りしたくないけど、今後のことを考えると冒険者登録は必要だ。
私にはちょっと考えがあって、できるだけ早く冒険者登録をしたかった。
なぜなら、冒険者カードは、紛失しない限り一生使えるからだ。
今なら聖騎士として登録できるが、いつ勇者に変わってしまうともわからない。
できるだけ、今のうちに身分を証明するものを作ってしまいたい、というのが本当の事情だ。
思い切って中に入ってみたら、意外にも役所風の殺風景な場所だった。
中で荒くれ者たちがお酒でも飲んでいるのかと想像していたけど、ただの事務所みたい。
カウンターがあって、数人の職員が受付をしている。
「本日は、どのようなご要件ですか?」
おおお。受付嬢は美人、というのはどこの世界でも変わらないのか。
声まで美声なお姉さまが、声をかけてくれた。
「あの…冒険者登録したいんです」
「失礼ですが、年齢はおいくつですか?」
「12歳です!」
お姉さまは、私が腰にさげている短剣にチラリと目をやった。
「そうですね、12歳でも登録はできます。もしかして、王立学園の学生さんですか?」
「はい、そうです。 一応」
「それなら問題ありません。こちらに必要事項を記入してください」
書類を提出して、学生登録をしたときと同じような道具に手をかざす。
しばらくすると、お姉さまが2枚のカードを手にして戻ってきた。
「こちらがルイーズ・デイモントさん。こちらが、レアナ・オルゴットさんですね。カードの使い方はわかりますか? 学生証と同じようなものですが」
カードの表面には、「ルイーズ・デイモント 聖騎士 Fランク」と書かれている。
それ以外の情報は何もない。
私は、聖騎士で登録ができたことに、ほっとしていた。
(勇者)まで書かれていたら、逃げようと思ってたぐらいだ。
「ステータス」とつぶやくと、学生証と同じように、空中にステータスが現れる。
ギルド証は紛失しても再発行できるらしいが、その時にはその時のランクで再登録することになるらしい。
絶対になくさないようにしよう。
ランクが上がった場合は、ランクの箇所だけ上書きすることもできるが、ランクはギルド側で管理されているので、カード自体は別にFランクのままずっと持っていても問題はないということだった。