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揺れ惑う心

作者: 愛子(あこ)

「まりかのことは好きだよ。2番目に。」


こうたろうにそう言われた。私とこうたろうは幼なじみで元両想い。お互い熱しやすく冷めやすいタイプで、昔私がこうたろうに告白したら

「まりかの事は好きだよ。でも、好きだから付き合いたくない。」

と言われた事がある。一見酷いと思うかもしれない。しかしこの言葉には続きがあって、

「お前を失いたくないから付き合わない。」

という言葉があった。それからお互い好きだけど友達という関係を続けてきた。振られてから3ヶ月後今度はこうたろうが付き合おうと言ってきた。無論嬉しかった。しかし私は1回振られている。向こうが無傷なのが不服だったので、

「この関係のままでいよう。」

そう告げた。


月日が流れ私達は高校生になった。私達の高校はお互い別方向で会うことすら無くなった。高校を無事卒業し、久々に会おうということになった。集合場所は近所のカフェ。3年振りに会う彼は身長が高かった。


お互いの3年間を交互に話した。彼には彼女が居るらしい。あの熱しやすく冷めやすい彼が半年も続いているらしい。しかも彼女の事をものすごく大切にしていた。私が意地を張って断ったあの告白をもしOKしていたら…なんて少し後悔した。


会話は弾みもうすっかり夕方になってしまった。帰り道を2人で歩いた。そこで彼が私に言った。

「まりかのことは好きだよ。2番目に。」

嬉しかったが悲しかった。私はこうたろうの事をずっと考えていた訳では無い。高校の3年間は自分のことで精一杯だったし、すっかりこうたろうの存在が頭から抜けていた。でも、久々に会って、話をしていくうちにやっぱり好きだと思った。


この人の2番目は世間一般で言う2番目とはまた違う。世間一般では浮気相手でしかないだとか体の関係だけだとかそんなことを言われているが、この人は本気で2番目なのだ。彼の言動の端々からこの事が伝わってくる。カフェでは何も言わず奢ってくれたし、お会計待ちで並んでいた時は後ろに男性が並んでいたのに気が付くと私を自分の前に立たせ距離をとってくれたし、今だって何も言わず車道側を歩いてくれている。


2番目でもいいのかな。


そんなふうに思い始めた。でも、彼にとって1番は彼女さんで、私は彼女さんにはかなわなくて…。虚しくなった。


彼がふと私に言った。

「もし、一緒に死んで欲しいって言ったらどうする?」

彼はいい所のお坊ちゃんで、お坊ちゃんだからこその苦労をずっと話していた。高校受験のラストスパートに差し掛かる秋の初め。彼は親の期待に押し潰されていた。私はそれを知っている。彼が「死」という言葉を発する時、それは彼が苦しんで悩んでいる時。3年前にも同じような会話をしたなと懐かしく思った。その時から私の返事は変わらない。

「いいよ。」

実は私も今悩んでいる。将来について。私はこれといった才能が無い。だからといってなんでもできる訳でも無い。私は春から大学生になる。申し訳ないとこに私立だ。400万円。何も無い私に400万円という大金をかけてもらうのが申し訳なかった。いっそ死んでしまえたら、なんて思う。私みたいに死んでもいいと思いながら日々お金を使って生きているのであれば、生きたいと思っている人にそのお金を使って貰いたいと思うようになった。


私の考えを彼に話した。そして続けた。

「私は死ぬのが怖いんじゃない。死んだ後が怖いんだ。誰も泣いてくれなかったら、むしろ死んでくれてせいせいしたと言われたら。それが怖くて死ねないんだ。」

彼は

「俺は泣くよ。絶対泣くよ。」

そう言ってくれた。嬉しかった。



「心はどこにありますか?」


という質問に心臓を指す人もいれば脳を指す人もいる。存在していて存在していない心。



私の心はいつになったら定まりますか?


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