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【第三章 リリト編】 リリトへ向かう

 私たちは、せっかくなので、帰りは別ルートを通って帰ろうということになった。

 クレール神官がリリト正教会への異動を認められたので、護衛がてら送っていくことにする。

 バスティアンの騎士団には一足先に王国へ帰ってもらうことにして、私たちだけがリリトを経由して帰ることにした。

 名目上は『破壊されたリリト大神殿の調査』ということでスワンソン先生がバスティアン国王の許可をとってくれたようだ。

 

 クレール神官は、オーグストの大神官の儀式の後、あの部屋で私たちがやらかしたことを隠蔽してくれたらしい。

 なので、私たちのメンバーが上級職に転職できたことを、マリアナの大神官たちは知らない。

 クレール神官が大神官になったことも、バレていない。

 これで、リリト大神殿が復活したら、リリトで転職の儀式ができるようになるよね。

 そして、そのことがマリアナ中央教会にバレるのには、まだ先になるだろう。

 

 クリストフ様は、私たちと別れるとき、少し寂しそうだった。

 誰も知っている人のいないマリアナ正教会から『勇者』と持ち上げられて、居心地が悪そうだ。

 クリストフ様自身は、自分のことを聖騎士だと言っていたし、勇者扱いされるのは少し不本意みたい。

 

 そういえばクリストフ様は、ステータス表示というものを知らなかった。

 浦島太郎なので身分証を持ってないから当たり前なんだけど。

 いつか再会することがあったら、冒険者証を作ってもらって、クリストフ様のステータスを確認してみたい気がする。


 

 私たちは早々にマリアナ正教国を発つことにした。

 あまり長くいたい場所じゃないしね。

 

 マリアナ正教国を北に向かうと、リリト王国と隣接している。

 バスティアン王国から見ると、リリトは北西に位置していて、縦に細長い国だ。

 リリトの北半分は高山地帯で、一年のほとんどを雪に覆われている。

 私たちが向かうのは、リリト王国の南側にある王都だ。

 そこから東に向かって、バスティアンに戻る予定。


 馬車の中で、オーグストとクレール神官は、熱心に情報交換をしている。

 オーグストは学園にいた頃、ほとんど神官としての仕事などしたことがなかったのに、いきなり大神官になってしまった。

 クレール神官も、剣の守り人として神官をやっていただけで、本当は聖騎士だ。

 2人とも、今のうちに覚えておきたいことが山ほどあるよね。

 

 今までマリアナ正教会が儀式を秘匿していたせいで、リリトにもバスティアンにも大神官はいない。

 つまり、クレール神官と、オーグストが初代大神官になる。

 オーグストは責任重大だよなあ。


 ニコラくんは、古竜からもらってきた装備品を調べるのに忙しい。

 効果がわかったら、その装備が向いているメンバーに割り振る。

 火属性ならレアナ。聖属性ならオーグスト。水属性はエヴァ先輩かニコラくん。

 土属性は私かマルク。

 基本的に魔導士の杖は全部ニコラくんだし、大剣や斧はマルク。

 分配するのにあまり揉めることはなさそうだ。

 死霊の魔導士から取り上げた杖は、スワンソン先生へのお土産にするらしい。

 マルクもワルデック先生へのお土産を選んでいた。


 あの祠で復活した魔神がラスボスだったのかどうか、エヴァ先輩と話し合ってみたけど、たぶん違うだろうという意見で一致した。

 四大魔神のひとりって言ってたけど、それは100年前の話であって、あの魔神が死んだ後は四大魔神の空席争いになりそうな口ぶりだった。

 この100年で人間界の魔術が進歩したように、魔神だって進化している可能性があるよね。


 リリト王国にはゾルディアク教の本部があると言われている。

 それも調査の目的のひとつだ。

 と言っても、王都で聞き込みをしてみるぐらいしかアテはないんだけど。

 着いたらとりあえず、冒険者ギルドに行ってみようと思っている。

 魔獣の祠に上半身が陳列されている死霊たちは、ゾルディアク教の幹部だったみたいだから、スワンソン先生からの情報待ちだ。


 マリアナ正教国とリリト王国の国境は、すんなり越えることができた。

 バスティアンとマリアナの国境ほど警備は厳しくなく、それほど高い塀もない。

 国境警備隊も大した人数じゃないし、のんびりした感じだ。

 私たちは一応身分証明書を見せたが、ほぼ、出入り自由という感じ。

 クレール神官の話では、このあたりはそれほど強い魔獣も出ないし、昔からこんな感じだと言う。


 平原に続く1本道を北に向かうと、リリト王国最南端のベルフォリ村がある。

 そこが、クレール神官の故郷だそうだ。

 マリアナに連れて来られてから、ずっと剣の守り人をしていたので、一度も帰っていないらしい。

 感慨深いだろうなあ。

 ご両親のお墓がちゃんとあるといいけど。


「村が見えてきましたね」

「おお! あれがベルフォリ村です! 果樹園があるんですよ」


 クレール神官が指さした先には、色とりどりのフルーツが実っている木がたくさん見えた。

 あまりリリト王国のことは詳しくないけれど、農産物の輸出が多いと聞いたことがある。

 フルーツが安く買えるようなら、たくさん買っておきたいな。

 なんせ、最近甘いものに飢えている。

 バナナとかあったらいいのになあ。


 クレール神官は、すっかり変わってしまった村の様子を見て、自分の家がどこだったかすらわからないと言う。

 多分教会の位置は変わっていないだろうから、馬車を降りて教会を目指すことにした。

 小さな村だけど、家の前に花が植えてあったりするので、のどかに暮らしているんだろうな。

 アデル村と雰囲気が似ている。

 


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