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報告会

 その晩神殿から戻ったスワンソン先生が、話があるといって、私たち5人は一室に集められた。


「神殿の古代魔法陣を見てきましたが、私なりのひとつの仮説は立ちました。そこで、皆がこれまで見聞きしてきたことをできるだけ正直に話してほしいのですが」


 ニコラくんとオーグストが気まずそうな顔をしているので、色々聞かれたんだろうな。

 まあ、スワンソン先生なら、何を話してもいいと思うけど。


「まず、あなたたちはマリアナ正教会の儀式の部屋で爆発騒ぎを起こしたそうですね?」

「いえ、騒ぎにはなってないと思いますけど……」


 あれは、クレール神官が隠蔽してくれたので、マリアナ正教会には伝わっていないはず。


「この話は、クレール神官にも確認しましたよ。勇者の加護をもらったとか言っていましたが」

「あ、えっと。事後報告ですが、勇者になりました。私」

「マリアナ正教会からは、あなたとベルジュ騎士は勇者ではなかったと報告してきたのです。だから、別にあなたたちを責めるつもりはありませんよ。ベルジュ聖騎士と、ふたりとも勇者になったのですね?」

「そうです」

「で、プルマンは大神官に、デルビーは大賢者に。そっちのふたりは?」

「あ、私は魔導戦士です」

「俺は剣豪になりました」

「わかりました。今のところは、私の胸の内にとどめておきましょう。あなたたちの今後の指導方針にも関わるので、大事なことなんですよ。それで、大神殿が崩壊した事件の方なんですけど……」


 スワンソン先生の仮説は、途中まではニコラくんの予想と同じで、あの大魔法陣は転移魔法陣の一種ではないかということだった。

 ただ、魔人たちがよく使っているような、場所を移動するような転移陣ではなく、異空間とこの世界の接点を開くようなものではないかと、スワンソン先生は予測しているらしい。

 異空間収納魔法という上級の魔法があるが、それとよく似た構造なんだそうだ。

 

 なぜそんなことをあの大神殿でやったのかというのは、やはり、あの場所に聖剣があると思われていたからではないかと。

 あの大聖堂には一時期聖剣が飾られていた時期があり、盗もうとする人が多いので、マリアナ正教会が引き上げてしまった。

 しかし、あの場所に観光に訪れる人が多いため、リリト正教会はよく似たニセモノの剣をしばらく飾っていたんだそうだ。

 そして、それすらも盗もうとする人が現れたため、展示をやめた。

 その後は宝物庫にしまわれていると思われていたらしい。

 学園にいた頃に、オーグストが知っていた噂も、そんな感じだった。


「私は、なぜゾルディアク教が聖剣にこだわるのかが、不思議だったのです。勇者よりも、聖剣の方にこだわっていたのではありませんか?」

「そういえば、封印の祠に行ったときに、あの死霊たちが聖剣をよこせと言ってました」

「そうでしょう。あの、魔獣の祠に現れた死霊を尋問したところ、そう言ってました。剣そのものというより、どうも剣についている瑠璃の宝珠の力を欲しているようなのです」

「あの青い宝珠ですか?」

「それについて、何か知っていることはありますか?」

「あれは、バルディア山にいる古竜にもらったものなんです。あのへんで採れるって聞きました」

「その力については、何と?」

「それは……異世界から来た者に強く反応する、と」

「異世界から来た者というのは、勇者クリストフのことですか?」

「…………と、エヴァ先輩と、私もです」


 スワンソン先生は、表情を変えなかったけれど、無言で考え込んでしまった。


「すみません、少し頭を整理してました。あなたとベルジュ聖騎士は異世界から来たのですか?」

「生まれたのはこの世界ですけど、前世の記憶があって、その時は異世界にいたみたいなんです。エヴァ先輩にも同じような記憶があって、クリストフ様もそうみたいです」

「輪廻転生ですか。そういうことがあると聞いたことがあります。あっても不思議ではないでしょう。ということは、聖騎士は皆前世の記憶を持っている、ということでしょうか?」

「でも、クレール神官は聖騎士だけど、そんな記憶はないそうです。それと、古竜に会ったときに、クレール神官は剣を持つ資格がないと言われたそうです」


 私は、マリアナ正教会で聖剣を握ったときの話をした。

 まずクレール神官が握ったときには、宝珠は反応しなかったこと。

 私とエヴァ先輩が握ったときは、青く光ったこと。


「気になることがあるのですが、ひとつ実験が必要です。離宮の中ではできないので、それは明日にしましょう。よく正直に話してくれましたね」


 スワンソン先生は、いつもと変わらない笑顔を向けてくれた。

 それから、話を変えて、魔獣の祠に現れた『死霊のオブジェ』の話をしてくれた。

 

 あの2体のうち、聖職者の格好をした方は、右手と顔が転移していて、右手に杖を握っていた。

 私も覚えている、黒光りする杖だ。

 あの杖は『闇魔法の杖』で、人間には使えない闇の魔法を使える杖なんだそうだ。

 スワンソン先生は、闇の魔法をいくつか知っていて、その杖で『告解』という魔法を使えたらしい。

 それで、あの杖を使って、簡単に自白させることができたんだとか。

 あの死霊オブジェたちは魔力を循環させることができないので、魔法も使えないそうだ。

 なので、殺さずにゾルディアク教の情報をしゃべらせているらしい。


 でも、あの2体が転移に失敗してくれてよかった。

 戦っていたら、負けてたかもしれない。

 バスティアンに帰ったら、怖いもの見たさで、一度は見に行ってみたいな。

 死霊オブジェ。



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