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【第一章 学園編】 教会にて


「ルイーズ・デイモントは聖騎士の才能を賜った!多くの民のため、その特別な力を役立てるように!」


 一瞬シーンとなった直後、割れるような拍手が教会内に沸き起こる。


 ――なんで、こうなった…

 絶対聖女になれると思っていたのに。


 祝福の拍手に包まれて、ルイーズはトボトボと父親の方へと戻る。

 

 こんなはずじゃなかった。

 女なのに、騎士なんて。

 もう絶対お嫁に行けないだろうな…


 嫌だ。絶対嫌だ。

 騎士になんてなったら、モンスターと戦わされたり、戦争に行かされたりするに違いない。

 だいたい、生まれてこのかた、運動すらしたことがない。趣味は読書と裁縫だ。

 包丁もろくすっぽ握ったことがないのに、剣を振り回すとか、あり得ない。

 

 刃物なんて嫌いだー!! 

 どうしよう。


 目の前が真っ暗になって、胃がぎゅっと痛くなって、これからのことを想像するだけで吐きそうになる。

 だけど、そんな私を、父は満面の笑顔で待っていた。


「ルイーズ!よくやった! さすが俺の子だ!!」


 その瞬間、未来は決まってしまったんだと悟った。

 もう、逃げられない、きっと。


 父は生まれながらに剣の才能があり、平民から騎士爵になった人だ。自分の子どもに剣を指南するのが、ずっと夢だったことを知っている。我が家にはたまたま男子が生まれなかったので、諦めていたのだ。


 同じ年に生まれた子どもが次々と、神官に呼ばれては、水晶に手をかざして職業を賜る。

 結局、同じ村から騎士は私ひとりだけ。

 男子は「農民」だったり「商人」だったりして、だいたい家業をついでいることが多い。

 女子なら「裁縫士」や「踊り子」なんて職業もある。

 私は父親から能力を受け継いだと考えると、確かに不自然ではないけれど。


 私は生まれつき魔力を持っている。

 この世界ではめずらしいことではなく、微弱な魔力持ちは女子に多い。

 治癒の魔術が使えるようになった女子は、「聖女」と呼ばれ、教会に所属することになる。

 これは、いわば公務員のようなもので、平民にとっては、恵まれた地位だ。

 魔力が枯れ果てたりしない限り、一生仕事に困ることはない。

 結婚しても、子どもが生まれても、年寄りになっても、治癒魔術が使える者は「聖女」として扱ってもらえる。

 既婚の女性が仕事を持つことが難しい、封建的なこの世界において、聖女は特別枠なのだ。


 聖女になりたかった…

 人を助けて、感謝される職業に憧れがあった。

 

 喜んでいる親の前では、言えなかったけど。


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