武器職人ガルダラ
学園で紹介してもらった、比較的良心的だという武器屋を訪れてみた。
レアナは可愛いリボンのついたブラウスに、チェックのミニスカート。
王都に出かけるということで、精一杯オシャレをしてきたみたい。
帰りにカフェに行ってみる予定なので、私もお気に入りのワンピを着てきた。
「こんにちはー。誰かいますか?」
武器やら何かわからない道具やらが並んでいる、小さなお店。
「武器屋 ガルダラ」と看板が出ている。
奥から、50代ぐらいに見える、ガタイのいい男の人が出てきた。
「何か用かね?」
なんだか、不審者を見るような目で、私たちをジロジロと見ている。
武器屋になんの用事なのか、とでも言いたげだ。
気持ちはわからなくもないけど。
「あのー短剣見せてほしいんです。私たちでも使えそうな」
「短剣? アンタらが使うのかい?」
「そうです。王立学園の騎士科の新入生です」
「へー、それはそれは」
店主と思われるその男の人は、顎に手を当てて、まるで値踏みをするような顔で見ている。
「こっちに来な」
手招きされて、店の奥まで入る。
「アンタらみたいな細っこいお嬢ちゃんには、このへんだな。子ども用の短剣だが、切れ味はいいぞ」
いつも使っている剣より、ひとまわり小さく、刃が細い。
「振ってみな」と言われて、レアナが受け取る。
少し離れた場所で、びゅん、びゅん、と小さく振ってみるレアナ。
軽そうな剣だ。
「うん、使いやすい。握るところも細いし」
「そうだろう。これは、小型のすばしっこいモンスター退治なんかには向いてるぞ」
「この剣、いくらですか?」
「そうだな…学園の生徒なら、少しまけて18000ダルだな」
「18000!」
…と驚いて、レアナは剣を置いた。
どうしようかな…と考える。
私は、18000ダルぐらいなら持ってる。
家を出るときに、親が少しお金を持たせてくれたからだ。
18000ダルの価値は、日本のお金の価値だと18000円ぐらいかな。
今の私たちには大金だけど、買えないほどじゃない。
「他に安い剣はないの?」
「これが一番安いぞ。子ども用だからな」
「そっかー。じゃあ、買います! 私が買います!」
「えっ! ルイーズが短剣買うの??」
レアナは驚いたような顔をしたけれど、使いやすそうだし、予備に持っていてもいいと思って。
私だって、重い剣を振り回したくない時もある。
ついでに、短剣を腰にさげるベルトも買った。
ワンピース姿に、短剣をぶら下げている私を見て、店主さんは少し悲しそうな顔をした。
「嬢ちゃんたちは、本当に騎士になるのかい? そんな風には見えねぇけどな」
「なれるかどうかはまだわからないですけど、とにかく、お金稼ぎたくて」
この後、冒険者ギルドへ行って、冒険者登録をするつもりだ。
学園の掲示板の依頼を受けるぐらいじゃあ、お金なんて貯まらない。
冒険者登録をして稼ごうと、レアナには話してある。
「せちがらい世の中だな。こんな小さい女の子がモンスター退治で金稼ぎか…」
店主さんは、「ちょっと待ってろよ」と言って一度奥へ引っ込んだ。
奥の部屋でゴソゴソと何か探しているような物音がして、5分ほどすると戻ってきた。
「あった、あった。これ、やるよ。古いけどまだ使えるだろ」
ところどころ少し錆びた、古い短剣を一本差し出す。
レアナは、受け取っていいの?という顔をして、戸惑っている。
「遠慮しなくていい。うちのボウズが昔使ってた短剣だ。古いけど俺がちゃんと手入れしてたからな」
「本当にいいんですか? ありがとうございます!」
レアナはうれしそうだ。
店主さん、いい人だな。
「俺がここの店主のガルダラだ。刃がなまったらまた持ってこい。手入れしてやるから」
思いがけず、短剣が2本手に入った。
本当は私が買った剣をレアナに貸すつもりだったんだけど、ラッキー!
また何か買うときにはこの店にこようね、と言いながら、店を後にした。